第1章 4話
現実というのは、時として残酷な面を見せる。
医院長の意見により。
今回の事件は”事故”として処理される事になった。
じゃが、仕方のない事かもしれぬ。
はたして、今回の事を言って誰が信じてくれる?
当事者でなければ、映画の1シーンだと言われた方が納得できる状態。
かろうじて、そこに残された歯形が人間のでは無いというのが証拠になるだろう。
じゃが。
それすらも作りものと言われる可能性もある。
それならば。
隠ぺいしてしまうのが現実的な処理。
そして。
これは予期せぬ事故が起きたという事にするのが一番。
そう結論された。
わらわはまだそれでいい。
いくらでも納得できよう。
じゃが。
須藤の両親には嘘をつく事になる。
知らぬ中とは言えない。
娘の働いている姿を見るために、会った事もある。
須藤とは気の合った同僚でもあった。
その両親に嘘を言わなくてはならないとはな。
それと。
唯一わらわ以外に残った助手。
一堂は精神病送りになった。
あれを見て精神的に変になるのも仕方ない事か。
むしろ、平気なわらわの方が珍しいぐらいじゃろう。
それは精神科の方も疑問に思っていたらしい。
あの現場を見て。
例のビデオを見て。
変になる方が正常だとも言っていた。
それはそうかもしれぬ。
わらわは一度、生死の境を彷徨った事故にあった事がある。
それはまだ幼い頃。
課外授業として行った先で起きた事故。
原子力爆発事件。
中には入ってなかったが。
あの時の爆発の破片が当り。
乗っていたバスは大破。
わらわが助かったのも奇跡だとも言っていた。
あの時。
目の前で友達が、ただの肉塊になる瞬間を見てしまった。
それに比べれば。
まだマシな光景とも言える。