第7章 鳥と虎と
まさかこいつの”目”の能力にも弱点があったなんてね。
完全に死が見えるもんだと思っていたけど。
でも、その唯一の例外が健一。
彼だけは氷室の能力で死が見えていたはずなのに、死んでいない唯一の存在。
以前、私達と戦った事もあるけれど。
まさかこうして一緒の敵と戦う事になるとは思ってもいなかったわ。
「気をつけろ。あいつはかなり強い。私と戦った時はそうでも無かったみたいだが、どうも強化されてるみたいだ」
なんですって?
油断無く構える。
だが。
ずっと見ていたはずの白井の姿が消えた!?
「後ろだ!」
なに!?
氷室が白井の蹴りを抑えている。
馬鹿な。
いくらなんでも見えないってありえないわよ。
「やはり、相当強化されてるようだ」
って事は、今のは能力じゃなくて普通の運動能力って事?
尋常じゃないわ。
「だが、幸いな事に奴はその力を使いきれていない」
そう言いつつ、氷室は私の背後に回る。
「背中は任せろ」
「まったく、あんたに背中を任せるなんて事が起きるとはね」
一度は戦い、殺されそうにもなったというのに。
不思議な因果ね。
「がぅ~!!」
まるで獣のような叫び声を出す白井。
獣?
「あいつ、まさか獣と融合してんじゃ」
「そうか。ディルスの能力」
氷室の言葉で思い出す。
そうだわ。
ディルスは遺伝子であるDNAを操作出来る能力。
それで赤沢も機械を体に取り込んでいるんだわ。
そして、白井は何らかの獣。
この分だと残りの二人にも何かしら改造を施してあるかもね。
でも、今はそっちの心配は出来ない。
目の前の敵と対峙するだけで精一杯。
さぁて。
どうしようか。