第7章 3話
かなり時間が経った気がする。
攻撃しては離れてを繰り返す。
一気に畳み掛ける様子が見えない。
ここが一番の謎。
もしかして、私のアーティファクト・ウェポンを警戒している?
おそらく、あの距離が何が起きても大丈夫な距離なんだわ。
獣の持つ第六感。
未知なる存在への警戒感。
それが、距離を離している理由かもしれない。
どうしよう。
私は本来、こういう戦い方は苦手な方なんだけど。
後ろにいる氷室がまだ行動を起こしていない以上、私が勝手な行動をするべきではない。
本当だったら瞬間移動で奴の背後に移動して、拳を突き入れて終わりなはず。
でも氷室がそれを見ていないって事は通用しないって事。
むやみに動けないわ。
でもそれはあいつも同じなはず。
牽制しか出来ないのがその証拠。
「来たか」
え?
誰?
「まさかとは思ったけど、本当に戦っていたとはね」
健一の声!?
どうして?
「林道さんから、後藤彩菜の命を狙う刺客が送り込まれているって情報を聞いて駆けつけたんだ。そいつがそうなんだな?」
「ええ。そうよ」
こいつは少なくとも、当初の目的はそうだった。
「それで。他の人は?」
「いない。僕だけだ。黒野はビルに残ってる他の兵士達を倒す方へ、林道さんは体力の消耗が激し過ぎてキッドがその面倒を見ている」
なるほどね。
「佐藤。ようやく”見えた”」
え!?
「どうやらあいつが鍵のようだ。そのまま行け」
なるほど。
健一のフォローがあるなんて、百人力よ。
「健一!あいつに向かうからよろしく!」
これだけで通じ合う。
大丈夫。