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刑務所ライフ  作者: ちゃんマー
3/4

YA少年刑務所

 三 YA少年刑務所


 刑務所には種類があります。


 YA級 初犯少年刑務所


 YB級 累犯少年刑務所


 A級 初犯刑務所


 B級 累犯刑務所


 LA級 長期初犯刑務所


 LB級 長期累犯刑務所


 W級 女子刑務所


 もっと細かく別れているらしいのですが、大体こんなもので、私はこれだけしか知りません。


 初犯とは、初めて刑務所に入る人のことです。


 累犯とは、二回目以上刑務所に入る人のことです。


 長期とは、刑期が八年以上の人で、無期懲役の人はこの長期刑務所に入ります。


 今回私が入る、少年刑務所は、二六歳未満の人が入る刑務所で、事件が大きいと、本当の少年もここに入って居ます。


 九州にあるYA少年刑務所、私はここで残刑を過ごすことになるのです。


 分類センターからYA少年刑務所までは、手錠をされて、もう一人の受刑者と数珠繋ぎに成って一般のJRで行きます。


 早朝ではあったが、めっちゃ恥ずかしく、連れ出しの刑務官は私服ですが、きっと見る人が見たらバレバレでしょう。


 分類センターを出る前に、今から九州のYA刑務所に移送すると告知があり、その時初めて自分が行く刑務所を知りました。


 そして九州までの移送ですが、まるで市中引き回しの刑を受けて居る気分です。


 しばらく見る事の出来ない、娑婆の風景だけど、恥ずかしくて、私は下ばかり見て居ました。


 途中、修学旅行の学生たちと合致して、指を指され、コソコソ私たちの事を話す声が聴こえて来ます。大変恥ずかしい思いをしました。(お願い、こっち見ないで~)


 数珠繋ぎの相棒も、きっと恥ずかしいだろうなと思い、一応見てみると、堂々と学生たちに、ガンを飛ばして居ました。


 コイツはバカなのかな?と思いましたが、きっと大物になるでしょう。


 数時間の移送ではありましたが、私には物凄く長いものに感じられました。


 しかし、これで暫らくの間、娑婆とはお別れです。(さようなら、シャバ・・・)


 そんな感傷的な気持ちにも成りましたが、とにかく早く目的地に着いて欲しいと、思いました。


 そして昼過ぎ頃になってやっと、目的地の九州YA刑務所に到着しました。


 到着初日は、領置品調べや、入浴、とかで一日を使い、翌日から考査工場と言う所へ配属されます。


 この考査工場には、二週間居る事になるのです。


 二週間の間に、刑務所での所作などを教えられ、どこの工場へ配属するかを、決められます。


 その期間として、二週間ほどこの考査工場で過ごすのですが、ここがまた、嫌な所なのです・・・


 担当職員もネチネチしていて、受刑者の間からサバとあだ名をされるくらい、嫌なオヤジでした。


 雑役という受刑者がいます。


 これは配属される各工場にも、必ず一人は居ます。


 工場受刑者の中から、業績や作業態度や、犯罪傾向などを見て、菅(刑務所側)が指定してきめるのですが、まぁいわゆる懲役囚のエリートです。


 娑婆で言えば、犯罪傾向も進んで居ない、イモ引きタイプが、菅から見たら、まだ更生が可能な者と見て、そう言った重要なポストに付けて、特別扱いするのです。


 少年刑務所のそれも考査工場の雑役といえば、十中八九生意気な勘違い野郎が多いとききます。


 この九州YA刑務所の考査工場雑役も、他聞に漏れず、生意気勘違い野郎でした。


 初めての刑務所に、皆、不安でどうしたら良いか解らないのに、上からの発言ばかり、挙句の果てには、担当オヤジと一緒に叱ってきたりもします。


 雑役とは、本来、新入の面倒を見てやり、刑務所の生活を教えてくれたりする役目なのです。


 工場の雑役は、工場の中から選ぶと言う決まりがあるから、考査工場の雑役も考査工場の中から選ぶのです。


 タイミングの問題で、たまたま考査雑役が出所するので、考査に居る受刑者の中から、今一番良さそうな奴を選ぶのです。


 初めて刑務所に入り、二週間で雑役に成るのだから、勘違いするのでしょう。


 それと衛生夫というのも、どこの工場にもいますが、この衛生夫の人は、洗濯したり、工場内を清掃したりと忙しく働いて居て、雑役ほどの権限がないが、良い人でした。


 この考査期間中に、刑務所の幹部連中からの講話と言うのがあります。


 処遇部長だの、会計課長だの、何かしら肩書の付いた職員からのお話しです。


 この講話中も、話しを聴く態度やら姿勢やらをチェックされていて、配役される工場のポイントになります。


 作業は、拘置所の確定房でやって居た、紙袋を作る内職みたいなものだが、各自テーブルが決って居て、姿勢から作業のやり方、全て監視されています。


 椅子に座る際も、両足のつま先を揃えて座らないと、注意を受けます。


 注意と言いましたが、ヤクザ顔負けの巻き舌で、頭ごなしで来られます。


 この注意一回で、配役ポイントは下がります。


 刑務所、特に少年刑務所に来たら、皆、目当ては仮釈放です。


 初犯刑務所で、それも少年刑務所なので、他の刑務所に比べて、仮釈放の確率が高いのです。


 持ち刑の三分の一なんて当たり前、そりゃ真面目にして早く出たいですからね、皆。


 炊事工場なんかに配役されると、二分一から三分一の間も仮釈が貰えると噂され、配役に成りたい工場ナンバー1でした。


 私も希望は炊事工場にしていました。


 炊事工場は重い物を扱うので、重い物は持てるかと聞かれたら、炊事工場配役は間違いないと噂も流れて居たのです。


 配役前面接の時に、希望する工場はどこかと聞かれた時には


「娑婆で飲食関係の仕事に携わっていたので炊事工場を希望します」


 と、嘘八百を並べ立て、アピールをしました。


「君は重い物を持てるかね」(キター)


「はい、重い物を持つのは大好きです」


 私の中では、サイコーのアピールをして、その手応えは充分感じました。


 明日は考査期間の終了、ネチネチのサバや生意気な雑役からもやっと解放される。


 その嬉しさと、今から始まる本当の受刑生活を思うと、朝まで寝られませんでした。



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