第4章 6話
これよりほんの少し前。
キッドが理恵子の家に辿りついた頃まで遡る。
「お姉ちゃーん」
葛葉が呼ぶ。
奥から理恵子の他の美喜子や健一も出てくる。
「あら。さきほどの」
一番遅れて氷室も顔を出す。
「私達の仲間になる気にでもなったのですか?」
「それは違う。ただ、こいつを調べて欲しくてな」
機械を1体、放り出す。
「これは凄いな。人体でここまで精密なのは見た事ない」
まじまじと健一が見る。
この辺りは科学者としてそうさせているのか。
「調べる?」
「ああ。俺はその機械のモデルとなった人物を探している。おそらく、こいつはその手掛かりになるだろう」
「なるほど。それでここへ」
林動は納得がいく。
葛葉が側にいる事から、詳しい事情でも聞いたのだろう。
確かに林動ならばすぐに分かる。
「よろしいですが、無料という訳にはいきません」
「お金を取るのか?」
「鑑定は私の仕事ですから」
林動は譲るつもりはない。
「仲間ならお金は取りませんが、あなたは”客”です。ですからそれ相当のお金を取ります」
「ちっ、仕方ない。これでどうだ?」
パチンと指を鳴らすとアタッシュケースが出て来た。
それを開けるとお札の束が入っている。
林動はそのお札に触れる。
「ふむ。偽札という訳ではありませんね」
「おいおい。疑っているのか?」
「この業界では疑う事から始まるんですよ。あなたもそうでしょう?裏社会で生きるというのは、そういう事です」
林動の鑑定の力も正規の鑑定ばかりが来るとは限らない。
中には非合法な物を鑑定しに来る人も来る。
そういう中で生きていく為には必要な事。
「よろしいでしょう」
そのまま機械に触れる。
「!?」
少し驚く。
「なんだ?」
「アオヤマって企業をご存じですか?」
「あぁ。なんか最近急激に成長している機械メーカーだろ?車から家庭用電化製品まで幅広く作ってるとか」
「この機械は、少なくともそのアオヤマ製の機械です」
「なに!?」
急激に成長しているとはいえ、普通の企業に見えたが。
まさか、そこと繋がっているとは思えなかった。
「残念ながらこれは大量生産された物ゆえ、設計者やモデルについてまでは分かりませんでしたが、そこへ行けばなんらかの手掛かりは得られるかと」
「ふっ、十分な情報だ。仕事と情報量も含めて2億払ってやるよ」
すると、もう1つケースを取りだした。
「俺はさっそく調べてみる」