第3章 9話
ふとキッドは気付いた。
キッドの周りに、同じような姿の人物に囲まれている事に。
だが不思議と殺気を感じない。
だからこそ、気づくまでに時間がかかってしまったのだが。
その様子を見て、見物人はさらに離れる。
まるでアクション映画のような光景。
そういう風に見ている人もいる。
それはそうだろう。
まったく同じ外見の人物が複数いるのだ。
ドラマにしては凝り過ぎている。
そう思われても仕方ない。
だが。
これはもちろん何かの撮影ではない。
それはキッド自身がよく分かっている。
これまでも、幾多の困難に遭っていた。
つまり危機というのを感じている。
一気に右手が動き始めた!
キッドは全員の動きを見る。
ほんの一瞬でも間違えたら串刺しになる事は間違いない。
だが、キッドはわずか体を動かしただけで、それらを全て避ける。
しかし状況が好転したとは思えない。
相変わらず危機の真っただ中。
普通こういう場合は逃げるのが得策とも言えるだろうが。
キッドはあえて逃げる選択肢は選ばなかった。
それは何故か。
つまり、目の前にいる相手こそが探している相手に瓜二つだからだ。
だが探しているのはもちろん人間。
こんな機械のような動きはしない。
だが、何か手掛かりがあるかもしれない。
そう思い、逃げる事はしない。
まずは一体ずつ倒し。
最後の一体を捕まえる事にしようとは考えていた。
だが、それを行うのが一番難しい。
数は合計8体。
周りを囲まれ、正直群衆の前で派手な行動は取りたくない。
どうすれば?
「『雷弾!』」
雷の固まりが飛ぶ。
それを見て、周りの人だかりが散る。
「これでよし!」
現れたのはとても幼い少女だった。