表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その先にあるもの  作者: ヒロコウ
9/17

その8の1


俺が登流薄教団の活動をしていたある日の事。

およそ2年がたち、班長にまでなった俺に、衝撃的な事が起こった。

知り合いが重大な交通事故を起こしたのだ。

登流薄教団の本部は京都にある。

少し前に、全国大会が大阪で開催され、俺は、幹部の乗る車の運転手に抜擢された。

豊富会長を含めて14人。4台の車に分乗して、会場まで向かった事がある。

普通なら、カーナビでも使ってバラバラでもいいのだろうが、この日は会長の発案により、列を成して行く事になった。

そうなると、列順や、万が一外れた場合やおよそのコースの打ち合わせが必要になり、

運転手4人で打ち合わせをした事があった。

他に、所属隊名や功徳の話し、順縁に持ち込んだ人数の話しなどしたのを思い出す。

俺を含めた4人は全員が京都府内の人間であった。

その、知り合った人が事故を起こし、入院したと言う知らせが入ったのだ。

 事故にあったと言う知らせが入り、一路病院へと向かう。

しかし、この知らせが入った時にSENYセニー製のICレコーダーを

持って来る様に言われて、急遽家電量販店で買うことに成る。

病院に着いた。

受付を済ませて、仲間のいる病室向かう。

病室について、仲間の様子を伺う。

見ると頭に包帯を巻き、左腕にも包帯を巻いてさらに、右足を骨折している。

これでは、動けなさそうだな。

俺は、様子をみて近くに行った。

「こんちは。五島さん。その姿、痛々しいな」

「よう。高鍋・・・だったっけ。よく来てくれた」

「もしかして、他の人も呼んだので?」

「高鍋で最後だよ」

「そうですか。それにしても、何故ICレコーダーがいるんです?」

「俺が記録したのを聞いてほしくてなぁ。長くは無いけど、ここじゃ無理なんでコピーしてほしくてな。」

「それで、同じメーカーのをって訳ですか」

「じゃあ、これを渡すからコピーしてくれるか?」

「はい」

ICレコーダーを渡され、カードを差し替えてコピーする。

 俺は、五島さんのICレコーダーを受け取り、それに自分のMicroSDカードを差し込む。

操作をして約2分。

小さな液晶画面にコピー完了の文字がでた。

「2分って・・・・。ちょっと長い様な」

「そうか?実際の録音時間は30分程だ。中盤15分より後のやり取りを特によく聞いてくれよな」

「15分より先ですか」

「そうだ。幹部は全く、とんでもねえ事を言ったもんだよ」

「ええっ?」

「俺はもう、この登流薄教団から離れるぜ。離れる事にきめた!!」

「そうですか。それほどまでの事何ですね?俺も最近になって、教団には疑問があるんです。これ聞いて、参考にします」

「ちゃんと最後まで聞けよ?」

「はい。そういえば、同乗者の人は無事なんですか?」

「幹部の事か?幹部は集中治療室に運ばれたと聞いた」

「でも、何故幹部が。通常なら、功徳で守られるはずでは?」

俺は半信半疑になった。

「・・守られるもんか。幹部は後席でシートベルトをしていなかったんだからよ?」

この言葉を受けて俺は冷静に想像した。

「車外に投げ出されたんですね?」

「ああ。それで幹部は重傷さ」

「それで~?揉め事があったって事ですよね?」

「そうさ。それで車の中で揉めて、その最中に犬が飛び出して来て、大事故」

「あの、どの位で走ってたんです?」

「あの時、バイパスを120キロだったな」

「えっ!?

⁉120キロ!」

それは、通常のバイパスの2倍の速度だ。

「ま、また何で」

「それを、高鍋にも聞いてほしくてな。後のは家に持って帰ってきいてくれ」

「わかりました。じゃあ五島さん。お大事に」

「おう」

俺は、病院を後にした。

家に帰り、ICレコーダーを取り出して、あとヘッドホンを用意して、ミニジャックに挿す。

ヘッドホンを耳に掛けて再生した。

話の記録が、俺の耳に入る。

始めは他愛のない話だった。

しかし、である。言われいた15分の辺りから、会話に変化が。

「おい。何をちんたら走っている。このままでは会場に時間迄につけないじゃあ無いか」

「そんなことありません。20キロはやく飛ばしてますよ。」

「80キロか。・・信号が赤でも、状況によって無視しろ。俺が許す」

「そんな!それでは、万が一の事があったら!」

「いいから!言う通りにしろ」

「チッ・・」

舌打ちするのが聞こえた。

「よし。そのまま行け」

それから数分は無言だった。

しかしこの数分一回だけ、

「ピ・ピィーー・・」

という、ドップラー効果によるクラクションの音が入っていた。

どうやら、本当に信号無視をしたようだ。

微かだけど、エンジン音のうなる音が入っていた。

「よっし。そうだ。しっかり120キロ出ているな」

こんな会話が聞こえた。

速度の確認をしたようだ。

でもこれって、身を乗り出さないと確認ができないのでは?

俺は頭の中で状況を想像した。

そしまた、少し経った。

「うおおっ!」

五島さんの声が聞こえたつぎの瞬間。

キキーッ、というスキール音の後に

「ドカッ!バシャン!!ズババババ・・・」

何かにぶつかり、篭った様な音が聞こえた後に録音は途切れた。

 ピッ。

録音終了を告げる音が、レコーダーから鳴る。

「ここまでか」

俺は、録音記録を聞き終えて、ICレコーダーをテーブルの上に置いた。

そして、悩んだ。

この登流薄教団では、宿命転換や功徳、福運、因果関係の事を教えられてきた。

あとは慢心の事だって。

だけれど、これを聞いて考えさせられた。

これは俺の考えになってしまうけど、お題目をあげる事によって功徳がつき、物事が

上手く行く様になると思っていた。

でもこれを聞くと、幹部は決して穏やかではないし、まして慢心により煽りたててその結果、事故になりそして、重傷を負った。

慢心により(因)事故を起こし重傷(果)を負ったのだ。

この事に俺は、登流薄教団の実践する仏法に対して疑問を持った。

「全然、守られていないじゃん。もしかして、もっと本当は本来のやり方とかあるんじゃないのか?」

って。

 疑問を抱えて、俺はホウボウ覚悟で他の寺へ参詣する決意をここでした。

「よし。明日も休日だし、他のお寺に参詣して見よう。」

翌日。京都の空は雲一つなく晴れ渡り快晴になった。

街に出る。

最初に、日○のお寺に参詣してみた。

「手を合わせるつもりはないし、大丈夫。大丈夫」

俺は、登流薄教団に割と長く居たためなのか、何か罰が下らないか少し不安になった。

お寺の前に着いてお寺の門をくぐる。

すぐそこには鳥居があったけど、遠回りをして回避した。

俺は一路この他宗の勤行要典があるであろう場所を探す。

「ここかな?」

このお寺の本堂の脇で、お守りやその他のを売っている所があり、

そこに勤行要典はあった。

この勤行要典は蛇腹状で、何となく分厚さがあった。

「なんか、かなり違う様な」

疑問を抱えて、俺は膀謀覚悟で他の寺へ参詣する決意をここでした。

「よし。明日も休日だし、他のお寺に参詣して見よう」

翌日。京都の空は雲一つなく晴れ渡り快晴になった。

街に出る。

最初に、同じ法華経を唱えるお寺に参詣してみた。

「手を合わせるつもりはないし、大丈夫。大丈夫」

俺は、登流薄教団に割と長く居たためなのか、何か罰が下らないか少し不安になった。

お寺の前に着いてお寺の門をくぐる。

すぐそこには鳥居があったけど、遠回りをして回避した。

俺は一路、勤行要典があるであろう場所を探す。

「ここかな?」

このお寺の本堂の脇で、お守りやその他のを売っている所があり、

そこに勤行要典はあった。

この勤行要典は蛇腹状で、何となく分厚さがあった。

もう、どれが「正しい」のか解らなくなってしまった。

正直、最初に俺(吾平)が知ったのは登流薄教団が言っている仏法からだ。

初めは、薄い冊子である勤行要典から始めて、そこに書いてある方便品を唱え、松野殿御書等を知り、覚えていった。

そして、豊富会長が小出しにして出していた日蓮大聖人に関する本も読んだりした。

これでいいと思っていた。

それに上長からは、他の宗教やその教えは邪宗であり、知っても意味はない。

そう、指導されていた。

でも、会員である仲間の事故を受けて疑問が出来て、他のを知りたくなったのも確かだ。

だから、こう言う行動に出たんだ。

やってみるもんだよなぁ。

ダウンロードして、一度その場に立ち止まり、モードを切り替えて携帯のスピーカーを近づける。

ボタンを押して再生してみた。

「妙法蓮華経~方便品だいにー」

これを聞いて俺は、この後少しだけ驚いた。

「え?は、速いっ!?」

それは、読む速度が登流薄教団のより2倍。

いや、3倍は速かった。

こんなに違うのか。

何とも言えない気持ちになった。

登流薄教団が前から、新興宗教である事は知っていたが、こんなに違うなんて。

登流薄教団には、僧侶が居ない。

僧侶が居ない変わりに、教祖様がいて、俺達、凡夫(一般)がついて行って学ぶスタンスだ。

一応、多くの教本が登流薄教団にもあるけれど、古文のはないしなあ。

それに売店にいたのが僧侶の人だったけど、何だか有り難み?も違う様な気がしてならなった。

教祖様や僧侶さんにはまだ、敵わないものなぁ。

僧侶のいない登流薄教団って一体?

 2つの勤行要典を手に入れた俺は、後は特に寄り道もせず帰路に着く。

自宅について俺は早速、登流薄教の勤行要典を取り出して比べて見る。

目の前に有るのは3冊。

3冊共目次を見ながら、方便品なら方便品。

開目抄なら開目抄を

と言った具合に、3つを少しずつ比べていった。

そして、分かった事が幾つか。

そのうちの二つの中の一つ目。

二つに御観念文と言うのが有るが、一つにはない。

しかし、登流薄教団では御観念文の一部が無いこと。

二つ目。

二つには追善回向文が載っているけれど、登流薄教団のこれは、回向しか載っていない事など。

まだ、幾つかあるが、この位にしておこう。

しかし、一番気になるのは追善回向の文だ。

これって文章を見るに、先祖供養だよな?

登流薄教団のにはこれが載っていないのだ。

と言う事は、登流薄教団ってお題目を上げる事で成仏云々言っているけど、これでは明らかに登流薄教団は人の死を軽視している事にならないか?

追善回向が載ってないんだから。

もう少し比べて読み進めた俺は「脳乱」になりそうになった。

俺にとっては登流薄教団のこれがオリジナルであり、それが覆されたのだから。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ