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物語の黒幕に転生して~進化する魔剣とゲーム知識ですべてをねじ伏せる~(Web版)  作者: 俺2号/結城 涼
二章・クラウゼルでの日々

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夜になってからの話。

 レンとフィオナの会話に割って入った受験生には、とある心配事があった。



 それは、この最終試験の結果だ。

 彼ら受験生にとっては将来がかかっていると言っても過言ではない。

 なのにこの砦へ避難することになったこと、それと救助に訪れた冒険者やクラウゼル家の騎士に手助けされることに、強い不安感を抱いている者が多々いたそう。



(ルール違反なんだっけ)



 夕方過ぎ、その話を聞いたレンは砦の一角で密かに思った。

 彼は外で焼いた肉で少し早めの夕食をとりながら、そばに座った騎士からつづきを聞く。



「受験生たちは自分たちの力だけで価値を示さねばなりませんからね。しかし、私としては違和感を覚えてなりません」



 かといって、命の方が大事だろうに。

 レンはそう思いながら首をひねった。



「違和感?」


「はい。確か例の特待クラスの試験に使われる場所は、その地の領主へと連絡が届きます。その際は第三者が介入できぬよう、当該地域が封鎖されますので」



 しかし、現状されている様子はない。それどころか、試験が開始される前から冒険者が居たくらいだ。この時点で異変と言えよう。



「事故の可能性はゼロに等しいでしょう」


「確かに怪しさ満点の状況ですけど、どうして言い切れるんですか?」


「此度の試験はそれほどの管理体制だからです。そのため、第三者が何らかの仕掛けをした可能性の方が有り得るかと」


「あれ? 事故が有り得ないほどの管理体制で、第三者の介入は考えられるというのは……?」


「派閥を問わず、強権を持つ貴族はいくらでもおりますからね」



 騎士が何とも言えない苦笑いを見せた。

 すると、別の騎士が言う。



「あるいは皇族ってところか?」


「ははっ! イグナート侯爵家の令嬢がいるのにか? 何のために?」


「さすがに皇族の関与は馬鹿げてるな。かと言って、英雄派が手を出してるとも思えんが。イグナート侯爵に喧嘩を売るとは考えにくい。我らクラウゼルを嵌めたかったとしても、その代償が大きすぎるからそうとも思えない」



 一瞬、会話の不穏さにレンが笑みを繕った。

 せっかくイグナート侯爵の闇落ちを止めたというのに、ここで面倒ごとは絶対に避けたかった。

 


「あの学院長がレオメルを離れたというし、事故っていうのも有り得なくもないかもな。どこかでその隙を突いてってのはわからないでもない」



 レンはクロノアがレオメルを離れた話は初耳だったが、どうせ関わることのない人物だと思い聞き流した。

 いまはこの状況にだけ意識を向けていたかった。



「いずれにせよ、我らが護衛することは変わりませんよ」



 と、受験生の不安を説明していた騎士が言った。



「事情はどうあれ、ここで受験生たちを無視することはできません。それこそご当主様に迷惑をかけてしまいますから、助力を拒む受験生がいても、強制的に下山させるべきと判断します」



 皆が頷く。

 特に今回はフィオナ・イグナートも居るとあって、可能な限り慎重にことをすすめなければいけない。

 皆が緊張と使命感に頬を引き締めるも、一人の騎士がレンに苦笑いを向けた。



「それにしても驚きましたな、レン殿」


「イグナート嬢のことですか?」


「はい」


「お、私も驚きましたよ」


「私もです。まさかこのような場で、命を救ったお相手と出会うとは思いもしなかったことでしょう」



 すべて同意せざるを得ず、レンも苦笑いを浮かべながら肉を頬張る。



「女性冒険者に絡まれたところも見られましたが、これについて皆さんはどう思いますか?」


「……レン殿、こちらの肉もおいしいですよ」


「私のおススメはこちらですので、是非、ご賞味あれ」



 明言せずとも慰められ、レンの心にほろりと涙が流れた。

 レンが女性を侍らせていたと勘違いされることはなかったけど、あのおかげで、タイミングを逃したことがある。



「自己紹介すべきと思ってたんですが、あれのせいで機会を逸しました」


「下山してからでもよいかもしれませんね。お二人とも、その方が落ち着いて言葉を交わせるかと」


「やっぱり、そう思いますか?」


「はい。幸いイグナート嬢は、レン殿を冒険者と勘違いしているようです。冒険者たちの不遜な態度は目に余りましたが、その影響で、レン殿に名を尋ねてくることもないでしょう」


「あー……冒険者と受験生の間に壁が生じてますしね」



 その影響で明日からも基本的には無関係でいられるだろう。

 レンはつづけて、騎士たちにはレンの名と英雄の呼称を避けるよう頼んだ。この状況下でフィオナを驚かせるのは本意ではない。



 余計な混乱を招きかねないなら、いまは自己紹介を避けるべきだろう。

 せめて、下山し終えてからの方がいい。

 ついでに言えば、レンもレンで心の準備ができていないのもある。



「ただ、我らがレン殿の名を尋ねられた際には、私共は黙っていられませんが」



 もっとも、その可能性は限りなく低いと思われるが。



 やがて、彼らは食事を終える。

 話はその後片付けをしながらもつづけられた。



「さて、レン殿」



 一人の騎士が今後の予定を共有する。



「先ほど冒険者と相談したのですが、我らは明朝より、この砦に居る者たちの下山を支援する予定です。もちろん、受験生たちも一緒にです」



 だが、人数が多い。

 身動きが取れない者の数が多いため、一度に全員を避難させることはできないそうだ。

 だから皆を下山させるのに、二度の往復を要する予定である。



「なので、レン殿も明朝すぐに下山していただきます」


「……いいんですか?」


「実のところ、あまりよろしくはありません。レン殿のお力は我らにとって重要に違いありませんから」


「ですが、レン殿に万が一があってはなりませんからね」


「と、いうことです。もしレン殿が怪我をすることでもあれば、クラウゼルで待つお嬢様が悲しまれますので」



 最後に言った騎士は半ば冗談のように言っていた。

 一方でレンからしてみれば、リシアを悲しませることもあると思ったけど、同時に怒られる可能性もあると思った。




 ◇ ◇ ◇ ◇




 ――――しかし、騎士の考え通りには進まなかった。

 夜になってからのことだが、騎士は明朝の予定をレンに告げた内容そのままに、受験生を代表してフィオナに伝えた。



 当然、フィオナはその立場もあって最初に下山してもらうということも忘れずに添える。

 だがそれが、難しいという結論に至ったのだ。

 夜、砦の一室で身体を休めていたレンの下を訪れた騎士が言う。



「冒険者たちの中に、症状が重い者が数人いるそうです」



 彼らの体調は数日もすれば落ち着く見込みだが、それまでは無理に動かさない方が無難である状況だった。

 外の極寒に連れ出すには勧められない。

 下手をすれば、命を落としてもおかしくないらしく、



イグナート嬢のスキル(、、、、、、、、、、)を用いて看病しているそうなのです。そのため、イグナート嬢が最初に下山することはできないそうで……」


「……重症の方たちを先に連れて、イグナート嬢も同行ってのは難しそうですね」


「はい。やはり、冒険者の体調を鑑みればよろしくないようです」



 レンもこれには苦笑いだ。 

 ついでに、自分も砦に残るべきだという結論に至る。



「俺も残ります。自分はそれなりの戦力になりそうですから、イグナート嬢を守る方が色々と安全そうですしね」



 色々と言うのは、主に貴族の面倒くささについて。

 相手があのイグナート侯爵の娘なら、傍に居て護衛した方が絶対にいいはずだ。



「申し訳ありません。騎士を多めに残しておきますので」


「それで避難の方は大丈夫ですか?」


「ご心配なく。下山次第、下に残してきた騎士もこちらへ連れて参りますよ」



 そうと決まれば安心だ。

 実はフィオナに限らず、遭難した受験生の中には国内外の貴族に連なる少年少女も多いため、フィオナ以外の者も丁重に扱う必要がある。



 それを鑑みれば、レンは自分が来て本当に良かったと思った。

 クラウゼル家の騎士たちだって、同じ気持ちである。



「食料も枯渇気味みたいですし、軽く狩りをしながら待ってます」



 日中は魔物を討伐したけど、その多くが食べるのに適していなかったからだ。

 念には念をということで、明日は時間を無駄にしないよう魔物を狩ることにした。



「……本当に申し訳ありません」


「いえいえ、これは俺にとっても大事なので、是非協力させてください」



 というよりかは、絶対に砦に残らせてほしいくらいだ。

 この春に派閥争いに巻き込まれたばかりのレンにとって、今回の問題はそれに準じた危機感と面倒くささがある。



 むしろ、自分の目につく場所で起こってくれたことに感謝していた。

 自分が生きる場所を守るためにも、全力を尽くすことができるからだ。




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