第2章 3話
それからも、お姉ちゃんは堂々と中に入る。
こういうのってこそこそするよりも、逆に堂々とした方が怪しまれないって聞くけど。
まさにそれを実感している。
病院内を歩いてる時でも、他の人に見られる事はあってもおとがめなし。
中に入れば他に病人もいるし見舞いの人もいるし、不審には見られないって事ね。
そして。
例の問題の手術室の前まで来た。
こういう所って関係者立ち入り禁止なはずなんだけど。
「さあ、行くわよ」
手術室に通じる細い廊下の所に、規制線のテープを張る。
この病院に入る時に消した物だわ。
確かにここから先は元々関係者以外は入れない領域だから、わざわざ規制線を張る必要もないってことね。
あとは医者達に入らないようにすればいいんだし。
でも、ここの病院はそこそこは大きい。
連絡も徹底されてないと踏んで、わざと張ったのね。
「いい。開けるけど、覚悟するのよ」
覚悟?
「どういう事?」
「この先は死人が大量に出た所。想像以上の現場になってるはずよ」
そう言うと、扉を開ける。
うっ!
そこはおぞましい所だった。
部屋が血の跡だらけ。
匂いもする。
これが、人が死んだ所!?
吐き気をなんとか抑える。
現場はまだ荒らされたままになってる。
「肉片まで掃除してくれてありがたいわね」
お姉ちゃんはなんとも思ってないの?
「よく平気だね」
「そうね。これまでいろんな遺跡に入った事もあるから。死体とか見慣れてるの」
うぇええ。
考古学に興味があり、色々現場も見た事あるってのは聞いてるけど。
まさか、そんなのが平気になるなんて。
「でも、これだけじゃ分からないわね」
すると、お姉ちゃんは手袋を外す。
物を収集するのは手袋をしていても使えるけど。
あれを外すって事は。
直接触れて情報を得ようって訳!?
「これは!?」