第2章 10話
私達は別の病院へと足を運んだ。
同じ病院にいないのは、もちろん被害を免れるため。
「あなたが青木美姫さんですね」
病室にいる彼女に声をかける。
「お主たちは?」
「例の事件でお話を聞きたいと思いまして」
すると、とたんに警戒される。
「奴らの仲間か!?」
「とんでもない。ついさっきまでその犯人と戦っていたのに」
でも仕方ない事かもしれない。
突然やって来たのだから。
「どうやって倒したのじゃ?」
「本体を叩いたのよ。動く血の方じゃなくて操ってる方ね」
そこで彼女は驚く。
「あれが勝手に動いてる訳ではないのか!?」
「それは無いわね。突然変異だとしても、あまりにも動物的とは思えない」
明らかに意思があるとしか思えない行動。
だからこそ、まっさきに人間が操ってると思ったのだけれど。
「お主たちはまさか。ああいうのと戦い慣れてるのか?」
「そうね。少なくとも初めてじゃないわ」
佐藤さん達と共に世界を旅回った経験が生きている。
あの旅で能力者と戦い、不思議な出来事は日常の隣にあるというのも分かった。
だからこそ。
今回の騒動でまず真っ先に疑ったのが能力者。
それは直接対峙して確信に変わったのだけど。
「しかし、よくあなたは助かったわね?」
ここを訪れた最大の目的がこれ。
彼女は間違いなく狙われていた。
それなのにもかかわらず。
生きている。
あいつの行動を見る限り、目撃者は全員殺すつもりだったはず。
なら何故彼女は無事なのか?
「そこにある帯のおかげじゃ」
帯?
そこには。
着物が立て掛けてあった。
おかげというと。
まさか。
私は手袋を外す。
「お姉ちゃん?」
触れる。
!?
これは!
「アーティファクト!?」
「なっ!?なんでそんな事が分かるのじゃ!?」
なるほどね。
確かにこれのおかげですわね。