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第五節:新天地、新たな出会い

 ギルドの奥の部屋に連れ込まれた俺の目の前に所長と呼ばれる老剣士が座っており、お茶を啜っていた。部屋に連れ込まれても話が始まらない俺は少々無礼だと感じながらも話を促すことにした。しかし……。


「あの、話を始めてもらえませんか?」

「ひぃ! も、申し訳ない! 少し冷静になるのに時間がかかってしまって!」

「……なんか、ごめんなさい」

「謝らんで下されハイル殿! これは我々の失態ですゆえ!」


 やはり始まらない。きっと奥に連れて来たのは混乱を避けるためなのだろうが、俺にとっては登録だけしてすぐお暇しようと思っていたのに。夕刻までにコンドー鍛冶武具店にいくことは叶うだろうか?


「んぐっ、ぷはぁ~。さて、ハイル殿。話でありますが……」

「あ、いつもの通りに喋って大丈夫ですよ? 俺もあまり偉くないので」

「んっ? そうですか? でしたら……ハイル、貴殿にある話というのはギルド共通でね、君を見つけ次第保護をしろとイラーニア村冒険者ギルドより各ギルドへ通達があったのだ」

「それはなぜですか?」

「理由までは伝えられてないが、村に戻らないと言ったんだろ? ギルドの人たちが貴殿を心配し、せめて元気でやっているか、もし精神的に死に掛けていれば保護を頼まれたのだ」

「そう、村のギルドが……」


 正直、ここまで心配をかけているとは思わなかった。村のみんなは結構淡白だったから心配とかしないと思っていたのだから。


「わかりました。村のギルドの方には俺から手紙を書きます。それで、ここでは冒険者をやらせてもらえますか?」

「貴殿の申し出は快く受け取ろう。では、冒険者カードの更新を行うために一度ステータスを見せてもらってもいいか?」

「いいですよ、ここでのステータス確認はどのように?」

「血液を一滴、この石版に垂らしてもらえれば十分だ」

「わかりました」


 俺は服の袖に入れておいた、護身用の脇差を取り出して人差し指の腹を少し切って血液を石版に垂らした。すると、石版の文字が淡く光りだした。ここの文字は[漢字]と呼ばれていて、アージア神聖国とは違った強さを感じる文字だった。ステータスの解析が終わり、空間にステータスが表示される。

 その時、この部屋にいた俺と所長はあまりのことに声すら出なかったのだ。


 ――ステータス――


 ネーム:ハイル=クローデル

 性別 :男

 種族 :人

 年齢 :十六

 職業 :剣士

 神託スキル:『抜刀術』

 称号 :『天才少年』『剣術士』

 加護 :『剣術神の加護』『運命神の加護』


 体力 :四〇〇〇

 魔力 :一二八〇

 筋力 :一三一六

 脚力 :一二二四

 敏捷 :三〇八〇


 スキル詳細

『抜刀術』……神から与えられたユニークスキル。抜刀するときのみに強大な力を発揮し、あらゆるものを断ち切る。使用者の技量によって無限の可能性を秘めており、今後も進化の可能性あり。


 魔術詳細

『時魔法』……魔力を大幅に消費するが時間を操る世界に干渉する古代魔法。使用すればするほど消費量を抑えることができる。

『闇魔法』……使用者の心内変化により作られた新生魔法。消費量は多いが、相手の精神に潜り込んだり、闇の中での基礎能力が大幅に増えたりなど恒常的な発動が行われている。また、闇の中にいるだけで魔力を回復することができる永久機関にもなる。

 ―――― ――――


「こんなステータス見たことないぞ俺……」

「所長になって5年たってはじめてみたものばかりとは……」


 本来、人のステータスは四百を超えればいいところで、千を超えるのは勇者か神が寵愛しているものしかありえないのだ。しかも、俺の知らない間に二人の神から加護を受け、新生魔法まで発現していた。

 当事者の俺も所長も今回のステータスは秘密ということで、俺は改めて白金色のカードを受け取った。所長も含めて、俺のような強い冒険者が来ること自体は歓迎らしく最後はみんな笑顔で迎え入れてくれた。


 ギルドを後にし、コンドー鍛冶武具店を目指そうとしたのだが。どうやら迷ってしまったらしい。そもそも、町の地図をもらったりどこにあるかを聞いとけばこんなことにならなかったのだが、急ぎすぎて見落としていたようだった。

 周りに聞こうにも、忙しく働いている人や弟子らしき人に説教をしている親方さん、お買い得なのか八百屋というお店に群がるご婦人たち。とても誰かに聞けそうになかった。困ったものだ。仕事熱心なのはいい事だが……俺が淋しいぞ……。

 仕方なく、もう一度ギルドにいき場所を聞こうと振り向いた矢先。


「きゃっ!」

「うわっ!」


 人とぶつかってしまった。俺は倒れることはなかったが相手は倒れてしまったので俺は手を差し伸べた。自分が悪い以上、先に謝らなければならない。相手は俺の手をとって立ち上がる。


「俺の不注意ですまない。どこか痛めたか?」

「いえ、大丈夫です。私もちゃんと前を見ていなかったので」

「そうか。自己紹介しとくよ。俺はハイル。ハイル=クローデルって言うんだ。今日からここで冒険者をやることになったんだ」

「冒険者でしたか! 私は、サクラ。サクラ=ヒイラギです。私も冒険者なんですよ?」


 自己紹介をしてくれた人、もといサクラは背中に背負った弓を見せた。サクラはハカマと呼ばれる極東の服を着ており、上半身は名前に似合う櫻色の着物を着て、下半身には平袴と呼ばれるオーソドックスな深緑色のものを着ていた。


「先ほど独り言が聞こえたのですがどうかされたんですか?」

「実はコンドー鍛冶武具店に用があって、探してるんだけどどこかわからないんだ」

「なら私が案内しますよ!」

「それは助かる!」


 無事道案内も確保できたので、今度こそヨミコさんのお店に向かうことができそうだ。


 ―――― ――――


「えぇい! 勇者と『剣星』はまだ見つからんのか!」

「気をお静めください! 王よ、結婚はさせなくてもよかったのではないですか!?」

「ふん! この国から出られないようにしておけば戦争でも勝てるのだ!」

「戦争……!? まさか、今度は人類同士の戦いを起こそうというのですか!?」

「そうだ! 手始めに、我々アージアにはむかう極東から滅ぼしてくれるわ!!」


 私は今、非常に焦っている。王の勝手な動きによって結婚を迫られていた勇者と『剣星』が姿を消したからだ。こんなとき、王に自分の意見を伝えられたキョーヤを思い出す。仲間の裏切りによって奥さんとともに謀殺されてしまった私の親友だ。彼がこの場にいればと何度思ったことかっ!


「私に逆らうやつは誰であれ死刑だ! ……そういえば、お前の親友も私に逆らっていたなぁ」

「!! キョーヤの事でしょうか? 王よ」

「そんな名前だったなぁ~。私にはむかうからあやつの仲間に金をちらつかせて私が殺させたのよぉ! あの時は愉快じゃったなぁ!! ガハハハハハハ!!」


 そんな……。キョーヤを殺したのも、奥さんを殺したのも。王こいつがやったのか!?

 許さない。

 許さない!

 許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない!!


「王よ」

「ん? どうした?」


 そのとき、私は王に向けて腰に挿していた銃口を向けた。


「あんたは生きてちゃいけない人間だ」


 言い切った瞬間に引き金を引く。魔法も大して使えない王は発砲音と共に眉間に穴を作って倒れた。

 私の中に黒いものが立ち込める。

 この王のせいで、国のせいで、親友を失った。


「こんな世界、ブッコワシテヤル!!」


 その日、新たな脅威ができた。そのことを世界のまだ誰もが知らない。


 続

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