92.覚悟を…
まとまらなかった…5,000字以内と言っていたのに
許してください、ごめんなさい
m(_ _;)m
どうしても削れなかったの
***アリシア***
ナナちゃんが目覚めなくて苦しい、1日でも早く目覚めて欲しいと願い手を握りその時を待つ
「苦しいよぉ……ナナちゃん………」
涙を何度止めようと頑張っても溢れる
私達の場所はすでに変わって、領都の外にある2家族の家の私とナナちゃんの部屋です、いつの間にか追加されたベッドに寝かされてもまだ目覚めないナナちゃん。ナナちゃんの家族は、そのうち目覚めると言ってくださいましたが、私は起きた姿をこの目で見ないと安心なんてとても出来ません
「いつ……目覚めるのですか?ナナちゃん…」
不安で不安で不安で……心が苦しい
怖くて怖くて怖くて……心が恐怖に怯える
苦しくて苦しくて苦しくて……心が張り裂けそう
「こんなっ…こんなことに……なるなら……心なんて………心なんてっ!欲しくなかっ」
言い切る前に手を掴まれた
「っ!?」
「ダ…メ……ダメだよ、アリちゃん!」
未だ身体に残る魔毒の痛みに苦悶の顔を浮かべるナナちゃんが私の腕を掴んでいた
「ナナ………ちゃん?」
「アリちゃん!逃げちゃダメ!」
逃げる?
「はっ!ぐぅう……ああもうっ!いったいな!」
私の腕を掴んでいない方の手で自分の胸を鷲掴み魔毒の痛みに耐えながら上体を起こしナナちゃんは私を真っ直ぐ見る
「アリちゃん!」
「…はい」
「さっき言おうとした言葉は、本気!?」
「……はい、だって肝心なときに邪魔になってナナちゃんが、ナナちゃんが」
私は俯き、涙が地面に溢れ落ちる
「ふっっっざけんなっ!」
「っ!?」
ナナちゃんの怒声に驚き顔を上げる。本気で怒った表情のナナちゃんは初めて見ます。親しい人の怒った顔はとても怖いです
「アリちゃん、たかが私が怪我を負ったごときで、せっかく手に入れた心を捨てるっての!?」
「た、たかがだなんてっ!そんなことはありません!私にとってナナちゃんはかけがえのない人なのですよ!何よりも大切で、何をおいても守るべき存在なんです!」
あなたを失ったら生きていけない
重症を負ったナナちゃんを見たとき、今までに味わったことのない…自身の死よりも恐ろしいものを感じました。確実にそれは、喪失という感情なのだと胸にぽっかりと穴が開いたように胸の内が冷たくなった。ですが、それは前回感じた寂しさなんか比ではなく、意識を手放しそうになるほどの悲しさを感じました
「守るって、そりゃ私はまだ弱いけど…」
「ナナちゃんがっ……ナナちゃんが死んでしまうのではないか、そんな状況にも関わらず、私は動けなかったんですよ!」
そんな自分がとても嫌になりました。私が持っている知識で応急処置をしてすぐさまその場所から離れなければいけなかったりか負傷者が出たことも伝えたりやることがあったのに………
「私は傷ついて倒れているナナちゃんがっ、目の前にいたにも関わらず、呆然としていたのですよっ!」
あってはいけない……大切な人が傷つき倒れていた。それなのに何もせずにただただ呆然と見ているだけ
「必要なこと、やらなければいけないことが……たくさんあったのに、なにもせずに呆然と…」
「…アリちゃん、それはー」
「仕方が無いなんて言わないでください!」
「ーっ!?」
ナナちゃんが言おうとすることは分かる。子供だし大切な人が傷つけば仕方が無い、勿論動ける人もいるけど大事な人が傷つけば仕方が無い、そういうのでしょう。
ですが私は前世持ち、しかも前世のザハレグスは戦いを経験した。戦場を経験した。人が傷つくのを経験した。妻たちが仲間達が傷つくのを経験していた…………経験してきた。それなのに!
手当がっ、応急処置がっ、どれだけ大切なのか知っているっ!私は知っているのにっ!
「あの場でもし、ピリスさんが来てくれなければ私はナナちゃんを見殺しにしていたのですよ!?
何よりも大切で大事で大好きで愛しているあなたをっ!みすみす見殺しにするという、取り返しのつかないことをしてしまいそうだったのですよっ!」
誰が許そうとも私がっ、私自身が許せませんっ!
「んっ……ちっ…はぁはぁ……でも、私はこうして生きてるよ?魔毒も耐え………っ……てみせるよ?」
「耐えれてません。何度貴方の心臓が止まったこと思っているんですかっ!」
「いいや、耐えて見せる」
「耐えれてませんよ…」
「いいや、私はまだ生きている。そして何度心臓が止まろうとも息も止まっても、アリちゃんが繋ぎ止めてくれた…そうでしょ?」
「そう……ですけど……」
「アリちゃんが繋ぎ止めてくれる。だから諦めない、私は何度止まってもまた心臓を動かし呼吸もするんだ…生きたいから」
そうではありますが、いつお亡くなりになっても不思議ではありませんでした。
でもそれは、ピリスさん達が協力して安全で処置ができる場所まで運んでくれたから、だからです…
「ええ、でもピリスさんのおかげでです…私はできることがあったのに…」
「ん……はぁ……じゃあさ、今回のことはおあいこってことでいいかな?」
何を…言っているのですか?
「お互い様って事でさ」
「ナナちゃんは何を言っているのですか?」
アリシアが訳が分からないそんな顔をしていたからか、ナルシェナは痛みを堪え優しい笑みを精一杯浮かべ話し出す
「できることがあったのにしなかったアリちゃんとね、ソードウルフの時、私が動かなければアリちゃんが傷つかなかったかもしれない私の、そんなお互いがやってしまった事で相殺……ね?」
「ナナちゃん………」
「分かった?分かったならもう言わないでね。心を捨てるなんて」
「しかし…」
相殺?許される?確かに…同じように庇った結果で言えば確かに前回は私がそして今回はナナちゃんが怪我をした。治療したのは他の人、同じといえば同じなのかもしれない……
でも、それでも!
「もうっ!アリちゃん!」
『ゴチン!』
グイッと急に引っ張られてオデコとオデコをぶつけるナナちゃん
「〜〜っ、考えすぎるのはアリちゃんの悪い癖だよ!考える事自体は悪い事じゃないけどさ、いつもアリちゃんは過ぎるんだよ」
過ぎる?
「前も言ったし前の前も言った。違う言葉だけどさ!…ぐぅ……はぁはぁ……んっ!ぜんっぜん伝わてないよね?」
怒っているのか睨みつけるように私を真っ直ぐ見る。私は何故かそんなナナちゃんの目を見れなくて目をそ
「そらすなっ!」
「っ!」
なぜ私は、ナナちゃんの目を真っ直ぐ見れないの?
なぜ私は、ナナちゃんの目を怖がるの?
「私の目を見て…アリちゃん」
もしかして私はナナちゃんに何か後ろめたいことがあるのでしょうか?
「私は何度でも言うよ?何度でも伝えるよ、アリちゃんは子供なんだよ私と同じ8歳の女の子なんだ」
いえ、私はー
「ちょっと前世の記憶を持っているっていう変わった子、だけど…その前世さんは心がなかったみたいでさ、アリシアという子になって、心を感じれるようになった。
色んな事を見て、聞いて、感じることに敏感に反応してさぁ、前世さんの知識を当てはめたり比べたりして、誰もが当たり前に感じる事にも、心が動けばふわりと笑うんだ、本人が気がつてないときもあるんだよ?」
「………」
「昔なんか風が吹いて、その風が持ってきた季節の匂いなんかで笑ってたんだよ?私が転んで膝を擦りむいて血が出ただけで泣きそうなほど悲しそうにしてたりもした。真面目に仕事しない男子に一緒に愚痴をこぼしたりして、他にも一緒に汗かいて苦労して今日は大変だったね、なんてさ同じ気持ちになって笑ったりもした」
「そう…ですね」
思い出を懐かしむように語るナナちゃん。確かに生まれ変わったばかりは心を初めての得て死ぬ直前に感じた悲しみを埋めるように、一つ一つを大切な宝物のように感じていました
「確かに…そんなことがありましたね」
「泥団子からは私は守ってもらってばかりだったね」
「はい」
「そうやってさ、心を感じてどうだった?」
それは勿論…
「嬉しかったですよ、心が動くことが他愛もない言葉のやり取り1つで一喜一憂する感情が嬉しかったですし、ナナちゃんとの過ごした時間はかけがえのない時間でした」
同じ心境になったときは心を感じていることが実感出来ましたし、ちゃんと心があるんだと胸が暖かくなり嬉しさや幸せを知りました
「そうなの?私と過ごしてきた時間は幸せだったの?」
嬉しそうに笑うナナちゃん
「はい」
私は素直に頷く
「私と共婚約者の誓いの言葉を交わした時は?」
「嬉しかったです」
自分が誰かと共婚者になることも、まだ若いのに誓いを交わすとも思わなかった驚きの感情
「キスは?」
「最初のキスは嫌ではなかったという感想ですが、ナナちゃんを好きになってからは胸がすごくドキドキして、心臓とは違う場所が暖かくなり幸せを感じました」
思いは変わる。同じ行動でも感情が変化し強くなる事も弱くなる事も有るんだと不思議な事を学びました
「そっか……でもそれを捨てようとしているんだよね?」
「……はい、ナナちゃんをまた同じような目に合わせてしまう、その可能性があるなら私は」
「逃げないでよ、アリちゃん」
逃げる………ですか?
「そんな…可能性だけで、捨てて逃げないでよ……向き合おうよ、アリちゃん」
「……向き合う?」
何に?
「そうだよ、例えばさ体を強くするためにトレーニングして辛い思いするようにさ、心も一緒なんだよ」
「いっ…しょ?」
「そう、楽しさや辛いこと、嬉しいことや悲しいこと、それらをたくさん経験して、私達子供は大人になっていくんだと思うよ?」
「経験」
「トレーニングやめたらそこまでだよね?辛くても続けるだから強くなる。だからさアリちゃん」
それは……
「体と心はちー」
「屁理屈や言い訳並べて逃げんなっ!」
「っ!?」
「ああああもうっ!
私はさ!アリちゃんほど賢くないし!アリちゃんみたいに人生2度目ってわけじゃない!ただの子供だから、いい言葉なんか思い浮かびもしないし!口からでまかせでなんとかして、説得しないとなんて思いながらテキトウに喋ってるだけだけどさっ!」
ナナちゃんの顔がぐしゃっと歪み目から涙が流れる
「どんなアリちゃんでも好きになる自信はある!だけど……だけどさぁ」
ギュッと私の腕を握っているナナちゃんの手に力が入る
「アリちゃんが後悔するって、絶対に後悔するって思う事は、私は私の全てを懸けてでも止めるよ!」
「ナナちゃん……」
「昔一緒にいろんな経験をした時、私はアリちゃんが大人びていて、なんでも知っててすごいって思ってた。そんなアリちゃんがソードウルフの時に大声で泣いたあの時、アリちゃんも子供なんだって知った。だから私はこのままじゃいけないって…強くなろうって決めたんだ」
「そう……だったんですか」
「うん、どれだけ無様を晒そうとも、どれだけ醜態を見せようとも、たとえどれだけ時間が掛かるかかろうとも、一生追いつけなかったとしても私は……私は強くなるのを諦めずに努力していくと決めているんだ!」
ナナちゃんの目から涙が流れる
「………」
「だから……だから、アリちゃんも……アリちゃんもぉ、一緒に頑張ろうよぉ…お願いだからねぇ、アリちゃん…ううう………うわああああああん」
ナナちゃんが泣き出した
「グスン、どう言えば伝わるの?どうすればいいの?グスングスン………どうずれば…アリちゃんに………」
私は本当に子供なんですね。子供のナナちゃんをここまで追い詰めてしまった。少し前の心を捨てようとした自分の愚かさが恥ずかしいです
……前世があっても心が無かったなら子供のままで、成長はしていなかったのですね、大人になるって難しい
心は傷つかないにこしたことはありませんが、それでも実際は、ちょっとしたことで傷ついていて癒して成長する。
それを繰り返し学んでいく、大きく傷付いた時は落ち込み泣いて癒やすのにかなり時間がかかりますが、やがて立ち上がれるようになる。
都合のいいように、喜びや楽しさ幸せだけでは駄目なんですね……同じ悲しみを、苦しみを味わうことの無いように学び繰り返さないように生きる
ナナちゃんの言うように肉体も一緒です痛みを知るから、傷を受けないように学ぶ、怪我をして傷つきこれでは駄目なんだと努力する
後悔の無いように努力する
うん、私は甘えていたんだザハレグスの時に受けた傷を癒やしていたんだ。心地よい居場所で、心地よい家族の側で、心地よい…友の側で甘えて癒やしていたんだきっと
じゃあ、もう立ち上がらなくちゃ
「ありがとうございます。そしてごめんなさいナナちゃん………私もナナちゃんみたいに。いえ、ナナちゃんの前でだけ、どれだけ無様に醜態を晒そうとも。もう、心の痛み苦しみ悲しみ等から逃げません。どんなに辛くても、受け止めると約束します」
「アリちゃん……」
そうだ…………思い出せザハレグスの最後の時を私はどう思った『結局、知ることは出来なかったか』そう思ったのだろう?
心を望んだのも私だ
心を欲したのは私だ
心を願ったのも私だ
望んで欲して願った…それは紛うことなき私の願望
他ならぬ私が望んで手に入れた奇跡を私は自分で捨てるところだった
…………それはなんと愚かなことか、自分が欲しておきながら嫌なことがあって捨てようとするとは、馬鹿げている
何か自分がもう、一度たりも逃げないようにする方法は無いのだろうか?
私はまだ弱く幼い、だからもう同じことを考えないとは思えない…自分が逃げないように何か……………あっ!
何か、誓いや誓約を交わせる何かがないかと記憶を探りつつ部屋を見渡すと丁寧に布の上に置かれている腕輪があった
「ナナちゃん……少し手を離していただけますか」
「うん…」
私は共婚者の腕輪を取り、ナナちゃんの側に戻るとナナちゃんに私が着ける腕輪を渡す
「ナナちゃん、私はもう逃げないと共婚者の腕輪に誓いを立てたいです」
「ん!」
ナナちゃんも納得してくれたようなので私は宣言する
「私…ナルシェナの共婚者のアリシアは、二度とどれだけつらい現実を目にしようとも地獄のような苦しみを感じようとも、その心から決して目を逸らす事をせず受け止めると二度と逃げない事を共婚者の腕輪に誓う」
私は腕輪にキスを落としナナちゃんの腕に付けると今度はナナちゃんが宣言する
「私、アリシアの共婚者のナルシェナは、どれだけ道のりが遠くとも決して弛まぬ努力を重ね、今後は弱音を吐くことなく体を鍛え続け技術を磨き強くなることを共婚者の腕輪に誓う」
ナナちゃんも腕輪にキスをして私の腕に付ける
「ナナちゃん……本当にありがとうございます」
私は再び涙を流す。でもこの涙は嬉しくて出た涙だ本当にナナちゃんには感謝しかない
伝えたい言葉が上手く言えないどれだけ考えても悔しくてもありがとうそれ以外の言葉は今の私には存在しない、私の心はその思いでいっぱいだったからだからせめて少しでも私の今の気持ちが伝わるようにもう1度言おう
「本当に本当にありがとう…ナナちゃん」
「うん!」
本当に……本当にナナちゃんが共婚者で良かった
私はギュッとナナちゃんを抱きしめたのだった
次話で8歳編が終わります。
でわでわ、また来週投稿しますね




