第3章 3話
「ふざけるなっ!」
キッドと対戦していた男が立ち上がりながら叫ぶ。
「どういう意味だ?」
疑問を投げかける。
「こんな逆転ある訳ないだろ!?こんなの無効だ!!」
周りの客も怪訝な表情で見ている。
なにやら揉め事が始まったようだと。
「何言ってんだ?これはギャンブルだ。何が起こるのか分からないのが普通じゃないか」
「うるさい!どうせイカサマしてんだろ!?無効だ無効」
そう言って立ち去ろうとする。
「ふっ、勝った時だけ威勢がいいんだな」
「なに!?」
挑発をくらい、振り向く。
「うるせぇ!なんならこの場で亡き者にしてやろうか!?」
「お次は脅しか?つくづくあんたらは分かりやすいな」
脅しをかけられてるとは思えないぐらいの余裕の態度。
それもそうかもしれない。
彼はこんな出来事、初めてではないのだ。
おそらく二度や三度では済まないぐらいの経験をしているのであろう。
「お客さん、揉め事は困ります」
さすがにこの裏カジノの従業員が止める。
基本、客同士の賭け事には口を挟まないが。
こういう店に迷惑をかける事は正直困る。
「うるせぇ!こっちはイカサマされて負けたんだ!とっとと帰させてもらう!!」
「ふっ、例えイカサマだったとしてもだ。それを勝負中に指摘して初めてそう言われるんだぜ?」
痛い所をつく。
そう。
勝負事というのは決着が付いた後で何を言おうと、それは全て負け犬の遠吠え。
誰も真面目にその言葉を信用はしない。
例えイカサマを使ったとしても。
勝負中に見抜けない方が負け。
それが勝つか負けるかの勝負で生きる場所でのルール。
そんな事は、この裏カジノにいる人ならば誰もが知っている。
だからこそ。
誰もこの男の言葉を信用はしてない。
単に負けたから、負けた分を払いたくないだけ。
そうとしか聞こえていないのだ。
「別に帰りたいなら帰ってもいいんだぜ?」
突然、キッドがそういう。
「だが」
ここで場が静まる。
「この場で負けた以上の損がこれから待っていても、それは俺の知る所じゃないんで注意しときな」
これは変な忠告かと思いきや。
後日、キッドの忠告通りの結果が待っているとは、誰も思っていなかった。