第4章 2話
デスクを見る。
そこには書類やらが並べてある。
違うデスクはパソコンの電源が入れっぱなしになっている。
さらに違うデスクには飲みかけのコーヒーまである。
いや。
それどころか、床に書類が散漫しているのも見つけた。
明らかに人がいた形跡。
それが。
まるで突然いなくなったかのような状態。
普通ではない。
それが山田が思った印象。
だが、あまりにも突然の出来事で脳が処理しきれていない。
一体何が起こったのか?
なんで一人もいないのか。
誰も答えてはくれない。
そしてあまりにも不可解な出来事を目撃してしまったからこそ。
当たり前の行動も出来なくなっていた。
山田はそのまま、誰かいるのか奥まで捜す。
誰か一人でも残っているかを探して。
しかしそんなわずかな希望は残っていない。
社長室まで開けた山田の目には、誰一人としてそこにはいない無人の空間を目にする事になった。
なんで?
どうして?
そればかりが頭を巡る。
そこでふと社長室にも散乱している書類に目が止まる。
どうも、新しいプロジェクトを行おうとしているらしい。
『効率的なメタンハイドレートのエネルギー抽出』
原子力事故をきっかけに注目が浴びている新しいエネルギーの一つだ。
ようやくメタンハイドレートが発掘出来るようになったぐらいだが、この会社では先を見据えてこの事業を行おうとしているらしい。
「こんな事までやろうとしていたなんて」
彼が知らないのも無理はない。
まだ立ちあげたばかりのプロジェクトであるため、正式な形にはまだなっていない。
まさにこれからやろうとしていた計画だ。
「しかし、こんな大事な書類がなんでこんな風に?」
手に取る。
整理しておこうという親切心だったのだろう。
それが彼の明暗を分けた。
次の瞬間。
ドゴーン!!
凄まじい音が響き渡る。
だが衝撃は起きていない。
明らかに爆発が起きた音。
なのに被害は何もない。
いや、たった一つだけあるとしたら。
そこにいたはずの山田陽一の姿が無くなっていた事だろう。
こうして。
また一人、突然いなくなった人物が増えたのだった。