第5章 7話
「ただ、分からない事が一つあります」
「なんだ?」
「彼は罠をしかけるタイプの能力なはずですが、姿を表すほど近くにいるというのは違和感を感じます」
罠をしかけるタイプか。
「つまり、こいつが本人じゃないと?」
その可能性が高い。
「嫌だなぁ。本人だよ。なんなら調べてみる?」
どういう意味だ?
「キッドさん。あいつの服には触れない方がいいですわ」
服?
「どういう意味だ?」
「触れると触れた相手を爆死させる能力者ですから。当然、服の外側をそうしている可能性はあります」
なるほど。
ずっと警戒していた理由が分かった。
「へー。それ、どうやって分かったの?」
「さあ。敵であるあなたに素直に言うとでも?」
なるほど。
この娘はなかなか強かな神経を持ってる。
「なら俺に任せておけ」
手元からカードを取り出す。
それを音も無く額に当てる。
「ふん。無様に姿を表すからそうなるのさ」
ん?
なんだこいつ?
倒れた瞬間に顔が変わる。
一瞬で変わったみたいに別人の顔になっている。
林道が顔に手を当てる。
「どうやら操られていたみたいですわね」
「操られていただぁ?」
という事は。
「これも罠って事か」
「予想通りでしたわね」
まったく。
人間丸ごと罠に仕立て上げるとはな。
「どうする?」
「先に進むしかないですわね。もう後戻りはできません」
もしかして。
「あの非常用扉、外側はなんともなかったが内側に?」
「ええ。触れると爆発するでしょうね」
なんてこった。
主導権が向こうにあるってのは気に入らねぇ。
爆弾の能力者だか知らないが。
俺を敵に回した事を後悔させてやる。