第3章 2話
キッドがとある場所へと入る。
外見は普通の民家。
だが。
一歩中に入ると。
いや。
奥へと入ると、そこは裏カジノだった。
いくら警察よりもヤクザの方が力が強いとはいえ、堂々とは営業は出来ない。
その辺りはヤクザも心得ていて、普通の民家を改造する。
2階建ての民家は普通に入る分は、どこにでもあるような家だが。
地下へと通じる隠し扉がある。
そこへ入ると裏カジノへと入れるという寸法。
これにより裏カジノを取り締まりづらいという”言い訳”が与えられる。
実際、ちょっと調べれば分かる程度の仕組みになっていたり。
また、不自然に大量の人間が出入りしたりして怪しいのは分かる。
だが。
警察が調べる時に限って裏カジノは休業になっており。
さらに出入り口にポスター等を張って誤魔化すという事もしている。
当然、調べる日はダダ漏れ。
こうして裏カジノは今日も存在しているのである。
その裏カジノ。
レートも場所によって様々。
1点1円という良識な値段設定になっているのもあれば、1点1万円という普通のサラリーマンが気軽には出せない所も存在する。
当然、高レートの所には金持ちが集まる。
こういう一部の成功した金持ちを味方にする事も、ヤクザが力を持った原因。
なぜなら、その金持ちの中に医者や弁護士、そして議員をしている者もいるからだ。
特に議員には贔屓をする。
何せ彼らは法律を作る立場。
美味しい思いをさせれば、勝手に味方になってくれる。
だが。
そんな高レートにエリートでは無い人間が混ざっている。
それがキッドだ。
彼はお世辞にも高学歴という訳ではない。
むしろ、一度は浮浪者にもなっていた。
そんな彼が。
高レートの場にいる。
もちろん、チップを買うだけのお金は持っている。
それは全て、彼が実力で巻き上げたお金。
このカジノの中で。
いや。
下手をすれば、この双葉市の中で一番のお金持ちは彼かもしれない。
そんな彼が。
今夜も獲物を求めてやって来たのだった。