50.少しだけ
※百合入りまーす
大丈夫だよねキスぐらい?
「わふ、街に買い出しに行ってこいって」
えっ、妊婦にですか?
「ナナとアリシアが!」
…お父さん、私と話したのだから私にもう一度話してくださいよ
私からもリーナお母さんに伝えるのに、そこまで時間がなかったのでしょうか?
いえ、トボトボ歩いていったので時間は、あるはずですよね?
「それで、保護者役は?」
そうですね、子供だけで行かせるわけもなく、誰か大人がついてくるはずですよね?
「わうぅ、それが…」
ゴクリ
「領主の奥さんと娘さんと護衛さん複数だって」
は………い?
なんですって?
「どうして、うちのアリとナルシェナちゃんが?」
「わふわふ、そんちょ、推薦らしい」
「なぜかしら?」
「わーん、わかんない、明日朝イチでそんちょの家もどきに訪問、そこで買い出しリスト貰うついでにお話伺うしかないかも」
「はい、そうします」
「だねー、ところで伝言の必要なくない?アリちゃんに直接言えばよかっただろうし」
「わふ、ナナそれ違う」
「そうね、ナルシェナちゃん意味があるのよ?」
「ほえ?」
2人の大人から言われて首を傾げるナナちゃん
「わっふ、ナナ、保護者が知る…ということに意味ある」
「そうね、万が一何かがあった際、子供が何処に居るのか、知らないなんて、ありえないことがなくなるわ」
「わふわふ、当然、でかけ先で問題があった場合一番早い人が問題ないならすぐに駆けつける」
「そうね…勝手にどこかに行かれた場合は呼んでくれればいいわよ、呼んでくれれば…」
含みを感じ…あ〜、ゾンビのときのことですね。あれは確かに勝手に降りて、フォルミアのテントへ行き騒動に巻き込まれましたというか発生したというか…
何にせよ報・連・相はちゃんとしないといけません。そういう話ですね、とにかく全ては明日です。
*** *** ***
夕食後、ナナちゃんと私のテントの外で汚れてもいい布を地べたに敷き寄り添って座る。私は三角座りでナナちゃんは横座りで私に体重をかけています。
勿論、少し隙間を作ろうとした私の意見を拒否された結果であります。
季節はそろそろ真夏となり、やや暑く感じ始める季節です。昼は暑くも夜はまだまだ涼しいです
「ナナちゃん」
「なーに?」
「真面目な話、結婚についてはどう考えていますか?」
「結婚ねーうーんどうかな〜?」
私の肩に頭を置くナナちゃん、ナナちゃんは何だから言葉を濁すので私の思いを伝えます
「私…ザレは、副官ズに真実を告げなかった上に、愛する気持ちも無く結婚しましたので選ぶ権利はないと思っています」
愛するとはどんなことなのか、愛するとはどういう気持ちなのか…アリシアになった今もザレの記憶を思い出し探っても驚きや喜び、呆れや怒りの当時を想い
アリシアの心と照らし合わせて、こんな想いだったんだろうと擬似的に確かめた
でもそれは、所詮思い出しであり、再現ではないし当時心無きザハレグスである。心の動きがなかっただからきっと、こんな気持ちだったのだろうという
想像でしかない
私の体が重くなる錯覚を感じます。心が沈み込むというやつでしょうか?
「だから、ナナちゃんが相手を決めてください」
「いやいや、アリちゃんそこは関係ないよ?」
「え?」
何が関係ないのでしょうか?
「だって、結婚って双方の同意の上でするもんだし」
「それは…そう、ですけど」
「嫌なら離婚すればいいよね?」
ナナちゃんの言葉に、うなずくことしかできない私
「それに、副官ズさん達はずっと一緒だったんでしょ?」
「はい、最後の作戦、ザハレグスが死ぬ作戦でしたが、念の為離婚をするか聞いたのですが、離婚はしないと言われました。『最初で最後の生涯ただ一人の夫』とまで言われました」
「はぁ〜生涯って、愛されてるね」
「そうです。私は…そんなに愛してくれた人たちに…」
「嘘をついて騙していました」
自身で言って呼吸がしづらくなります。
愛していないのに愛してるとささやき、心にも思っていないことばかり口にした
「でもアリちゃん…ザハレグス様は、心がないなら無いなりにその副官さん達にザハレグス様なりの愛を伝えようとしたんでしょ?」
「それはもちろん、好きと愛していると言われて、妻になりたいと言われた私は、一縷の望みにかけました。もし…もしだめでも、精一杯相手の望むザハレグスを演じ、最高の夫婦であろうと努力は惜しまないつもりで結婚しなした」
一縷の望み、それは心の芽生え…多くの人が、愛とはすごいという。
「一縷の…望み?」
「はい、一縷…とても細く糸のようなもので、ごくわずか…闇の中の一筋の光のようなと思っていただければ」
「そっか…そんな僅かな希望で、愛に賭けてみたんだ」
小さくうなずく
「愛とはすごいとよく耳にしましたから」
「そっか…」
愛する人がいるから、強くなれるとか
愛する人がいるから、どんな困難も乗り越えられるとか
本当の愛とは…
愛があるから…
愛さえあれば…
愛は奇跡を…
様々なことを聞いてきた。だから望みを…いや、それは嘘だザハレグス心無き者、試したにすぎない
結婚や愛を語る人と共になれば、心宿るか、芽生えるのか、実験に過ぎなかった。結果は無理でしたが
一般的に考えて、実験なんかで女性にとっての初めてを頂き結婚もした。そんな自身の身勝手な行為は褒められたものでは無い、そんな事は当然ザハレグスも知っていたので
お詫びに各個人の好みの傾向を分析し、その人が言ってほしいことや、やってほしいこを明るい笑顔や嬉しそうに微笑む事を目指して、日々努力させていただきました。それをお詫びとして
ザハレグスは心宿らず、ただただ小さく
「愛も無理だったか」
そう、呟き喜びも悲しみも怒りも幸せも不幸も何1つ、僅かにも感じることはなかった
1+1=2の答えが出る。そんな当たり前のように、なんの感情も沸かなかった
「けれどどんな理由があるにせよ、私は、自身の身勝手に付き合わせたことに変わりはありません」
「でも、向こうから離婚の申し出はなかったんでしょ?」
なかった。離婚したい、とかザレに関して不平不満などは聞きませんでした。聞きませんでしたが、ですがっ!
「ですがっ、もしかしたら私ではなく別の人と添い遂げたら、幸せになれたかもしれないのに!」
心がモヤモヤして胸の中をグチャグチャになり涙が溢れます
「アリちゃん…それは違うよ」
ナナちゃんは、三角座りしている私を包むように抱きしめた
「幸せは誰かが決めることじゃないよ、他の誰でもない自分が決めることだから、ザハレグス様と結婚したのは副官さん達にとって後悔もしてないし、不幸にもなってないはずだよ?」
「でも…」
もしもの可能性とああだったら、こうしていればともう過ぎ去った過去のことを考えてしまいます。私は後悔しているのでしょう、今更そんなことを思っても意味はないというのに
私がそう煮えきらない態度をしていると、ナナちゃんは抱きしめるのをやめて、私の斜め前に膝立ちになり右肩を掴みます
「ああああもうっ!ウジウジ考えないっ!、悩まないっ!」
「でっですが」
「アリちゃんはああだこうだ言うけど、じゃあさ、残された側の副官さん達はどうなのさ!」
「え?」
「フォルミアの親が最後、生きてって言ったのは生きて幸せになってほしいからでしょ?それぐらいは想像つくよね?」
「はい」
「じゃあ心無きザハレグス様は、残した者たちにどういう思いを残したの、それがたとえ世間の常識や当たり前とされることだとしても答えは1つでしょ?」
「それは当然、生きて、幸せになって欲しいと」
心無きものでも、周りに合わせて生きてきたザレは、当然のように残る者たちへ、自分の亡き後のことを作戦開始前に言った
「自分はこの作戦でこの世を去るが、決して後を追うな!生きろ!生きて幸せをつかむのだ!そして天寿を全うしろ!」
ザレにとってはマニュアルの1つ部下を大切に思う上司的なものだった
「でしょ?はいそれでザハレグス様は願い託して人生終わり!良い人でした。終了!」
「?」
ナナちゃんは、何が言いたいのでしょうか?
「いちいち過去のことで悩むアリちゃんにね。いい言葉、教えてあげる!」
「どんな言葉ですか?」
「前は前、今は今!」
え…前は前、今は今?
「もうっ!アリちゃん、ザハレグス様の人生は終わったんだよ?」
「はい…そう…ですね」
ナナちゃんの言う通り、ザハレグスとしての人生は既に終わっています。神様の奇跡により記憶を持ったままアリシアとして生まれ変わりました
「じゃあ、新たなアリシアとしての人生を歩まないとダメじゃないかな?」
「アリシアとしての人生…」
スーっと、暗く沈み込んでいた心のモヤモヤが消えていきます
「そう、記憶を持って生まれたから気になるんだろうけど、それは道具のように使えるとこだけ使って、あとは気にしなくていいと思うよ?」
「使えるとこだけ使う?」
「そう!」
それは今までやってきていたことで、ザレの知識と経験で今まで来ています
「気にしなくていいのでしょうか?」
「そうだよ!」
ニッと笑うナナちゃん
「まあー、どうしても気になるんだったらそれこそ、草葉の陰から見守るように様子を見るしかないかな?」
「草葉の陰って」
思わず、くすりと笑ってしまう。
草葉の陰って、確かに意味合い的には私は合いそうですが生まれ変わって今、生きていますよ?
「よしっ、笑ったね!」
「あ…もう…」
もぅ…………………流石ですね、ナナちゃん
「元気…でた?」
「はい」
「過ぎたことを知るのはきっと勇気がいるよね?」
「はい」
もしの可能性を言えば、限りなく多くの未来が想像できる。それは必ずしも幸せだけではないし、時はほとんど経っていないからこれから行く先々で様々なことを見ることとなる
「でもそれは、無責任な発言かもだけど前世、ザハレグス様の時の話だよ?」
「はい」
記憶を持っていても、今の私はアリシア。もう、ザハレグスではない過去の人物、向こうから問いかけて来たら答えるのはいいかもしれないが、ザハレグスとして何かをする必要はない
「アリちゃんの人生、アリちゃんの好きにしたらいいよ?」
「……はい」
なんだか心見透かされているような感じです
「なんか伝わってない気がするね」
「?」
そうでしょうか?
「えっと、ナナちゃんはザハレグスの人生はもう終わったのだから、過去とはお別れして、アリシアの人生を歩もうって、ことではないのですか?」
前は前、今は今とはそういう意味で言ったのでは?
「違う違う、前、のザハレグス様としてやってしまったことは気にせずに、今、のアリちゃんが幸せになるために使えるものは全て使って幸せになろうってこと」
「え?」
「せっかく前世の記憶があるんだもんいいとこ取りしてさ、幸せにならなきゃ…ね?」
「そんな…」
それはちょっと、ズルくありませんか?
「アリちゃん」
ナナちゃんがグッと近づきオデコをくっつけます
「アリちゃんはさ、ザハレグス様の時にたっくさん苦労したと思う」
それは…どうでしょうかね。心無きものには苦労したという想いさえもありません1日の時間がただ過ぎただけなのだから
「今も色々考えているでしょ?」
「…はい」
「ちょっとぐらい我儘でいいんだよ」
「いいのでしょうか」
小さく呟く
「いいよ、私が許す」
私の大好きなナナちゃんがそういう、ならばナナちゃんに嗜められるまでちょっとぐらい自分に正直に、我儘になりましょうか
「ナナちゃん大好きです」
グッと、ナナちゃんを押し倒します。
この気持ちを伝えさせていただきます
『ちゅっ』
キスです。今はまだ子供同士ですのでキスで我慢です
「!?」
「私の、暗くモヤモヤした気持ちを晴らしてくれてありがとうございます。大好きです」
『ちゅっ』
今回はどこまでのキスのしましょうか?
「んっ、ちょっアリ…ん…アリちゃん!?」
舌でも入れましょうか?
それともキスの場所を口以外にしましょうか?
そう考えて口から離して頬へ…頬から首筋へ、
『ちゅぱ…ちゅっ、ちゅっ』
「ふやぁ………アアリ、アリ…」
あっ!首はいっそ跡を付けましょう、キスマークを付けるのです。共婚者の腕輪を今は買えませんから
『ちゅ〜〜ちゅちゅ〜』
「アリちゃん!」
私の頭を抱えこんで、力いっぱい締め付けられます。ちょっと痛いですね
『ちゅぱっ』
……これは………いいですね。
私は首筋にキスマークを付けたナナちゃんを見ると初めての知らない感覚を得たのだった
今回も文字数が多くご迷惑をお掛けします。
それと、今回キス入りましたがこの作品、前もどこかで言いましたが百合アリです。
TS要素はいずれ入り始めますので何処かの表現方法でR15指定していますがそれ以上にならないよう気にしながら書くこととなるかもそういう場面がなければ大丈夫だよね?
でわでわ、また来週投稿します




