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第六節:守るための覚悟

「──うおおおおおお!!」


 突然の宣言に、俺の体が熱く震えた。胸の奥から力が湧き上がる感覚。そうだ、俺はもう迷わない。サクラを守るため、仲間を守るため、この力を受け入れる。


 ヒイラギが両手を広げると、床の魔法陣が淡く光り始めた。その光は生き物のようにうねり、俺の周囲を取り囲む。フジワラもまた静かに手を差し出し、低い声で呪文を唱え始めた。


「ハイル、覚悟はできているか?」


 問いに頷くと、光が一気に俺の体に流れ込む。熱と痛み、そして理解できない感覚。全身が震え、頭の中に声が響いた。優しくも力強い、フェニックスの声だ。


《ハイル・クローデルよ、我を呼び、愛を示した。よって我は君に力を貸そう》


「……俺は、お前を守る」


 叫ぶと同時に、俺の意志とフェニックスの力が共鳴する。炎のように熱い力が体を包み、視界は赤と金に染まった。


 だが、その光景は幸福感だけではなかった。突然、魔法陣が裂け、床が揺れる。ヒイラギとフジワラが緊張の面持ちで呪文を修正する。


「これは……依り代の適合率が想定より高すぎるか……!」


 どうやら俺の体はフェニックスの力を受け入れすぎているらしい。呼吸を整えようとしたが、胸の奥で不自然な圧迫感が続く。


「ハイル! 大丈夫……?」


 振り返ると、サクラが少し震えた手で俺の腕を握る。瞳は心配と決意で揺れ、声もかすかに震えていた。


「サクラ、俺は必ずお前を守る!」


 その言葉に彼女は一瞬息をのみ、頬を紅潮させながら小さく頷いた。


 ヒイラギが小さく息を吐き、フジワラも静かに頷く。


「ふむ……想定通りではあるが、君の適応力は特異だ」


「……私、ハイルと一緒にいたい。だから大丈夫、信じる」


 サクラの言葉に、俺の胸の奥の恐怖が消えた。愛……いや、仲間としての信頼が、俺の力を安定させる。


 その時、部屋の外から慌ただしい足音が聞こえた。門番の男が飛び込んできて、震える声で告げる。


「ヒイラギ様! 王国の騎士団が──依り代の変化を感知しました! 衝撃が城全体に──!」


「──くっ、やはりあの力は隠しきれないか」


 フジワラが額に手をやり、低く唸る。どうやら、依り代の覚醒は外部にまで影響を及ぼすらしい。


「ハイル、すぐに訓練を開始する必要がある。我々の力を完全に制御できなければ、城ごと吹き飛ぶことになる」


 ヒイラギの指示で、俺とサクラは訓練用の広間へ移動させられた。壁一面に古代文字が刻まれ、天井からは魔法の光が降り注ぐ──まるで異世界の神殿のようだ。


「まずは基本の制御からだ」


 ヒイラギは言う。俺は深く息を吸い込み、体の内に燃え上がる炎を意識する。サクラも隣で小さく息を吐き、手をかざす。女性らしい柔らかな所作だが、その眼差しには強い意志が宿っている。


 最初の試練は、炎の精霊を呼び出し、形を制御すること。俺が意識を集中させると、掌から小さな炎が立ち上る。だが暴走して四方へ飛び散る。


「落ち着いて、ハイル。焦らないで」


 サクラが優しく声をかける。彼女の声の温もりが俺の心を落ち着け、呼吸を整える。再度集中すると、炎は球状にまとまり、俺の掌で安定した。


「できた……!」


 歓喜の声を上げると、サクラも嬉しそうに微笑む。女性らしい笑顔で両手を握り合わせ、目を細めるその表情に、俺は胸が熱くなった。


 しかし、その瞬間、外から大きな爆発音が響いた。窓の外では城の一部が崩れ、騎士団が混乱している。


「……来るわね」


 サクラの声は落ち着いていたが、瞳には鋭い光が宿る。俺たちはすぐに広間の扉を開け、廊下へ飛び出した。城内は混乱の渦。敵か、あるいは力の反動か、騎士団と魔力の暴走が同時に起きていた。


「私、後ろにいるから! ハイル、行って!」


 彼女の言葉に従い、俺は炎をまとい、次々と襲いかかる障害を突破する。フェニックスの力が体を駆け巡り、視界は赤と金に染まる。


 サクラも後ろで魔法を放つ。女性らしいしなやかな動きで、敵の攻撃をかわしつつ、俺の背中を守ってくれる。二人で協力しながら、城の中心へ──目的は外界への被害を最小限にすることだ。


 途中、俺は自分の祖父、ヒイラギの言葉を思い出す。


「愛を示せば力は完全に顕現する」

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