69.まさかの追撃
「………」
ヴェルーナとエレニカが来る。
私は、ちゃんと冷静に話せるだろうか?
「大丈夫だよ、私がついてる」
ナナちゃんが手を握ってくれます。いつもありがとうございます
「ヴェルーナ…エレニカ…」
「ザレ大丈夫か!?」
今は子供の私に、目線を合わせるため膝を付くヴェルーナ
「魔物と遭遇しませんでしたか?」
エレニカもヴェルーナと同じ様に私に目線を合わせた
「ザハレグス様、手を怪我しております。今すぐ治しますね」
え?ああ、木に叩きつけていた方の手ですね確かに手加減なくやっていたため…って、うわ結構血が出ています
「儀式前なので魔力膜が無いせいですか…」
「そのようですね……『癒やしの光』」
「…………癒やしの光?」
それって属性が神聖の上級回復魔法でしたよね?
「ザハレグス様、治りました♪」
「ちょっとした怪我ですよ?」
「それでもです!」
「がう、必要!」
「あっ、ありがとうございます」
え………そんなバカなことがありますか?
というか全然大丈夫そうですね普通に話せます
「アリちゃん、癒やしの光って?」
「属性魔法についてはまだ知りませんね?」
「……うん、聞いたことがないよ」
ですよね…流石に、魔法に関しては儀式をして無いのに予備知識を入れても仕方がありませんし。ホンド村は殆どの家が学園に行けます、ですから魔法を覚えるのは最新の情報は教育機関には集まりますからね
「がぅ、属性は風土水火の順に強いがめぐり、光と闇がほぼ拮抗して、どれにも属さないのが無属性の計7つ有る」
「ほえ〜、じゃあさっきのは光の回復魔法ってこと?」
「はい、そうですよ。光は聖属性と同一で闇は邪と同一ですが言葉に囚われすぎないようにしてくださいね?」
「……………アリちゃん、ヘルプ」
意味をそのまま聞けばいいのに…とは行きませんよね、私には前世の仲があるとしてもナナちゃんとっては英雄の仲間と王族ですからね。いいでしょう
「移動しながら話しましょう」
遠吠えが逃げる意味合いだといいのですが…
そう思い1度森の奥を見ると
「がう、気になるなら行くぞ?」
「……いえ、必要はないでしょう」
大丈夫でしょう。近くに大勢人がいますしこっち側に来るのはリスクを考えて来ないはずです。
遠吠えということは魔獣でしょう、彼らも生きているのですから死にたくはない思いは存在します。
えっとヴェルーナとエレニカはあっちから来ましたからあっちに歩けばいいんですよね?
無我夢中走りましたから、自分が走ってきた道なんて覚えてません(汗)
先導してくれないので数歩歩きましたが、何も言われませんのでこのまま歩きます
「さて、ナナちゃん光と闇では明るいと暗いという想像はできますね?」
「うん」
「では聖と邪となると何を想像できますか?」
一般的に聖と邪となると勝手に正義と悪と想像しがちですが、ナナちゃんはどうでしょう?
「光と闇」
うん、まあ、そうですけどね……
「……それ以外で」
「騎士と暗殺者?」
うーん、ナナちゃんも絵本を読んでいたりしているはずなんですが…思いの外、ナナちゃんは考えが囚われていないようですね
「わっふっふ、正道と邪道的な意味だな」
「フェアとアンフェアですね!」
ヴェルーナとエレニカは、私とナナちゃんの後ろで私とナナちゃんの会話を聞きながら2人で仲良く会話です。参加してもいいのですよ?
「一般的には、聖と邪はよく正義と悪とされます」
「なんで?」
「ナナちゃんは絵本で勇者の物語を読んだことは?」
「あるけど?」
「そのせいで殆どの人が結び付けてしまうのです」
「なるほ…ど?」
「まあ、簡単に言いますと闇は邪悪、悪とされ闇魔法を嫌う人や悪人が好んで使ったりするせいで、悪い魔法認定や進んで排除しようという組織がいたりします」
当時の出来事のを思い出すだけでも目がチカチカしそうです。そう思っていると後の2人も同じなのか
「あれは今思い出しても酷い戦いでしたねー」
「がう、まったくだ」
と笑い合うその2人の会話の戦いに興味が出たのか問いかけた。
「酷い戦い?」
そうですね…2人が言う酷いは悲惨的な意味合いは全くありません。闇魔法を嫌うためか光属性を極めた集団なので戦闘時9割……いえ、99%が光魔法だけで戦いましたつまり
「そうなんですよナルシェナちゃん。もう酷かったんです、あっちもこっちもピカピカ、ピカピカと」
「がう、戦いが終わったあと、みんな休暇とったのは面白かった」
確かに取りましたね、皆理由が目がチカチカするからというのは、ザレ的には視界の不調は生死に繋がるから許可を出しました。確かに今想像すると面白いですね
「そういう連中がいました。なので光だから正義、闇だから悪と決めつけないようにということです」
「なるほどなるほど」
「まあ、さっきの回答なら問題はないですね」
「がう!」
「素晴らしいですねナルシェナちゃん。偏見や差別は低そうですね♪」
そうですね…やっぱりナナちゃんは素敵です
***
しばらく歩いてようやく戻ってきました
「……テントの中で話したいのですが同じテントに入っても?」
振り返りエレニカに聞く
「はい、私用のテントですのでどうぞ〜」
エレニカがいいと言ったので入る瞬間
「がぅ?あれ………まいっか」
とヴェルーナが呟いたのが気になるもその疑問はすぐに判明した
「……………」
姫が報告や寝るための1部屋程の大きなテントの入り口、その布を捲り入ろうとしましたが…あるものが視界に入り思わず止まってしまいました
「アリちゃん?って、うわ何だこれ」
「?あっ、あああああ!」
テントの中は私達が招かれた時には無かった
「すっっっっごい数のぬいぐるみさんだね!」
はい、デフォルメされたザハレグスぬいぐるみですね。しかもどこかしら違いがあります
「………」
えっと………何処から出てきたのでしょう。部屋として使うテントなので広くて、姫で隊長でもあるので兵士達のように寝るだけのテントではなく結構広い…
広いのですが……その広いテントの4分の1ほどの面積を埋めるザハレグスぬいぐるみの山、その数は数えたくはありませんね
「わっ私の秘密がバレてしまいました」
「が…う?みんな知っていることだぞ?」
いいえヴェルーナ、私は知りませんでしたよ?
私が固まったままでいるとナナちゃんはぬいぐるみに近づき
「ぜっ………全部種類が違う………」
え?こんなに山積みなのに同じのがないのですか?
「それは本当ですか?」
ナナちゃんに近づき聞きます
「うん、ほら……これは鎧装備で剣持ちタイプ、こっちは下半身だけ鎧装備でヘルムを抱え持ちタイプとか…あっこれ一緒……じゃなかった表情が違うや、ちゃんと違いがある………」
ハハハと空笑いするナナちゃん
流石にナナちゃんも少し引き気味です…ちょっと意外ですね、こう言ってはなんですがナナちゃんはなんでもウェルカムな印象があったのですが…どうやら違ったみたいです
「まあ、和んだということで…話をしましょう」
「アリちゃん、ちょっと無理があると思うよ?」
気にしないでください
「………ヴェルーナ、エレニカ先程は申し訳ありませんでした」
そう言い2人に向かって頭を下げます
「がぅ…違う、ザレは謝る必要はない」
「そうです。ザハレグス様は、貴方様は謝罪の必要はないと思います」
優しいことを言ってくれますが謝罪は必要です
「いいえ、必要なことです。私の中でキチンと気持ちに区切りをつけたのです」
「そう、仰られるのであれば…」
「うぅ〜、分かった」
すみませんわがままで
「先程は酷いことを言ってしまい申し訳ありませんでした」
深く深く頭を下げる
「…………っ」
「わぅ………」
2人が戸惑う空気を感じましたが、私は頭を下げたまま言葉を続けました
「本当に酷いことを言いました。今の私が、どう当時のことを言おうとも想像でしかなく、例えザハレグスに意識を集中したとしても当時のことは当時のザハレグスにしか分からないことです」
今の私がどう頑張っても当時のことは、当時の私にしか分からない今更考えても今の私の想像でしかない
ザハレグスがこう思ったという…想像
「あなた達の大切な強い想いを傷つけて、ごめんなさい」
「がぅ…許す」
「許します」
「「「…………」」」
無事、許していただけたのですが…なんだか気まずいですね。こういうときはなにかきっかけを作るといいので私は手を叩き言葉を発することで作ることにしました
『パン』
「許していただけて何よりです。では私とあなた達の今後の関係についてなのですが」
「ぅ…」
「っ!『ゴクリ』」
これはハッキリしておかないと勘違いされても困りますからね
「特に距離を取ったりしません。ザハレグスとして接していただいて構いませんよ」
そういうと2人は笑顔になる
「ですが、私はアリシアとして生きていきますので…ザハレグスは死んだものと言う、世間の認識は変えないようにお願いします」
「がうっ、了解!」
「了解です。ザハレグス様」
随分素直ですね…ありがたいですけど
「2人共ありがとうございます……」
言葉を紡ごうとしますが僅かに戸惑います。今から言おうとしている言葉が私にとっての本題であり、2人に対しての後ろめたさを無くすために必要なこと言わばければ…
「それー」
「がう、良かった。子供にお父さんがお母さんになったと言わなくてよくなった!」
…………なんですって?
子供にお父さんがお母さんになったと言わなくてよくった?
「ちょっヴェル!」
「がう?どした七姫?」
「それは内緒って、約束でしたよ!」
「う?」
「ちょっとこっちへ!」
「がっがう?」
2人で何やらコソコソと話し始めましたが、私はそれどころではありません
「……え?」
自身の記憶を探る。だが、何度思い出しても子供を作る行為はしていても、しっかりとお互いに避妊をしていた記憶しかありません
「アッ、アリちゃん顔真っ青だよ、大丈ー」
「ナナちゃん!」
私は近づいて来たナナちゃんの胸に飛び込みます
「痛い!」
「ごめんなさい、ですが緊急事態ですので許してください!」
本当にごめんなさい、成長途中の胸に容赦なく飛び込んだせいで痛みを感じさせてしまいましたが、今の私の精神を落ち着かせるために抱きつかせてください!
「あーうん、分かったよ」
ついでに深呼吸も!
「スーーーーーーーーーハーーーーーーーーーースーーーーーーーーハーーーーーーーーーー」
「アリちゃん?」
ああ、落ち着いて行くのがわかる具合に自身が正常に戻るのが分かるほど、頭の血がスーっと減ったような錯覚が消えていきます
「アリちゃん…」
「あの、ザハレグス様、実はですね。私達も謝らなければいけないことがあります」
私は頭だけを動かし2人を見ます
「なんでしょう…」
いやもう、わかってるけどね?
「そのですね…」
エレニカが迷っているとヴェルーナが一歩前に出て
「がう、最後に全員でヤッた時、避妊したといったのは嘘、むしろ逆妊娠薬を使ったし、ザレに渡した避妊薬も嘘だった!」
なん……だと、ナナちゃんもう1回失礼します!
すーーーーはーーーーすーーーーーはーーーーー
「くすぐったいよ…」
ごめんなさい許してください…………ふぅ落ち着きました
私は、ナナちゃんから離れて真っ直ぐヴェルーナを見ます
「ヴェルーナ…つまり私……いえ、ザハレグスは、副官である5人の妻達全員合わせて最低でも5人の子供がいると?」
最低でも5人双子とかが産まれていればそれ以上
「がぅ?」
なぜそこで疑問を浮かべるのです?
「そのですね…ハイエルフの秘術でアレを保管していただいて…分けていただきまして私もその……」
「ひゅっ」
緊急避難!
「うわああああ」
ナナちゃんごめんなさい!
「がう?」
「申し訳ありません」
「………アリちゃん、その……頑張れ!」
頑張ります、頑張りますから少しの間胸を貸してください
2話うじうじ展開でごめんなさいでした。ようやく、日常に戻れます……ふぅ
でわでわ、また来週投稿しますね




