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刑務所ライフ  作者: ちゃんマー
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分類センター、地獄

二 分類センター、地獄


 分類センターとは、二六歳未満で初犯(初めて刑務所に入る人)の受刑者を集めて、二度と刑務所など来たくない、と思わせる場所だと聴かされました。


 鉄は熱いうちに打て、的な、犯罪傾向が浅い内にやり直せるよう、嫌な思いを詰め込んでおこうと言う、只々いじめ抜かれるところです。


 私が拘置所の確定房から移送されたのは、まさにその分類センターだったのです。


 大体二カ月から三カ月で刑務所へ移送されるのですが、始めに言っておきます、私はここに五カ月留め置かれました。


 分類センターは、管区にある、大きな刑務所に、備え付けられる形で存在しています。


 当時二〇歳の私は、九州にある分類センターに配属されました。


「おい、いいか今日から俺がお前の面倒をみる。 俺の言う事は絶対だからな、解ったのか、おう」


 また、ここでかましを入れられます。


「はい、解りました」


「声が小さい、もっと大きな声を出せ」


「はい、解りました」


「まだ小さ~ぃ」


「はい、解りました」


「まだぁ」


 と小一時間ほどの洗礼を浴び、部屋に案内されました。


「ここが今日から、お前が生活する豚小屋じゃ」(言いかた)


「お前ら面倒みてやれ、新入じゃ」


「入房」


「三六五番」(番号が変わっている)


「声が小さい」


「三六五番」


「まだ大きい声出せ」


 これも小一時間続きます。


 拘置所の確定房で、少しこなれた生活を送っていた私は、ここでまた心を折られてしまいました。


「運動~」


 舎房に入った瞬間に、オヤジの運動と言う声がかかり、すこしホッとしました。


 しかし、この運動時間が分類センターの名物と言っても過言ではないものでした。


 職員からのイジメです。


 よく見ると、皆の表情が暗いです。


 走る、腕立ては当たり前、日頃運動などして居ません。拘置所生活で、なまった身体に鞭打つ行為です。


 これがキツイキツイ、腕立て千回とか出来ます、フツー。


 倒れても終わりません。


 三〇分全力疾走出来ます、フツー。


 倒れても終わりません。


 最後には、運動場の水はけする為にある、排水溝の中での行進の練習でした。


 足がずるむけに成って、血が出ても終りません。職員の気分次第で終わります。


 若い頃部活などやったことの無い私は、途中で五回ほど倒れましたが、その度にオヤジが飛んできて、罵詈雑言を浴びせるのです。


 二度ほど死者が出たと言う話を後から聞かされ、そりゃそうだろうと思いました。


 運動が終わった瞬間から、次の運動のことが頭から離れません。


 分類センターの中では受刑者間のイジメはありませんでした。


 連帯感が出来てしまって居たのです。


 やはり人間は共通の敵が出来ると、連帯感が生まれるのでしょう。


 楽しみといえば、やはり食事ですが、その量も少なくて、育ち盛りの若者には堪えました。


 毎日腹を空かせていて、さんまを頭からかじり、喉から血を出していた奴も居ました。


 分類センターでは、八名の雑居房でした。


 日頃、地獄の運動時間以外は舎房の中で、紙袋を作る内職の様な作業をします。


 もちろん脇見厳禁、チラ見でもしようものなら、大変な事に成ります。


 中には意地の悪い職員もいて、わざと房のドアを“ドンッ”と叩くのです。


 状況反射で皆、音のした方向を向きます。そうしたら、いきなりドアが開いて


「お前ら全員出て来い、本来なら全員脇見で取調べのところだが、廊下で全員正座して黙想しろ、それで勘弁してやる」


 と、こう言うのです。


 明らかに嫌がらせです。


 そして私たちは三時間正座させられましたが、フツー出来ます?三時間の正座。


 皆、足がしびれてプルプルしながらも耐えていました。


 それからも、ちょくちょくドアを叩いて来ます、でも皆学習して居るから、ビクッとはしても、手元から眼を離しません。


 そうしたら、今度は視察窓からずっとこちらを監視してきます。


 まるでゲームです。


 何人かが我慢できずに、チラ見をしてしまいます。


 すると、連帯責任で全員、三時間の正座が始まります。


 明日は我が身なので、誰もそいつを責めません、連帯感です。


 毎日がその戦いです。


 作業が終了して夕食が終わると、就寝の九時までは、自由時間です。


 私本は、分類センター期間中は没収されて居るので、楽しみはラジオのみです。


 しかし、これがまた音のボリュームをわざと小さく設定しているので、聴こえるか聴こえないかの様な音量です。


 同収どうしの会話は良いのですが、ラジオの音量より声が大きいと、ラジオを消されます。


 話しをする時は、ヒソヒソ話ししか出来ません。


 中にはそれでも声が大きいと言ってラジオを消していく職員も居ます。


 薬などは決して舎房の中には所持出来ず、私は喘息の持病を持っているので、決まった時間に服用しないといけません。


 薬は職員が預かって居るので、時間が来たら、報知器を押して所定の場所で正座の体制で職員が来るのを待ちます。


 しかし、そんな時に限ってわざと来ないのです。


 いつまでも正座の体制で待って居なくてはいけないのです。


 私はいったい何をしているのだろうと、情けなく成り、涙が出そうになりました。


 実際、涙を流している若いヤクザ者も、何人も目撃しました。


 ここは地獄なのだなと思いました。


 地獄も地獄、監獄なのです。


 こんな辛い思いをして、真っ当な人間に成れる人間が何人居るのでしょうか?


 私は逆に真っ当に成れませんでした。


 フツー長くても三カ月でここを卒業して、各刑務所へ配属されるのですが、私はなぜかまた、半年近くも留め置かれました。


「お前みたいに長いのは初めてや」


 ここでまた、同じセリフを聴かされることに成りました。


 そんな私にもやっと、刑務所に移送される日がやって来ました。


 一日前に移送隔離となり、独居房に転房になり、荷物をまとめました。


 どこの刑務所へ行くかは、明日の移送日まで教えて貰えません。


 いったい何所へ送られるのだろうと、緊張のあまり、朝方まで眠られなかったのを覚えています。



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