春はまだ遠い
「うぅ、寒っ...うわっ凄い雪!」
窓を開けると一面白銀の世界が広がっていた。昨日の夜のうちにどっさり積もりやがったな。私は川崎茜、龍神と人間の混血であり、現在『川崎薬局』の経営している女だ。
「雪かき面倒くさいなぁ...」
庭にも沢山積もってるし、文明崩壊した世界なのに毎年普通に降っている...あいつに依頼してやってもらおうかな。何てことを考えていたら分厚いオレンジ色のコートに身を包んだ庭師がやって来た。
「依頼されてないけど毎度のように来ちゃいました!」
「丁度いいところに来てくれた!」
「あれ、珍しいですねぇいつもは嫌そうな顔してるのに」
「私の息子狙ってる誰かさんを警戒してるからね」
「見抜かれてましたか」
「太陽が出てるうちにやってしまおうか」
「川崎さんも雪かきやるんですか?」
「雪のせいでお客さん逃げちゃったらどうすんの、ビジネスの敵!」
彼女は浅霧睡蓮、
庭師でもあり家政婦でもある女だ。他の皆は寒さで震えてるか、酷い寝相で熟睡している。さっさとやっちゃいますか。
「どんだけ降り積もってんだ?」
「いやぁ、本当にすごいですねぇ」
「何の匂いだろ?」
「美味しそうな香りですね!私も一緒に朝ごはん良いですか?」
彩音さん寒がりのくせにもう食事の用意をしてる。凍えてばかりもいられないか...ところで今日何の日だっけ?
「食べてきてないの?」
「一応、おにぎりくらいは持ってきてます」
「来た時、手に何持ってなかったけ?」
「懐で温めてます」
「ふうん、そうなんだ」
「駄目ですよね?」
「子供達はどうすんの?」
「後で連れてきて...あ、今日雪運動会の日だ!」
「あ、そっかすっかり忘れてた!」
「こんな日でも元気に動きやがるんですから」
「さっさと終わらせないと!」
という訳で、今日は川崎薬局休業日。一人娘の川崎亜理紗の幼稚園の予定をすっかり忘れていた。本当は夫にも来て欲しかったけどもうこの世界に居ない。
「じゃあね、行ってくるね大智さん」
雪かきを丁度いいところで終わらせ、睡蓮は飛ぶように帰っていた。「おはようございます」と拳法女の霞神楽と、葛城さんも朝の準備をしていた。幼稚園に着くと「ママ遅い!」と不機嫌な顔して亜理紗が待っていた。
「こんな朝早く何やってたの?」
「雪かきですよ」
「...嘘でしょ、茜、雪上車持ってない?」
「ところで、今日何の日でしたっけ?」
「雪運動会」
「何だ知ってたんだ...」
「忘れてた?」
「浅霧さんのおかげで何とか思い出せましたよ」
「へぇ来てたんだ」
「毎回思ってるんだけど、浅霧さんと茜実は姉妹なんじゃない?」
「いつもの事ですよ」
「私の思い込みか...」




