第4章 8話
アオヤマ。
そこは別に隠された所にある訳では無い。
普通に上場もしている企業なので、住所を調べるのはそれほど難しい事では無い。
だからこそ問題なのは責任者に会う事。
間違いなく事前のアポを取る必要がある。
だがキッドがそのまま行ったのでは、いつまで経っても会う事は出来ない。
そこは超高層ビル。
おそらく、この一番上にいる。
まずはそこにいる人に会わないと。
その人物が、あのロボットを作った人間を知ってる可能性はある。
もちろん、そんな簡単に口を割るとは思えない。
が。
彼は裏社会で生きてきた人間。
やり方はいかようにもある。
ふと、何やら歌声が聞こえてきた。
どうも近くで路上ライブをやってるようだ。
だがキッドは無視してビルに近づく。
「ちょっと!そこのあんた!!」
何やら声をかけられたようだが。
しかしキッドは無視をする。
「あんた!私の歌声を聞いてなんとも思わないなんて、どういう事!?」
どうも女性の声のようだ。
キッドがその方向をちらりと見ると、アイドルのようだ。
垂れ幕に『ファーストシングル発売記念ライブ』と書かれている。
だが、これぐらいの事はそう珍しくない光景。
再び目線をビルの方へと向ける。
「むかつくー!!こうなったら”閉じ込めて”やるわ」
「?」
次の瞬間。
キッドの周りの風景が変わる。
若干青みがかかった壁が目の前に現れる。
振り返ると、同じように薄青の壁に囲まれた正方形体の部屋みたいな所のようだ。
だが出入り口はどこにも見当たらない。
「どういう事だ?」
「どうもこうも。私の魅力が効かない相手にはこうしてるの」
「こうしてる?」
すると、床から机が出てくる。
「ルールは一つ!私と勝負しなさい!ただしゲームに限るわ!」
「ふざけるな!」
キッドはカードを投げつける。
だが。
それは彼女の目の前で弾かれる。
「なに!?」
「無駄よ。ここでは互いに相手を傷つける事は出来ないの。脱出したいというなら、私に勝つしかない」
「お前、奴らの手先か?」
「奴ら?一体何の事を言ってるのか分からないけど、あんたを閉じ込めた理由は一つ。私の歌の魅力が効かなかったから。そういう奴はたいがい”能力者”だったりするのよ。その能力者を減らしてくれと、この能力をくれた人は言ってたわ」
キッドはなるほどと思った。
詳しくは聞かされてはいないようだが、邪魔な奴を排除するには適切な方法である。
「ゲームと言ったが、なんでもいいのか?」
「ええ。そっちの得意とする方法でいいわ。どんな方法でも勝ってきたもの」
「俺は通称キッド。お前は?」
「本当に私を知らないみたいね。私は後藤彩菜よ!」