第二話 やけ酒女二人
「さっさと、酒持ってきなさいよぉ!」
カウンターにガラスのジョッキを叩きつけると、その衝撃で中の氷がガシャリと砕ける。
もう何杯目かは知らないが、やはり飲むならハイボールに限る。
「あれ、なにィ…?」「目を合わせちゃだめよ。」
グラスを仰ぎ、僅かに残されたハイボールをどうにか飲みきってやろうと苦戦する私のもとに、若い女の声が聞こえてくる。
視線を向けると、それは成人したばかりぐらいの若い少女の集団で、クスクスと笑い声をあげて、こちらを覗き見ているようだった。
そんなに、私が滑稽か。
もはや勇者の育て手としての外聞も気にしなくて良い私に敵はいない。
この世のすべてを恨むようにギロリと睨みつけ、ジョッキをかかげで威嚇してやる。
そうすると、彼女たちは青ざめた顔をして、蜘蛛の子散らすように店の端へと席を移動したようだった。
はん、群れても弱いヒヨッコ共が。
「ちょっと、あんた飲み過ぎよ。」
などと、口に入れた氷をバリバリ貪りながら勝利の余韻に浸っていると、聞き馴染んだ声が背後から聞こえてきた。
「あら、アリッサ。」
「あらじゃないわよ…って、このグラスの量。あんたまた捨てられたの?」
そう言うとあの女は店員を呼んで、グラスをいくつか持っていかせると、
いつものように私の隣に断ることもなく座ってきた。
それにしても、捨てられたとは人聞きの悪い。
あんなもやし男私から捨ててやったのだ。