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ホワイトモカ・カスタマイズ・メソッド

 いつものようにホワイトモカをすすりながら本を読もうとカフェに立ち寄った。


 最近の私は二十一時には布団に入り、四時ごろに起きる生活を繰り返している。気分は後期高齢者である。


 なので仕事終わりにエスプレッソが入ったモカを飲んでしまおうものなら、カフェインが私の身体中を駆け巡り、心臓はドックドックとのたうちまわり、まぶたは新宿駅前のように夜通しギラギラ輝くだろう。


 それは困る。よって、デカフェというものを注文してみたということだ。初めてである。聞いた話によると、カフェインが何かの力によって失われたコーヒーを用いるらしい。その力が魔法によるものなのか、科学によるものかは残念ながら忘れてしまった。たぶん、魔法の力によるものだったような気がする。ちなみに追加で駄菓子ひとつ分程度の金を取られる。きっと魔法使いが高給取りなのだろう。


 初めてついでにミルクを豆乳に変えてみた。しかしここでは豆乳なんて田舎くさい語彙は御法度のようで、Soyミルクという表記がなされていた。


 もちろん、氷少なめのミルク多め、ハチミツをたっぷりぶちまけてくれとも頼んでおいた。これで簡単に、嘘みたいに甘いホワイトモカを飲むことができる。


 さて、店員が店内中に響き渡る声で私の苗字を読んでくれた。いや、呼んでくれた? そのどちらも正しい。正しくないのは、落ち着いたカフェで私の名前を大声を張り上げて呼ぶという行為だけだった。


 覚えていろ、いずれこの国を席巻する大作家の名前なのだから。


 さて、鬼のように甘いホワイトモカを席に持ち帰る。獲物を巣に運ぶアリのように。


 ひとすすり。


 これが素晴らしくうまい。


 ホワイトモカのもったりとした甘みとハチミツのまろーんとした甘みをSoyミルクが華麗に統率している。まとまった味というのは、なるほどこういうことを言うのかとさえ思う完成度。


 大豆を“畑の肉”なんて呼び方をすることもあるそうだが、とんでもない。牛の方を“牛舎の大豆”と呼んだ方がいいとさえ思う。


 実を言うと、幼少の頃の私は豆乳が大の苦手だった。冷奴も苦手だった。あれらの豆くささというか、風味がどうしても喉を通らなかったのである。もしかしたら、私ではなく私の喉がこれらを嫌っていただけかもしれないが、今となってはわからない。


 しかし今はどうだろう。Soyミルクの風味の良さを見出し、それに身を委ねるほどになってしまった。これを成長と捉えるか、老いと捉えるかは、未だ判断しかねるところであるが、その問題は端においておくとする。


 私と同じホワイトモカを喫したい方はぜひ、お近くのアメリカン・チェーン・カフェにて、「ホワイトモカのアイス、トールのカップでエクストラシロップ、ミルクをSoyミルクに、デカフェエスプレッソに変更して氷少なめのミルク多め、あと死ぬほどハチミツかけてください」と言ってみてほしい。


 あるいは唱えてみてほしい。魔法を使うとき、いつもそうしているように。

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