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第四節:極東への旅路 後編

 

 山賊襲撃を乗り越え、順調に陸路を進んでいた俺とヨミコさんは極東に入っていった。国境にはよく関所があるが、アージア神聖国と極東はあまり友好関係が無く国境に関所が存在しなかった。ひとまず極東に入れたことに少し安堵し、ヨミコさんと話をしていた。


「ヨミコさんの町ってどんなところですか?」

「あたしの町はスザクノサトって言ってねぇ、燃える鳥の神様が祭られてる町なんだよ。町自体は道が直線になってて区画が分けれてるのさ」

「直線ってことは陣取りの盤面みたいな?」


「陣取りがわかるのかい? なら、話が早いねぇ」


 この時点でヨミコさんの町、もといスザクノサトの大まかな全体像が見えてきた。陣取りの盤面と同じようなものであれば道が垂直に交わっていて、きれいな正方形の土地が出来上がっているそんなイメージだ。昔、父が教えてくれた故郷の話と酷似しているので、ふと先日ヨミコさんが言っていた町の領主の息子というキーワードが引っかかる。


「ヨミコさん、俺の父のことなんですが……」

「ん? キョーヤ様かい? キョーヤ様は前も言った通り、領主様の息子でねぇ。嫁さんを見つけたと言うなり領地から居なくなってしまった残念な好青年だったよぉ。町を出て行くときにあたしのおじい様がコンドー家の当時の技術を全てつぎ込んで作ったのがハイルの刀、『蒼穹ノ太刀』よぉ」

「なるほど……因みにこの刀は何故蒼穹という名を与えたんですかね?」

「あたしがおじい様から聞いた話だと、正統な人が持つと空のように青く色が帯びるのが一つ。それと、同じように正統な人が正しく使うと刀から斬撃が飛ぶから、っていってたねぇ」


 斬撃……あれ? 確か何処かで。


 思い出してみると、先の山賊戦の時に矢を斬ったらついでといわんばかりに後ろの山賊たちの首まで斬られていた。刀が届かない距離なのになぜか斬れてたのだ。それだけじゃない。今までの雷帝や大蜘蛛、大蛇も確かに飛来してくるものを斬っていたらそれに伴うように傷を与えていた。


「今までの摩訶不思議は全部『抜刀術』の力じゃなくてこの刀の性能か……」


 俺は内心ガッカリした。今までスキルの力とはいえ実力だと思っていたものが、刀の性能だけだったとは。刀の真価も見抜けず、自分の力と勝手に勘違いしていたことに自分を斬りたくなる。


「ハイル、たとえ刀の性能だったとしてもそれを扱うには性能に合った技量や努力が必要なはずだよ。ハイルはキョーヤ様の子供で、自分の子に修行をさせていたはずさぁ。性能に振り回されないお前さんは刀の性能をものにしている立派な男だよぉ」


 綱を片手に握りながらではあるが俺の頭を胸元にもっていったヨミコさんだったが、俺は欲情することはなく、心から安心する感覚になった。やはり、ヨミコさんと母さんに共通の何かを感じる。……これが母性というものなのだろうか? 


 その後の極東への道のりは山賊にも会わず順調に進んでいき、俺はスザクノサトに到着した。想像していた通り賑やかな所で建物が規則正しく建っていることに驚いた。広さも町というより街というほうが正しいくらい広い。初めての極東の町はとてもよいところだった。俺はひとまず冒険者ギルドに行き冒険者カードの更新を行ってからコンドー鍛冶武具店に向かうことにし、ヨミコさんとは別行動になった。


「それじゃあ、ヨミコさんありがとうございました。後で店に行きますね」

「あいよっ! 道中疲れてるだろうしゆっくりきな!」


 ヨミコさんは豪快に笑って馬車を走らせていった。

 ギルドに着いたものの、どの建物も木造建築で建設士たちの技量が高いことが見てわかる。俺の村やアージア神聖国ならば領主や貴族の屋敷レベルのものが一般にまで普及しているのだ。これには驚きを隠すことができなかった。ギルドに入ってみると俺と同じような格好の人が多く、中には極東の一般的な武具とされる甲冑と呼ばれるものを着た人も多かった。あまりジロジロ見るのもあれなので俺は足早に受付へ向かった。


「すいません、ここで冒険者をやりたいのですが」

「ようこそ~。新人ですか? どこかからの移住者ですか?」

「アージア神聖国から来た者です。冒険者カードの更新お願いします」

「分かりました~。カードお預かりs……」


 ここで、受付の女性はなぜか止まってしまった。その手には俺の冒険者カードを持ち、目を見開いている。何か不味い事したっけなぁ?


「ちょ、ちょっとまってください!? 白金級でしかも登録月が半年前!?」

「え、えぇ。色々ありまして……」

「ちょ、所長! 至急降りてきてください!!!」


 受付嬢は何かを焦ったように所長、いわゆるギルドマスターを呼んでいた。回りも受付嬢の叫びを聞いたのかこちらを見ている人が多い。


「半年前に冒険者始めた白金級って?」

「そもそも虹級一歩手前っていうのもすげぇのに」

「ちょっとまって、あの人ハイル様じゃない!?」

「ハイルってマジの半年で白金級に上り詰めたっていう天才少年『抜刀術』のハイルかよ!?」

「腰に刀、赤色の瞳、間違いないわ!!」


 やはりどこへ行っても名が知られているようで。目立ちたくない俺にとって騒がれるのはやはり恥ずかしいものだ。自分の境遇に悲観していると階段から駆け下りてきた老剣士と言っても過言ではない男がいた。


「ハイル殿っ! ひとまず奥の部屋へ!!」

「えっ、ちょ、まっ」


 腕を引っ張られ階段を上り、奥の部屋へ連れて行かれる。なんだかやな予感がするんだが……!!!


 続

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