表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
物語の黒幕に転生して~進化する魔剣とゲーム知識ですべてをねじ伏せる~(Web版)  作者: 俺2号/結城 涼
三章・守りたい存在たちと、摩天楼の戦い。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/288

何故か因縁の素材と再会して。

 村へ向かう途中でロイが言う。



「レン、村と森を隔てた橋を覚えてるか?」



 レンは馬に乗らず、ロイと歩きながら思いだす。

 いま話に出た橋と言うのは、シーフウルフェンに襲われたロイが逃げた先にあった吊り橋のことだろう。



「覚えてますよ。その橋がどうかしたんですか?」


「あの橋もつい最近になって補強したんだ。今日はその川上に向かってたんだが、急にリトルボアが大挙して現れてな」


「街道整備で興奮してですよね」


「んにゃ。さっきは言いそびれたが、恐らくそれだけじゃない」


「へ? どういうことです?」



 話を聞くレンは、ロイの顔を見ながら疑問を呈した。



「よくわからないんだが、最近、川の上流からリトルボアたちが逃げ出してきててな。村に来た大工たちが言うには、どうにも街道整備のせいだけとも思えないらしい」


「……まさか、また強い魔物がやってきたとかですか?」


「うーん……それはないと思うぜ。それにしては周りに被害が出たなんて聞いたことがないしな」



 レンはロイが話すことを疑っていなかったが、それでも念のため、自分が様子を見に行くべきだと考えた。

 現状、自分が一番戦えると知っていたからこそである。

 それを考えてすぐ、レンはイオの背に乗った。



「お、おい! レン!?」


「すみません。俺が少し様子を見てきますから」


「待て待て待てッ! 後で俺たちが見てくるからいいって! 帰って早々に働かなくていいんだぞ!?」


「そう言われましても、気になるので!」


 クラウゼルから同行して来た騎士たちは、自分たちも共に行くと言った。

 だがレンは、万が一を危惧して村の警備にあたってくれと告げる。

 騎士たちにとってはレンも護衛対象だったのだが、彼らはレンの言葉に宿った圧に押され、頷いてしまった。



「少し様子を見てきます! 危なくなったらすぐに帰りますから!」


「お――――おいッ! レン!」



 レンはロイが制止する声に耳を傾けることなく、イオの手綱を引いて森を駆けた。

 ロイが口にした川の上流に、レンは足を運んだことがない。だが、すぐに見つけた川沿いの獣道を駆け、その上流を目指した。



 ツルギ岩の近くを抜け、森の深い場所へ向かっていく。

 イオが一歩駆けるだけで、辺りの木々がその風に揺らいだ。



 川の上流に到着したレンが目の当たりにしたのは、大きな滝つぼだった。

 この辺りに魔物の気配はない。シーフウルフェンのときのように、食い散らかされた魔物の骨が散乱していることもなかった。

 辺りに響く清流の音が聞こえるだけで、風光明媚な景色が広がるのみだ。



「何にもないなー……」



 イオから降りて、念には念をと辺りを見渡す。

 だが、やはり何もない。リトルボアが川上から村に向かっていたのは、気のせいだったのかもしれない。



 そう結論付けかけたところで、レンは身体を強張らせた。

 彼は鉄の魔剣を構えると、眉をひそめて滝つぼに目を向ける。



(――――)



 何か、居る。それも、強大な何かが。

 彼はゆっくり、息をひそめるように滝つぼへ近づいた。

 すると、



「ん?」



 水の中に魔物が居るのかと思っていたのに、代わりに美しい輝きを放つ何かが沈んでいるのがわかった。

 レンは木の魔剣を召喚し、自然魔法を用いて木の根の道を水上に作り出す。

 滝つぼへ近づき、美しい輝きの正体を視認した。



「……星瑪瑙(ほしめのう)?」



 見紛うはずもない。

 冬にバルドル山脈で見て間もないあの宝石の煌めきが、確かに水の底にあったのだ。レンはいままでの緊張がすっと消えた感覚に、思わず「なんでさ」と乾いた笑みを浮かべた。



 とりあえず、水の上に引き上げてしまおう。

 レンは滝つぼの底に向けて木の魔剣を振り、ツタを生み出し星瑪瑙に巻き付けた。束ねたツタを両腕で掴み、引き上げにかかった。



 けれど妙に重い。

 想定していたより遥かに重かったため、レンは両腕に更に膂力を込め、足腰にも力を入れる。

 星瑪瑙は少しずつ……少しずつ水面に近づいて、最後には――――



「って……えええぇ――――ッ!?」



 ずるずる、と引きずられるように滝つぼから姿を見せた星瑪瑙は、レンが視認していた以上の大きさを誇った。

 恐らく、星瑪瑙の大部分が滝つぼに埋まっていたのだ。

 その星瑪瑙を、レンはツタで縛ったまま陸地に引き上げたように見える。



「……でっか」



 目の当たりにした大きさは、馬が四頭も並んだくらい。

 その形はところどころ砕けていたが、おおよそは細長く、そして捻じれて先端が鋭い形をしていた。

 形はどうあれ、これほど巨大な星瑪瑙は、どれほどの値を付けるのだろう。



「ヒヒンッ!」



 陸地で待っていたイオも驚き、レンの横で嘶いた。



「ああ、でかいな。でもどうして星瑪瑙が村の近くに……これはバルドル山脈みたいに、特別な環境じゃないとできないはずなんだけど――――」



 疑問を抱いたレンが首をひねり、腕を組みながら星瑪瑙を見下ろす。

 村のためを思うと金があって悪いことはないのだが、それでも気になってしょうがない。



「…………」



 星瑪瑙を眺めていたレンの目が、鋭い先端の反対に向いた。

 そこは他の部位と違って損傷具合が激しく、鋭利な何かに切り裂かれたような断面も見受けられたのだが、



『――――、――――!』



 レンの脳裏に蘇った龍の声。

 まさか、と思いながら星瑪瑙の断面に近づくと、鮮明に思いだした。

 獄炎に囲まれながら、鉄の魔剣をこの角(、、、)に投擲したことを。角の根元から、砕くように断ち切ったことを。



 レンがそれを思い返した刹那、星瑪瑙に一筋の亀裂が奔った。

 繭から誕生するかのように、角を覆っていた星瑪瑙が砕けていく。



「……なんで?」



 きょとんと情けない声を漏らしたレンは、その場にしゃがみ込む。



 また、理解した。

 こんなものが滝つぼにあったら、そりゃリトルボアも恐れを抱いて逃げるだろう……当たり前のことなのだと。



「……で、どうしてバルドル山脈からここまで流れて来てたのさ。どっかで繋がってる川でもあったとか? ……にしても意味がわかんないけど」



 レンはしばらくの間、しゃがみ込んだまま熟思に耽った。

 目の前にあるアスヴァルの角(、、、、、、、)を眺め、頭を悩ませたのである。




 ◇ ◇ ◇ ◇




 悩ませた結果、レンは一度騎士を呼ぶために村の近くの森へ向かった。

 見つけた角を村に運ぶわけにもいかなかったため、騎士と協力してどうにかこの角を確保し、クラウゼルに運ぶためである。



 騎士たちはレンの頼み通り、村の周囲を警戒するために森の中に居た。

 そのため、話はとんとん拍子に進んだ。



「な、何と立派な星瑪瑙でしょう……ッ」


「だが、これはなんだ? 風化した魔物の素材か何かに張り付いてるのか?」



 川の上流に足を運んだ騎士たちが驚く声。

 その声に耳を傾けた後に、レンは彼らに提案する。



「モノがモノなのと、ちょっと事情があってレザード様に話をしなければならないので、これをクラウゼルに運びたいんです」


「かしこまりました。……ですが、これほどの大きさだと……」


「……どうにかするしかありませんな。幸い、いまは街道や外壁の整備中です。必要な資材を運ぶ荷馬車は通常のものより大きいですから、二台も連結させればこれも載せられましょう」


「それでも、はみ出てしまうでしょうな。しかしこればかりは、無茶になろうが時間が掛かろうが、必ずクラウゼルに運ばなくては」


「ええ。連結した荷馬車に載せて、布で厳重に覆い隠すのです」



 どうにかなりそうだと思いつつ、レンは一度、アスヴァルの角を自分の力で途中まで運ぶつもりだったことを思い出す。

 以前までのレンなら至難を極めたろうが、魔剣召喚術のレベルが上がり、身体能力UP(中)の恩恵を得たことで話が変わる。その恩恵は身体能力UP(小)の頃以上の効果を誇っていた。



(いずれにせよ、こっちで秘密裏に済ませた方がいいし)



 結論は、それに落ち着いた。

 この後は二台の荷馬車がどうにか川の上流まで運ばれて、皆が協力してそれを連結させた。



 レンは最後までその作業に付き合った。

 もちろん、砕けた星瑪瑙も同じく確保してある。それと角を連結した荷馬車に載せたところで、彼はようやく安堵の息を漏らした。



 次に村の近くまで、皆で協力して荷馬車を運んでから――――



「レン殿、後のことは我らにお任せください。是非、ゆっくりと里帰りをお楽しみくださいませ」


「はい! それじゃ、後のことはお願いしますッ!」



 レンは一人、イオの背に乗り駆けだした。



 すぐに村と森をつなぐ吊り橋にたどり着き、以前と違う様子に頬が緩む。

 村へつづく道は街道と同じように整備されつつあって、更に村一帯を外敵から守る石の壁も建設途中。

 それから風を切るように道を駆け抜けて、以前と違う村の様子に喜びと感動を覚える。



(……すごい!)



 村の中央に敷設された道は石畳が敷き詰められており、雨の日は泥道と化していた

畑道はもうそこにない。奥の小高い丘に鎮座した目新しい屋敷へ向かう、堂々たる道だった。



 また、古びた家々もほとんどが立て直されている。

 一年前の襲撃を経て、レンの故郷は目覚ましい復興を遂げていたのだ。



「ぼ、坊ちゃんかい!?」


「大きく立派になって…! おかえり!」


「やぁやぁ! 大きな馬に乗って……良く似合ってるじゃないかっ!」



 イオに乗って道を駆けるレンを見て、畑で作業に勤しんでいた村人たちが声を掛けた。

 レンは彼らに笑みを浮かべて答えながら、更にその道を駆け抜けた。



 やがて、以前と同じ場所に立つ屋敷の門が見えてきた。

 前までのボロボロで、いつ崩れてもおかしくないような木製の門はすでになく、石造りの門に代わっていた。

 その門の外には両親が立ち、レンのことを待っていた。



「っ――――レン!」



 一足先に再会を果たしていたロイに先んじて、ミレイユが門の傍を離れた。

 彼女はレンが門の傍でイオから降りたその瞬間、我慢ならずレンのことを抱き寄せた。



「母さん! ただいま帰りました!」


「……ええ! おかえりなさい!」



 久方ぶりの再会に、ミレイユはつい涙を零す。

 そこへロイも足を運び、三人は久方ぶりの再会を喜んだ。



 ――――再会を喜んだ三人の抱擁が終わったのは、たっぷり数分が過ぎてからだ。

 ミレイユは目元の涙を拭い、レンに「さぁ、中へ入りましょう」と言って歩きだす。



 屋敷の敷地内には、以前はなかった厩舎があった。

 先にイオをそこへ連れて行った方が良いと思ったレンは、その旨をミレイユに告げた。



「わかったわ。それにしても、この子は立派な身体つきをした馬ね」


「……り、立派ですよね……ええ……」


「あら、どうしたの? 急にそっぽを向いちゃって」



 レンは複雑な感情に苛まれていた。

 何故なら、イオがこの村を襲った犯人の馬だったからだ。

 どう説明したものかと彼が悩んでいると、



「しっかし、良い馬を奪えたもんだな(、、、、、、、)



 と、レンを驚かせる言葉を口にしたのだ。



「父さん? 奪えたって言いましたよね?」


「おう。こいつはうちの屋敷を襲った魔獣使い(ビーストテイマー)の馬だったんだろ? だったら奪ったってところだしな」


「ど、どうしてそれを知ってるんですか!?」


「そりゃ、前からこの村に来てる騎士から聞いたからだ。レンは自分の口から言い辛そうだし、ってわけで騎士が気遣ってくれててな」



 道理でと頷いたレンは、ロイとミレイユの顔色を窺った。

 二人には別にイオを気にした様子はない。ミレイユに至っては、じゃれつくイオの鬣を撫でていた。



「馬に罪はないわ。レンも気にしなくていいのよ」



 とのこと。

 ロイも同じ言葉を口にして、彼はレンの頭をやや雑に撫でまわした。

 その懐かしい感覚に、レンは「よかったです」と緊張をほぐした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
>>>7巻の予約が開始しております! 書籍版もどうぞよろしくお願いいたします!<<<
k9t0jgcm7u679lcddexxirle65p1_15qj_m8_vl_inir
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ