第5章 5話
理恵子が口を開く。
「これは、彼女専用の物ではありませんね」
「どういう事だ?」
これまでアーティファクトという物は勝手に選ばれていろんな経由で所持しているという認識だったが。
選ばれていないのに持ってるというのもおかしな話。
「これは強制的に持たされたゆえの暴走行為ですね。たまにあるんですよ。無理矢理持たされたり強引に持っていたりという話は」
「そんな事もあるのか?」
健一が聞いてくる。
アーティファクトが選ぶと聞いていたので、それを無視出来る行為が出来るとは思ってもいなかった。
「ただ正常には作用しないんですよ。私の聞いた話ですが、栄養を吸い取られて死んだとか発狂してしまったとか一体化してしまったとか、あまり良い事は聞いていません」
「それはまた」
もの凄い話だ。
「ですからみなさんにはきちんと調べたうえでお渡ししているんです」
こういう時には林道がとても頼もしく見える。
「あれ?理恵子が持ってるのって大丈夫だったの?」
美喜子の普通の疑問。
理恵子も色々持ってるのは知っている。
「ええ。私のはあくまで保管してるだけですから。無理矢理使ってる訳ではありません。持つだけなら害は無いんですよ」
この辺りも詳しく調べられる理恵子ならでは。
「そっか。それでアイドルである彼女には合わないなー。とは思っていたんだけど」
実際に対戦した葛葉にとって、それは一つの疑問でもあった。
「ほら。どんなゲームでもいいって言ってたけど、正直腕前はそれほどでも無いよ。ただ不正を働くとアーティファクトの力が発動するみたいだけど。でもそれってアイドルには合わないし」
確かに。
彼女の持つ魅了の力の方がよっぽどアイドルしての能力ともいえる。
「しかし、こんなのを強引に持たせるなんて、ますます彼らを許すわけにはいかなくなってきましたね」
自分達の邪魔を排除する為なら他人を捨て駒にしても構わない。
それぐらい、アーティファクトを無理矢理持たせるというのはリスクが高いのだ。
「アーティファクトというのは放っておいても持ち主の所にいくもの。それぐらいはディルスの部下であるなら分かっているはず」
知らないならまだしも。
彼らは知ってる可能性が高い。
「みなさん。ビルに乗り込みましょう」
まずは目の前にいる青山から。
そして。
ゆくゆくは全員を倒すために。
ついに乗り込んだのだ。