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第30話 これで依頼は終わりですからね

 先制点を上げたポールスターだったが、時間が経つにつれ劣勢に回る時間が増えた。

 押し込まれるにつれ相手チームのセットプレーも増えて後半に2点を失い、そのまま試合終了を迎えた。


「残念でしたね」

「そうだね。でもシーズンはまだまだこれからだよ」


 スタジアムをあとにしても俺と加那さんは、熱気を引きずったまま言葉を交わす。


「それに……」


 加那さんは両手を後ろにまわして、少しだけ身を屈めて、俺に上目遣いを向けると柔らかく頬を上げる。


「今日は颯真くんとデートできてとっても楽しかったよ」


 試合の余韻を残して上気した顔はいつも以上に魅力的に見えてしまった。

 でも加那さんとの関係を深めるわけにはいかない。

 俺は目を逸らして素っ気なく言う。


「だからデートじゃないって言ってるじゃないですか」

「ほんとに颯真くんは強情だな」

「強情でもなんでもいいです。とにかくこれで依頼は終わりですからね」


『依頼』という言葉を強調した俺に加那さんは咎めるような視線を送ってきた。

 が、すぐに表情を崩す。


「颯真くんは楽しかった?」

「そうですね。サッカーを見るのは随分久しぶりな気がしますけど、楽しかったですよ」

「久しぶり、か。……うん、それなら良かった」


 満足そうに微笑むと加那さんは俺に背を向けて歩き出した。

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