第5章 ビル侵入
何故かそこには三人が立っていた。
ここを集合場所に決めていた訳では無い。
それぞれが呼ばれるように集まっただけだ。
この場にいる全員が不思議に思っていた。
だが、それは無理もない。
実は集められたのはキッドのせいなのだ。
彼は非常に運に恵まれた男。
その運に引き寄せられるように偶然として集まったのだ。
「なんか変な空間がある気がしたが、やはりって事か」
黒野がつぶやく。
「仕方ない!お前らも空間に閉じ込めてやる!」
再び後藤は青い空間を作り出す。
さすがに連発は体力を異常に消耗する。
ただでさえこの力は使い勝手が悪い。
目的を果たすのに制約が多すぎる。
それでも能力者を減らすにはこの方法しか無い。
「ルールは一つ!私と勝負しなさい!ただしゲームに限るわ!」
お決まりのセリフを言う。
このセリフは一字一句間違えてはいけない。
これも能力の制約の一つ。
だからこそ相手の魂を取るなんて事も出来る。
しかも、この空間にいる間はどんな攻撃も無駄になる。
「ゲームって言った?」
葛葉がゲームの部分で反応する。
「ええそうよ。そっちの得意となるものなら何でもいいわ」
ここの部分は応用が利く。
効く部分と効かない部分があるというのも、使いづらい理由の一つ。
これは相手の質問がどう来るか分からないから。
「なら私はテレビゲームで勝負するわ」
来た!
それが相手が有利な事。
「おい、大丈夫なのか?そんな簡単に敵の言う事を鵜呑みにして」
それは当然の反応。
自分を邪魔する奴の言葉なんて信用出来ないのが普通。
だからこそ、これまでの相手はあらゆるイカサマをやってきた。
でも、それこそが後藤の思うつぼ。
「しょうがないよ。だってゲームに限るってわざわざ言ってんだもん。本当に何か企んでるなら言わない方が有利だよ」
ここで後藤は不穏な何かを感じた。
自分の言う事を素直に信じている!?と。
これまでの相手とは何か違う。
「ところで、テレビゲームで勝負したい場合はどうするの?今は私も所持してないけど?」
「これでどうだ?」
すると、机が出現すると同時にテレビとゲーム機も出現する。
「最新ゲーム機のセガドライブだ」
「良かった。私も持っている物で」