第5章 6話
いきなり全員がビルに乗り込むという事はしなかった。
それは全滅を避けるため。
正面から入る者。
非常口から入る者。
一定時間後に入る者等に分かれている。
さらに葛葉は入る事はしなかった。
後藤彩菜を病院に送るために。
「しかし、俺にお前が付いて来るとはな」
キッドが後ろを見ながらつぶやく。
「あら。あなたは運を呼び寄せる能力を持っているのでしょう?ならこれは運が引き寄せたと諦める事ですね」
そう。
理恵子がそこにはいた。
キッドにとって、女性と共に行くという事は不本意なのだが。
単独乗り込むには危険がありすぎる。
二人は非常階段から登る。
どこに罠があるか分からない。
「ん!?」
非常階段が途中で切れている。
いや、切れているというよりも。
破壊されて登る事が不可能な状態になっている。
「これは罠がありそうですね」
5階分くらい階段が破壊されている。
とても登るのは出来そうにない。
扉を開ける。
思った通り、電気は消えている。
人の気配は感じない。
だからといって安全とも言えない。
ゆっくりと中に入る。
暗い通路しか見えない。
カチッ!
突然明かりが灯る。
「おい!なにやってんだ!?」
理恵子が懐中電灯を付ける。
確かに、居場所を教えているようなものだが。
「あら。どうせ来ている事は知っているようなものでしょう。こちらだけ不利なまま行動しても仕方ありません」
この辺りは理恵子は割り切っている。
「それに、そこにいるのでしょう?いるのは分かっているんです」
通路の先から一人の男が現れた。
「なんだ!?」
「彼が例の爆弾の力の持ち主のようです」
「へぇ。そこまで分かるんだ。凄いねぇ」