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第十二節:目覚めと安静

 眩い光に照らされ、目を開く。


「知らない、天井」


 何となくつぶやきながら、体を起こそうとするが激痛が走りあきらめる。少なくとも薄暗い迷宮の中ではなくスザクノサトに戻ってきたことだけはわかった。見える範囲に自分の刀と荷物が見える。きっとサクラたちが援軍を呼んで回収してくれたのだろう。


「ハイルさんー、入りますよー」

「あ、はいどうぞ」


 失礼しますねー、と言いながら入ってきたのはおそらく病院の人なのだろう。ボードに挟んである何かを書きながら入ってきた。話を始める前に包帯を変える必要があるらしい。


「さて、ハイルさん。色々やりながらで聞くけど何があったか覚えてる?」

「サクラたちを逃がして、召喚陣から出てきたドラゴンと戦ったところまでは」

「やっぱりそこまでなのね」


 やっぱりとは何だろうか。俺の中ではその場で倒れたのだと思っているのだが。


「援軍できた冒険者たちの話だとね、ドラゴンを倒したであろうところで合流したら突然切りかかられたって。しかも鬼の形相で」

「俺が!?」

「うん、それで正気じゃないって判断した人が10人がかりで抑えてなんとかなったみたいよ。ちなみに援軍組に一応けがはなし」


 けががなかったのならよかったが……。俺は正気じゃなかったのか。

 いや、待てよ? たしか好戦的かつ屑思考のやつがいたような気が。

 もしや。


「その時僕が持ってた刀って何色か聞いてます?」

「ん? 多分()だったと思うよ?」


 やっぱりそうじゃねぇか!!

 あいつやりやがったな!!


「ありがとうございます。とりあえず体はもう大丈夫なので援軍に来てくれた人たちに感謝と謝罪をしてきます」

「え!? さすがにそれはちょっと許可できな……ってもういないし!!」


 ――――

 ――


 ギルドに急ぎ戻ってみると喧騒が一気に静寂へと変わった。酒を飲んでいたやつや依頼を受けようとしていた冒険者、そして受付をしている人ですらこちらを見ている。

 酒を飲んでいる中に大人数で飲んでいる集団があった。俺はそれが援軍に来てくれた人たちだろうと考え、集団に近づく。


「失礼かもしれないが、あなたたちが今回援軍に来てくれた人たちで合ってるか?」

「あ、あぁ。俺たちが行った」


 若干おびえてるようにも感じたその返答に、内心まずったなと思いながらも当初の目的を果たそうと話を続ける。なるべくおびえさせないように。


「危険なところまで来ていただき感謝する。俺はドラゴンを倒した後に気を失ったのだが、応援に来た矢先に俺があなた達を襲ったと聞いた。意識がなかったとは言え、申し訳ないことをした」

「現場を見る限り相当な死闘だったんだろ? 正気じゃなくなるのも仕方ねぇ」

「とはいえだ。本来であれば殺人行為だ。ギルドも重く受け止めると思う。これで許してくれとは言わないが俺がもらう報酬とドラゴンの素材をそちらに譲ろうと考えている。もしけが人がいれば治療費の補償もしようと思うがどうだろ――」


 来てくれた集団に補償を伝えようとしたとき、リーダーだと思われる大盾を持った男が前に来て話を遮りながら話し始めた。


「『抜刀術』さんよぉ、ちょっとなめてねぇか?」

「……誠意として足りないということか」

「ちげぇなぁ。あんたは『一人』で『ドラゴン』を討伐して、その反動で援軍としてきた俺たちを認識できなくて襲っちまった」

「そうだな。だからこそギルドの補償とは別に俺からも補償を」

「だからそこがちげーんだって」


 本当に気づいてないんだなと愚痴をこぼし、呆れた顔でこちらを向く。周りのやつらも、そういうことじゃない、気づけ、頼むから気づいてくれ、リーダーもめんどくさい、バラはここですか、と口々に言い始める。補償ではなく土下座がほしいとか命をもって償えとかそういうことなんだろうか。


「つまりだな、あんたが俺らを襲ったのは殺気立ってる領域に入った俺たちのミス。あんたはドラゴンを一人で討伐した正真正銘のドラゴンスレイヤー。英雄を歓迎こそすれ補償?? なにもしてねぇ俺達には酒さえあれば十分だってことさ!!」

「……つまり?」


 意味が分からず聞き返すとギルドにいた全員がずっこけた。いや何人か顔からスライディングしている。あれは大丈夫なのか……。


「察しが悪いな!! そんなに補償したいならみんなに酒を奢れってことだよ!!」

「あぁ、そういうことか。それなら……」


 俺はギルドマスターを呼んでもらう。


「ギルマス!! 今日の飲食代を報酬と預金から引いといてくれ!! 今日は俺の奢りだ!!」


 ギルド内から歓声が上がる。ふと上を見ると

『祝!! ドラゴンスレイヤー!!』

 と書かれていた。……気づかなかったな。

 ギルドに活気と喧騒が戻ってきたことに安心していると突然視界が歪み、何となく後ろに倒れていることだけを理解すると次に来るだろう衝撃に備えて目をつむった。

 しかし、衝撃が訪れることはなく目を開けるとそこには体を支えながら鬼の形相でこちらを見ているサクラがいた。


「あ、サクラ。ありがとう」

「……」

「ん? サクラ?」

「怪我人が何してるのよこのあほぉぉぉぉぉぉ!!!」


 大きく振りかぶった手が顔をとらえて衝撃が来る再度俺の意識は落ちていくのだった。


 続

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