第3章 4話
あの日から数日。
新聞にはある男の経営していた会社が突然倒産したニュースが載っていた。
そこの社長は、前にキッドとギャンブルをして負け、さらに負けた分を払わなかった男だ。
内容は、男が商談をしに行く途中で事故による渋滞に巻き込まれ。
そのせいで商談が失敗。
さらに小切手を落とす為のお金をその社長が持っていたせいで、決算に間に合わず。
不渡りと商談失敗という二重の失敗のせいで倒産に追い込まれた。
こういういのは一度信用を無くすと、回復するのが難しい。
それを高速の渋滞に巻き込まれたという、ほんの些細な不運で全てを失った。
だが。
これこそがキッドの言う因果応報。
彼はギャンブルによる負けを払わなかったせいで、それ以上の負債を抱え込む事になってしまった。
「自業自得だな」
そう言って新聞を畳む。
キッドにしてみれば当然の結果。
彼は何よりも”運”というのを重要視している。
それはギャンブラーになったきっかけでもあるのだが。
彼いわく”運というのは生命エネルギーでもある。運が無くなれば命もそこで無くなる”。
それは同じ事故に合っても”運良く生き延びた人”というのがいるからだ。
ほんのわずかな違い。
だが生と死を分けた違いは”運”でしかない。
それぐらい運というのは大事なのだと。
彼がこうしてオープンカフェで街の人達を眺めているのも。
実は運だめし。
彼はある人物を探していた。
だが、その人物がどこにいるかは分からない。
その手掛かりを、こうして眺めながら探している。
これは彼が努力よりも運を重要視しているから。
人間、いくら努力しても運のいい奴には敵わない。
だからこそ、彼は運に身を任せているのだ。
これは毎日彼がやっている事。
いつか、見つかる日が来ると信じて。
”それにしても”とキッドは思う。
それは新聞には載っていない陰惨な事件を思い出したから。
とても不気味な事件。
病院で患者と医者が死亡。
さらにその数時間後にはトラックが細い道を高速で走るという謎の行動を起こした事故。
そして、大量の警察官が謎の物体に襲われ死亡という事件。
どれもこれも、新聞やテレビでは報道されていない。
一体何がこの街で起きているのか。
そして、どうして報道されないのか?
何やら不穏な空気を感じ取っていた。