第3章 8話
林動と氷室の二人は行ってしまった。
そう、キッドは残ったのだった。
彼は別に何かあるという感じはしていたが。
別に正義の味方という訳でもないので、積極的に関わる事はしなかった。
キッドは単に自分のある人物を探していた。
それか、彼の過去に関係する人物。
その人物さえ探せればそれでいいと思っている。
だから極端な話、この街で殺人鬼が出ようと関係が無いという考え。
「そんな簡単に見つかるようでは、苦労はしないってか」
そう言いつつ、街並みを後にする。
いや。
ふと見つけた人物。
キッドの視界の片隅に映ったその人物を見て驚いた。
彼が探している人物にとても似ている。
ハッキリと見た訳ではないので、同一人物かどうかまでは確認出来なかったが。
凄く似ている。
キッドはその人物が探している人物かどうかを確認するために、後を追う。
はるか彼方に見えるが、視線でなんとか追える距離。
本人かどうかまでは分からない。
だが、非常に似ている事は間違いない。
つまり、特徴が一致していると言っていい。
キッドは動揺を抑えつつ、後を追う。
ふと、急に角を曲がった。
”まさか追いかけられてるのに気付かれたか?”
この距離では、普通はありえない。
だが念のため、角から見る。
「!?」
慌てて顔を引っ込める!
なんと!
腕が伸びていた。
「なんだ!?」
普通の人間じゃない。
距離は2メートルぐらいあるだろうか。
そこから腕だけを伸ばしてきた。
当然、周りの通行人は驚いて距離を離す。
「おまえ。なにもんだ!?」
その声は知ってる声でようでいて、違うようにも聞こえる。
「これは、機械加工!?」
そう。
若干、人間とは違うイントネーション。
まるで機械に喋らせているような拙さというべきか。
まさに人間ではないものがそこにはいた。