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第一話 私、また捨てられました。
「君にはパーティを抜けてもらう。」
ああ、またか。
私は眼の前のいかにも青少年って感じの自称勇者を見つめてそう思った。
ここは酒場。
地酒と土着料理を楽しめる庶民的な佇まいで、いつもは地元民でごった返しているお店だった。
しかし、今は昼なので人の入りもまばらで、私と勇者は十人がけのテーブルを二人占めしている。
「念の為に聞くけれど」と私は声を潜めて口を開く。
「ドッキリというわけじゃぁないのよね?」
勇者は一瞬目を丸めると、神妙な面持ちで頷いた。
「本気だ、カコとも相談して決めたんだ。」
その言葉を聞いて私は思わず天を仰ぐ。
なるほど、この男。
王国騎士の見習いで燻ぶっていたところを拾い上げ、ここまで育てたられた恩を捨て、あの赤髪女を選ぶというわけか。