第1章 2話
その患者を一目で見たとき。
普通に右足から出血をしているだけだと思った。
それ以外にとくに異変を感じる要素は無かった。
じゃが。
何か変だと警告するような感じを受けたのも事実。
おそらく本能的なものなのじゃろう。
じゃが、それを振り払うように近づく。
気のせいだと。
念のため。
「この患者は何が原因で?」
異物が入ってる可能性もある。
あらゆる事を想定しておかないといけないのが、医療の現場と言える。
「それが不思議なのです。普通に歩いていたら突然血が吹き出たと」
普通に?
何かが飛んで来たという事もなく?
「とにかく、出血が酷いので止血しておきますね」
そう言って、須藤が包帯を取りだす。
なんじゃ、この感じは。
とても嫌な感じ。
危機を教えてるような感じ。
「待て!触るな!!」
「え?」
遅かった。
すでに患者に触れていた。
その次の瞬間。
足から出ていた血が須藤を襲った!
「なんじゃ!?」
目の前で起きている現実が理解出来なかった。
これを理解できる人間がいるなら、この場を変わって欲しいぐらいの光景が。
今、わらわの目の前に起きている。
おそらく、ここに運ばれるまではそれほど出血がひどくなかったのだろう。
じゃが。
ここに来て、突然酷くなった。
まるで。
獲物が増えた事によって血が喜んでいるかのような光景。
そう。
血が動いているのじゃ。
その血が。
須藤の血液を吸い取ってしまった。
さっきまで元気に動いていた仲間が。
あっという間に、変わり果てた姿になっていた。
まさに。
地獄絵図のようじゃった。