第6章 9話
「知ってるの?」
「もちろん。だって私だって昔はディルスと共にいたんですもの」
え?
氷室さんが?
なんかお姉ちゃんや美喜子お姉ちゃんと過去に何かあったような雰囲気はあったけど。
まさか、敵でもあったディルスと共にいたなんて。
「そういえばそうだったわね」
「白井に関しては単なる昔の仲間では終わらないけれどね」
どういう事?
「私がディルスの元を離れる際に、無謀にも私の命を狙おうとしていたのよ。死神という異名を持った暗殺者を殺して名を上げようとしてね」
なるほど。
でもお互い生きている?
「あの時の傷はどうなったのかしら?」
「うるせぇ!てめえのせいで!!俺は死の恐怖から逃れられないんでいるんだぁ!!」
死の恐怖?
よっぽど怖い目に合ったみたい。
「確かに私も要因の一つかもしれないが。お前。アーティファクトに支配されてるな?」
え?
この人も!?
「どういう意味だ」
「目を見ればだいたい分かる。単に正気を失ってるだけじゃない。何か別の力を得たような目だが、それにしては焦点が合ってない。すでに暴走しているんだろう?」
凄い。
この人もたくさんのアーティファクトを持った人と出会ってるんだ。
おそらく、お姉ちゃんぐらいの知識が無いと無理だと思っていたけど。
彼女もそういう人をたくさん見て来たんだ。
「気が変わった!あの時の決着をつけてやる!!」
どうしよう。
私は赤羽のほうに行けばいいのか、それとも氷室さんの手助けをしたほうがいいのか。
それか、後藤さんを守るほうに行ったらいいのか。
「そうだな。佐藤、済まないが私の援護を頼む」
「え?私に!?」
美喜子お姉ちゃんに?
「そして林道の妹」
私!?
「お前はあっちだ」
そう言って、赤沢を指差した。
「ちょっと!大丈夫なの?」
「あっちは心配ない。すでに”死”は見えた」
どういう意味なんだろ。
でも、言われた通りに赤沢の前に立ちはだかる。
「こっちの心配をしろ。残念ながら、まだあいつの”死”は見えていない。いや。他の誰の”死”も見えていない以上、まだ決定的な状況では無い」
「あんたの目にも欠点があったって訳ね。安心するわ」