6.守る戦いと父の背中
「結界が破られたぞー‼‼」
ナナちゃんのその一言ですべて意味が伝わる、敵も仲間を呼んでいるとわかったのか動き出す。
逃げてくれれば助かったのだが・・・
「そう都合よくはいかないか!」
茂みから飛び出し襲ってきて敵が分かった。
敵は魔獣のソードウルフだ普通の動物の狼が魔力によって進化したと言われている魔獣だ、その特徴頭に生えている鋭い切れ味の角である
ただそれだけならばまだよかったが、魔獣は当然魔法が使える。ソードウルフは角で風魔法を使い、ーっ!
「ナナちゃん!」
魔力の気配を感じとり、すぐさま私はナナちゃんを抱き締めて飛び避ける
すぐに行動したことがよかったのか怪我はないが飛び避け地面に転がったためにチャンスと言わんばかりにソードウルフが襲ってくる
「ふっ!」
私はナナちゃんを地面に寝かせたままにして敵を迎撃、手や足に関わらず体の全部を使って可能な限り守るのだ
………
……
…
もう何度目かナナちゃんと一緒に飛んで避けたとき、雑草の中からでてしまった。それと同時に数匹程ソードウルフも出てきた数は…4匹か
まだ雑草のなかに1匹の気配がある
「……」
何度も叫んでいたナナちゃんは、喉を痛めてもう叫べないようで沈黙し、私の真後ろにいる。
私の体を見て、小さくなにかを呟いているが間近にいる私にも聞こえないほど小さかった。
「無事かーー!」
遠くから聞き覚えのある声が聞こえた
ナナパパだ…よし、これであと少しだけ頑張れば助かることが確定したのでよりいっそう気合いをいれるがまさかの予想外の事が起きた。
それは
「パパ!」
ナナちゃんが声の聞こえた方に走り出してしまったのだ
「ナナちゃん!?」
振り返ると、まだナナパパは豆粒のように遠い、にも関わらず走り出してしまったナナちゃん。私の意識は一瞬魔獣からそれてしまう。
それを見逃してくれる敵ではない
「ガウッ!」
魔獣はその隙を逃さずに襲いかかってくる
「なっ!」
魔獣は賢いが動物の頃の本能もある。背を見せ逃げるナナちゃんを4匹が追い、草にかくれてた1匹が私を襲うが私は構わず、とっさにナナちゃんを追いかけて飛び突き飛ばす
「きゃっ!」
ナナちゃんは!?
すぐさま確認するが大丈夫なよう・・・・
「「ガウッ!」」
「「ウウ~!」」
「いっ!」
痛い、2匹が両足に噛みつき、もう2匹は私の左腕と手を角で突き刺して、動かさないようにしている。
……もう一匹は?
ぞくりともう一匹は私の首に噛みつこうと
「くっ!」
動かせる右腕で防ぐ
「あ、ああ、あああああ」
ナナちゃんが私を見て狼狽えているがそんな場合ではない、ナナちゃんだけでもと私は大声を出す
「走って逃げろ!」
「でっでででも!?」
「行けッ!」
「・・・・」
私にソードウルフが夢中になっているうちに安全なところまで走ってほしい、その思いをのせた言葉に気がついたかどうか分からないが、わたわたとしながらもどうにかナナちゃんは親の方へ向かった。
その間も足に噛みついているウルフは噛んだまま押さえつけるように動かないし、左腕のウルフも同じである。残るウルフは何度も何度も首に噛みつこうと噛み直すため私の右腕は穴だらけである
「死に、死にたくない…」
せっかく心を得られたのに、もう一度があるかわからないのに、死にたくない
「死にたくないよ」
涙がボロボロと溢れ出す
「お、お父さん」
ふと呟かれた言葉が私がとっさの助けを求めたのか、それとも近くにいたためかはわからない
でも…
でも何故か、ソードウルフは離れた。
次の瞬間
「・・・・お父さん?」
黒い大きな陰が私の前に現れた
「もう大丈夫だ」
聞きなれた低い声が私の耳に届くと、まだ敵がいるにも関わらず、不思議と私は体の力を抜いてしまった。
ザレの頃にはなかったことだったが私は思った。きっとこれが、親に感じる無条件の安心感とやらなのかな?と
まあ、ザレの頃は心が無かった為、参考にはならない。親が憎いと言う奴もいたけど、少なくとも私の親は、憎むような酷い親じゃないから合ってるよね。と思いながら父の背をボーと見ていたのだった。