第5章 8話
「まだ敵の能力は未知数ですが、欠点がいくつか分かって来ました」
「欠点だと?」
そういう情報をくれるのはありがたい。
「まず一つ。爆弾は無機物にしかしかけられない。彼の服にしろドアノブにしろ生き物ではありません」
なるほど。
確かにこいつ自身を爆弾にするのが一番手っ取り早いはずだ。
それをしないって事は出来ないって事か。
「そしてもう一つ。爆弾に出来るのはある程度の大きさまでのようです。この廊下が爆弾になっていないのがその証拠」
ふむ。
この男が倒れた時に爆発しなかったのが、その証拠って事か。
わずかな事柄なのに、それを分析するのが早い。
すでにこういう奴らと何度も戦ってるって事か?
「だが、まだまだ脅威であることは間違いない」
「そうですね。同時にいくつも仕掛けられるのは脅威です」
複数仕掛けられるってのはやっかいだ。
それと分からないことがある。
「あいつはどうやって爆弾を仕掛けてんだ?触れていたら爆弾にした瞬間に奴も爆死するはずだが」
道具を使ってるって事なんだろうか。
「まだ分かりません。爆弾にするのに時間がいるのかもしれませんし」
それにしても。
こいつは今まで見て来た中にはいないタイプだな。
冷静沈着でありながら、仲間を信用するタイプ。
どう接するべきか。
「あら?」
ん?
角の先に札束が見える。
100枚の束だ。
「けっ。あからさまな罠だな」
今更こんな罠に引っかかる奴がいるのか?
林道も怪しげな表情を浮かべている。
「そうだわ。ちょうど試したいことがありました」
なんだ?
すると、どこからともなくナイフを取り出す。
「えい」
それが札束に当たる。
だが、何も起こらない。
「なるほど。無機物同士でも爆発は起こらない。あくまで有機物でないと爆弾は発揮されないみたいですわね」
なるほど。
かなり慎重だ。
「という事は素手で触れたりしなければ、そう怖がる必要は無いと?」
「そう上手くいけばよろしいのですが」
ふっ、それは俺も思っていた事だ。
こういう罠を仕掛けるタイプは自分の欠点を分かった上で仕掛ける。
つまり、まだまだ油断は出来ないってわけだ。