第3章 6話
電線がキッドに当たる、まさにその時。
氷がその電線を飲み込んだ。
キッドは女性を見る。
「おまえか?」
タイミング的に彼女ぐらいしか該当する人物はいない。
なにせ、この事故を予言していたのだから。
「だから動かないでって言ったでしょ?」
確かに、結果的には動かなければ当たる事も無かった。
「まさか命を救われるとはな。狙われる事には慣れていたが」
「そっちの方はなんとかなっても、この偶然だけはどうにもならなかったみたいね」
確かに言われてみればそうかもしれない。
キッドは殺気に関しては察知する能力は高いが。
今回みたいな偶然な事故にはどうする事も出来ない。
「だが、あんたが助けてくれた。これはまだ俺に”運”があるからだ」
たまたま偶然いた女性に助けられた。
キッドはそういう人間なのだ。
「確かにそうかもね」
それだけ言うと、女性は席を立つ。
「待った。お礼をしたいのだが。いいかな?」
「遠慮するわ。これは単に個人的な罪滅ぼしのつもりだから。気にしないで」
だが、キッドは食い下がる。
「俺はキッド。あんたは?」
「氷室由梨絵」
それだけ言うと、キッドに背を向ける。
これ以上は引き留める事もない。
そうキッドは思っていた。
命を助けられはしたが、相手がお礼はいらないと言っている。
それならば、あまり深入りしない方がいい。
そうキッドが思った次の瞬間。
バチッ!
激しい音がした!
辺りを見渡す。
「あっ!」
気が付いた時は遅かった。
別の切れた電線が、氷室と名乗った女性の上へと落ちる!
切れた電線は一本だけではなかったのだ!
「え!?」
氷室も気付いた時には、目の前にむき出しの電線が見えた!
だが!
その電線が綺麗に切れた。
その衝撃で、違う方向へと飛ぶ。
「まさか。こんな所でお会いするなんて」
そこには。
ほうきを持った林動がいた。