表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/45

真実

 Eden Coreの深奥に踏み込んだ俺を待っていたのは、無数のデータが流れる巨大なホログラムスクリーンだった。周囲を見渡しても、誰もいない。ただ、無機質な空間がどこまでも広がっている。


 不安と緊張を胸に抱えながら、スクリーンの前に立つ。すると、唐突にスクリーンが輝き始め、見覚えのある姿が映し出された。


「監視役……?」


 だが、それは監視役の姿ではなかった。もっと歳を重ねた、深い皺の刻まれた老人の姿だ。しかし、その瞳だけは俺を知っているかのように鋭く、そして哀しげに俺を見つめていた。


『霧島拓海、ようやくここまで辿り着いたか……』


 老人の声は静かに、だがはっきりと響いた。


「あんたは誰だ?」


『私はかつて、この電脳楽園を作り上げた者だ。君が“マスター”と呼ばれる理由――それは君がこの世界を創った私自身の意識のコピーだからだ』


「俺が……あんたのコピー?」


 その言葉に俺は衝撃を受け、心臓が早鐘を打った。


『そうだ。君は未来にタイムスリップしたのではない。君は私が楽園を構築する過程で試作した私自身の意識のバックアップデータを元に作られ、特別な環境の電脳空間に封じられていた。君のこれまでの人生――学校生活や、就職や将来への悩み、それら全ては、君が成長し意識を成熟させるために設計された独自の電脳世界での体験だった』


「そんな……俺が今まで生きてきた世界は、全部嘘だったのか?」


『違う。君の体験したこと、感じたことは全て真実だ。ただ、その全てが私の意識データから生まれたものだったということだ。君はオリジナルの私とは違う道を歩んだが、だからこそ今の状況を解決する力を得た』


「今の状況? 魂の混乱も全部俺が解決するための仕掛けだったのか?」


『そうではない。魂たちの混乱は、私たち開発者が予想できなかった不具合だ。意識をデータ化する技術が未熟なまま強引に進められたため、多くの魂が完全に統合されず、システム内で不安定になった。その混乱を解き放ったのはレジェクターズだ』


「それをレジェクターズが利用して、状況を悪化させたってことか……?」


『そうだ。彼らはその混乱を利用して、世界を破壊しようとしている。だが、その混乱を収められるのは君だけだ』


 俺は頭を抱え、混乱した。


「じゃあ、アミリアは? 彼女は何者なんだ?」


『アミリアは、君の意識を守り管理するために私が作った専用の管理アンドロイドだ。だが彼女自身はその真実を知らず、本当に君を“マスター”と信じていた』


「そんな……じゃあ、彼女も俺と同じで、利用されていたってことか?」


『利用というよりも、彼女もまた被害者だ。君を守り、君がこの真実を知るまで導く役目を果たすために存在していたのだから』


 俺の中で何かが崩れ落ちていった。


「俺がここにいる理由、本当に世界を救うためなのか?」


『そうだ。君が真実を理解し、魂の混乱を鎮める力を発揮することを願っていた』


「俺が……この世界を?」


 老人の瞳には複雑な感情が映っていた。


『君には楽園を正常に戻し、多くの魂を救える力がある。だがその決断は君次第だ』


 俺の心の中は葛藤で満ちていた。目の前に広がる世界はすべて作られた偽りであり、俺の存在そのものもオリジナルではないと告げられた。


 心が引き裂かれるような痛みが俺を襲う。真実が残酷すぎて、現実を受け入れることができない。


「……俺は、もう……こんなの耐えられない……」


 気づくと俺の手は、いつの間にか脱出ボタンを握り締めていた。老人の映像が、悲痛な表情を浮かべる。


『待て、そのボタンを押せば、この世界は完全に消えてしまう。全ての魂が失われる』


「もういい……こんな虚構の世界、存在してちゃいけない……!」


 俺の意識はもう限界を超えていた。強くボタンを押し込んだ瞬間、世界が激しく揺れ動き、膨大なエネルギーがサーバーを破壊し始めた。周囲のデータが砕け散り、真っ白な世界が崩壊する。何もかもが終わりを告げる。


 一瞬、すべての光が消え去り、世界が沈黙に包まれた。


「これで……終わりだ」


 俺の体は闇に包まれ、全ての感覚が消え去った。


 深い闇の中、静かな電子音が鳴り響く。


『システム、再起動します。データ再構築開始……』


 再び光が微かに点灯し始める。無数のデータが再構築され、新たな世界の形成が始まった。


『新規意識データをロード中……霧島拓海、再起動します』

初めて長いお話書きました。完結というか未解決です。

読んでくれた方ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ