その4
数日が経った。
吾平の身の回りでは取りあえず特に変わった事は無くて、
普通に、登流薄教団の定めた「方便品」と「壽量品」を声に出して読んでそれから支度をし、仕事に臨んでいた。
特にこれと言った「功徳」を感じれないままで、平凡な日々が過ぎてゆく。
これはこれで、幸せなのかも分らないけれど。
またある日、テレビを見ているとニュースで、登流薄教団の引越しが完了した事を伝える放送が流れた。
そう。あのAFVにほぼ全ての登流薄教団幹部、関係者が集まっているのだ。
また映像では、3分位の時間を使い、トピックとして式典の映像が流れている。
この時、登流薄教団の会長の豊富丸太郎が写り「何か」を言っていた。
吾平は改めて見る事になった会長をみて「太った?」のと「何処かふてぶてしい?」
という、感じを受けた。
ここで、吾平がどのようにして登流薄教団に入り、そして辞める事になったのかを話そうと思う。
当時の吾平はまだ学生。
勉強に、スポーツに励む毎日。
ある日、吾平は突然不幸な事故に巻き込まれてしまう。
最初の不幸。
文化祭で、大きな段ボールのゴミ箱を運ぶ最中に、後ろを向いたままそれを引きずって
いると足がもつれて左肩から転倒して脱臼する。
そして、医者に通う。
治った後、こんどは高校生と若いのに、虫垂炎(盲腸)になって、約4週間の入院になった。
そして高校生の時の政権「優民党」による相次ぐ不祥事や、政治腐敗が表面化してきていた。
そしてこの、吾平が虫垂炎を患っている時に、
クラブの先輩の「佐賀法子」なる女が、見知らぬ女性を一人ひき連れて
吾平のもとに見舞いにやってきた。
そして「勧誘」が始まった。
二人による吾平への、勧誘が始まった。
「こんにちは。高鍋。お見舞いに来たよー。」
妙に明るい声で、佐賀は病室に入ってきた。
「え?ひょっとして佐賀?・・」
吾平には、この女との面識はほとんど無かった。
唯一知っているのはクラブの活動の先輩であり、佐賀が保険委員だったため前の脱臼で、少しお世話になった位だ。
「|(何故、この女がここに?)まあ、ありがとう。所でさ、となりの人は?」
吾平は、全く面識のない女性をみて質問する。
「あー!この人は、あたしの知り合い。中学生の時の先輩なの」
佐賀のこの発言に、吾平は思いっきりの疑いのまなざしを送る。
見舞いにきた人には失礼だが、佐賀はそれだけ前評判が悪かった。
何故ならば。この時既に佐賀に対して良くない噂がたっていたからだ。
この日、病室での会話と言うと。
「ねえ、高鍋。最近の優民党の不祥事。ニュースでみた?」
この、佐賀の質問に対しそのニュースを見ていた吾平は
「優民党の、施設の乱立と賄賂、それから独占禁止法違反
の事でしょ?」
「そう、党首が多額の賄賂を受け取ってしかも、建物の管理に次々と天下り人間を配置していってたってやつよ。
国民に還元しないから、とうとう罰が下ったんだわ」
「税金のムダ使いは確かに半端じゃなかったみたいだからね」
など、優民党への批判話が続いた。
前評判の悪い佐賀を吾平は、そうは思わなくなっていた。
そして、佐賀たちが退室する間際に最後だけその、先輩は
「今度、ファミレスの『フライングシティ』でおはなししましょう」
と、何故か目を輝かせて言って来て、約束をとったのだった。
しばらく経って吾平は退院した。
学校に通い始めて数日後、吾平は佐賀に呼び出されてこう言われた。
「大事な話があるので、今度の日曜日に『フライングシティ』で会える?」
あまり、佐賀に対して疑いを持たなくなった吾平は、会う約束をしてしまうのだ。
そして、その日はやって来た。
日曜日の11時頃、吾平はファミレス「フライングシティ」の
四条大橋店についた。
だが、いても良いはずの佐賀の姿が無い。
直ぐに辺りを見渡す吾平。
ちょっと挙動不審気味に。
すると、佐賀らしい人物がある車の後席のドアを閉めて、こちらに向うのを吾平はみた。
少し遅れて、佐賀の先輩なる人も同じ車から出てきたのである。
そしていわゆる「だまし討ち勧誘にハマり、それから会員となってしまった。
その後、その時の気の弱さが祟り、言われるまま、だらだらと信者を続けてしまう。
しかし、ある日一人の女性とぶつかって出会ったのがきっかけとなり、それが元で登流薄教団を脱会したのである。
そして話はとび、
登流薄教団がAFVを本拠地として活動するようになってから、徐々におかしな
発言が増えはじめていた。
登流薄教団の憲法改正によって、まずは近隣諸国へのアブナイ発言があったり。
それは、他の宗教への批判的発言がますます強くなり、あまりにも大きな反感を買う様になってしまった事だ。
それにより、特に食料の問題が、最近になって出て来てはいた。
この時代は、一時期に比べて5~6%ほど農家が増え、時給率も上った。
しかし、まだ輸入にたよる物も多くて、トウモロコシ、ダイズなど、加工に必要な原材料となる
食べ物の輸入がほとんどストップした。
エネルギーについては、UFO技術により、問題は無い。
そして、国内では、妙な事件が増え始めたのだ。