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第十一節:迷宮の罠、死闘

 迷宮内のヒカリゴケが群生しているところに男を横たわらせる。改めて見て俺は息をのむ。ほぼ瀕死とみていいだろう。所々肉は抉れており、それを見て気絶していないことに己を称賛したい気分だ。


「ハイル、どうしたらいい?」


 サクラは顔色を悪くしながらも俺を見て聞く。その瞳にはこの人を救いたいという確固たる意志を感じた。俺はアイテムボックスからあらゆる回復アイテムを取り出してサクラに預けた。


「とりあえず、俺の持っている回復系のアイテムだ。俺がこれから解析をするから、俺の言ったものを渡してくれ」

「わ、わかったっ!」


 俺は男の肩に触れ、過去に数度やった工程を思い出す。


『いいかい、ハイル? この術が使えるのはクローデル家の人間だけ。これを使うのは本当に信頼できる人の前だけよ』


 母セレーナの声が内から響く。もっと深く、もっと大きく。集中を、神経を、感覚を。研ぎ澄ませて。


「『人体解析(アナジーポリス)』」

 全身打撲――重症


 左腕部――欠損、修復可


 腹部――欠損、修復可


 脚部――骨折


 これは酷いな。あのトカゲのような生き物だけじゃない。ワイバーンクラスの魔物にまで襲われている。欠損もあるし街まで戻っている間に死ぬことも考えられる。そうすれば……。


「サクラっ! その中に一本だけ赤色の液体が入ったフラスコがある。それをこいつに満遍なくかけてくれ!」

「わかったっ! 任せて!」




 サクラは持っていたアイテムを一度地面に置き、赤い液体のフラスコを男にかけた。サクラにかけさせたのはこの世界でも希少なエリクサーである。欠損部分すら再生させるほどの力があるが、その希少さから幻の秘薬とも呼ばれていた。

 男の体は見る見るうちに治っていき、ついには五体満足しかもケガ一つなしという状態にまでなった。ケガが治ったことで意識が戻ったのか、男の目が覚めたのは回復がおわるのと同時だった。


 ――――

 ――

「助けてくれてありがとう。俺はアル。アル=ウェイトだ、『ダンダリオン』のパーティーにいる」

「俺はハイル、ハイル=クローデル。こっちのロングヘアーの方がサクラ=ヒイラギだ。あんたには色々質問があるが聞いてもいいか?」


 互いの自己紹介を終え、俺は気になっていたことを聞こうとした。無理に聞くつもりは無いが、一応依頼で調査に来た身である。アルと名乗った彼は首を縦に振ったのでいくつか質問をした。


 アルのパーティーのこと

 他の生存者のこと

 奥に何があったのか


 それぞれ順番にアルは話し始めた。


「俺のパーティーは多分ほぼ全滅だと思う。他に生存者は見なかった。それで、最後の質問なんだけど……」

「何かあったのか? その反応は」


「実は……()()()があったんだ」


 召喚陣……だと……!?


「それは、本当に召喚陣だったのか!?」

「お、おう。間違いない」


 召喚陣には多くの用途があり、罠もあれば転移をするものまで幅広い。しかし、ここにあるのは間違いなくボス級の魔物を召喚するものだ。そんなもの、早く破壊しなければいけない!!


「案内してくれ。その召喚陣を壊す」

「召喚陣って壊せるの!?」

「完成前の召喚陣なら俺でも壊せるさ。完成してた時は……逃げるぞ」


 アルの案内の元、召喚陣のある階層に行くことになった。道中、様々な魔物に襲われたが、あのトカゲレベルではなかったので容易に踏破することができた。しかし、召喚陣の階層。そこには異様な雰囲気があった。


「あ、アレだ! 召喚陣!」


 サクラの指さす先には青色の何かで書かれた。しかし、それは俺にも見たことがない魔法陣ですでに起動しているのがわかる。一足遅かったことを悔やんでいると魔法陣から閃光が出て、辺りが白に包まれた。

 まばゆい光が収まってみてみるとそこにはあのトカゲを超えるやつがたたずんでいた。


「サクラ。アルを連れて逃げてくれ」

「え、でも――」

「こいつは下手すると俺でも抑えられるかどうか。アルを生きて返してギルドに報告。援軍を呼んでくるんだ!」

「ハイル君一人じゃ」

「いいからいけ!!!!」


 サクラとアルを逃がすため刀を構える。


 意識を集中させ時魔法を使い想像もつかないような俊敏さで刀を抜いた。刀が光り輝く瞬間、俺は敵に立ち向かった。

 燃えるような目を持つドラゴンが、その巨大な鱗で俺の攻撃を防ぎ、炎を吹きつける。俺はかろうじて身を守りながら、息を切らせていた。

 迷宮の闇がドラゴンの巨大な翼によって更に深くなり、俺はその影に隠れながら迅速に動く。しかし、ドラゴンの視界から逃れることは難しく、焦る俺の動きが露呈していることに気づく。

 ドラゴンの圧倒的な力に押されながらも、抜刀術と『言の御霊』を使い、何とか戦っていた。しかし、そのほとんどの攻撃は鱗に阻まれ、傷一つ付けるのは容易ではない。


 俺はは地に這いつくばり、息を整えながら迷宮の床に手を触れた。その瞬間、床から伝わる何か力をくれるような感覚を与え、体が静かに震えた。


「今まで一人だったんだから。今更負けるわけがないだろっ!」


 俺は叫びながら蒼穹ノ太刀を納刀してドラゴン相手に構える。

 多分振れるのはあと一回。この一発ですべてを決める覚悟を手に込める。

 俺はこの一撃にありったけの言の御霊を使った。


「星降る夜空、蒼穹に誓いを捧げよう。闇の中で踊る刃は、桜吹雪の如き美しさで。

 我が魂よ、星々の導きを感じ、覚醒せよ。命の輪廻を断ち切り、光り輝く刃。『抜刀術・必殺剣星崩し』!」


 俺は唱えながらありったけの身体強化魔法を使い、刀を手に力強く振るう。その刹那、剣が空を裂き、ドラゴンの鱗に深い傷を刻み込んだ。


 首を切り落としたのを見て俺は意識を手放しそのまま倒れこんだ。


 続

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