31.溢れ出す心
お待たせしました。少し遅れてごめんなさい
それから外で一泊し食料と回復薬と魔力を回復させる魔力回復薬を少量購入して翌朝出発……したかったのだが
「どうします?村長」
「うーむ…人としては連れていきたいが」
「他の村のやつが戦力にならねえ、戦えるやつが負傷者だ」
出発する。といった時にまさかの『自分達も一緒に』と急に言い出したのだ
今更ながら自分達ではもう移動が厳しいと判断したようだ、ちなみに命からがら逃げ出してきたので、お金も食料も何もないそうだ
受け入れれば全負担を追うことになる食料や領都についたあともです
「……まだ出発出来ないのかよ」
準備できていたので子供は、グループでまとまって馬車内で待機でしたが暇でかれこれ30分も経ちました。流石に動かない馬車に乗っているのも退屈になり焦れてきた子供たち
「なんか、アイツらが原因みたいだよ〜」
「うわまじかよマジ迷惑だし、どうせ……」
これ以上は聞きたくありません
「ナナちゃん、ロティシナ少し移動しましょう」
「ん?うん」
「うん」
私の言うことに2人は素直に従ってくれます。ありがたいですなんだかあの場所にいると耳が腐りそうで…すいませんね
馬車から降り…
「あっ、いけないんだー馬車に乗っていろって言われてたのに〜」
ます(怒)…あなた達ではないんで、大丈夫ですよ変な所に行くわけでもないですし!
いちいちうるさいガキですね
「……」
ロティシナが一点を見つめています。一体何を見ているのだろうと思い視線をたどるとそこには
「狐の獣人さんだね」
耳と尻尾からナナちゃんがそう判断します。その獣人さんは私とナナちゃんと同い年の少女…だと思われますが顔はとても怖いです理由は察することができます
他の子たちは片親ですがいますけれど少女にはいません、それが答えですね
怖い顔の理由は復讐心でいっぱいなのだからでしょう、怒り憎しみが湧き水のごとく絶え間なく溢れてくる…ザレの経験で見てきた人物達が、そういった感情のときこんな顔をしていた。
「……おねぇちゃん、どうにかならない?」
え?
「アリちゃん……」
えぇー……うーん、正直な所ザレの頃であれば人としてはザレの常識辞典では、困っている者に手を差し伸べる善行をできる限りせよとありましたので進んで声をかけていたでしょう…
ですが今は、私自身には心があります。なのでザハレグスの常識(?)辞典を参照する必要はもうありません
なのでナナちゃんとロティシナがどうにかしてほしいと言われましても、あの憎しみに染まっている心を元の平常に戻せるかどうかは、あの子が聞く耳を持つかどうかによりますよ?
「一様やってみます」
「ありがとぅ」
「ごめんね、アリちゃん」
一体どうしてこの2人はこの子に救いを与えようというのか、何故憎しみに染まらないようにしたいのか?
まだ……私には分からない……いえ、また。私は心が分からないの?
『ギュッ』と拳を握る
「……」
無言で少女に近づいていく
全くこの子のせいで、気付きたくないことに気がついてしまいました。どう責任取ってくれるんでしょうか、沸々と心の底から怒りの感情が出てきます。別にあの子のせいでは無いのに……あの子のせいでは無い…のに?
私は気がつくと立ち止まりました
私は何を思っていたのでしょうか、何の罪もない子が他国の兵士により故郷を追われ命からがら生き延びて一人になってしまっている相手に……何を思った?
偶然とはいえ、この子によってまだ知らない心と、しれない心があることに気が付かされて不満を持ち、この子に当たるの?
…八つ当たりもいいところじゃない!?
馬鹿なのか私は!?
ふーーー………冷静になろう、落ち着こう…………うん、もう大丈夫、落ち着いたことによって思い出すザレの常識辞典として記憶していた
・個性により考え方が違い理解し合えないことがある
きっとこれに当てはまったんだ。私はナナちゃんとロティシナと考え方や学んできたことにより個性的に違い、理解が及ばない何かができてしまったんだ
……でも大丈夫、寛容な心で違いを理解していくそれが大事だ、ナナちゃんのことは共婚者である以上どこかでそのうち衝突もあり得るかもしれないがその程度で嫌いになるほど浅い関係ではないしね
では、落ち着いたことだしいくか
私は座り込んでいる少女の前に立った
「……」
「思い詰めているようですが、まさか復讐をなどと考えていませんか?」
「……」
「……」
殺気とまではいかないまでも少しばかり圧を感じます
「あなたには、分からないのでしょうね」
「はい、わかりません」
「あなたの村では死人は出ましたか?」
「いいえ、ほぼ軽傷者のみでした」
私とナナちゃん以外にも怪我人はいたそうですが重傷者はいなかったそうです。あの0.5は私がいなかったら重傷者になり得たかも…
いえ、トットルさんもバンサーさんもお強いですからそれはありえませんね、せいぜい軽傷ですみそうです
「幸せものですね、私達の村は……」
『ギュッ』
拳をギュッと握りしめ歯を食いしばる、その様を見れば悲惨な出来事が起こったのだとわかる…
「そういえばあなた、復讐ななどといったけれど」
すっと立ち上がり私を睨みつけてきます
「復讐の何が悪いの!私達は、奪われたんのよ、復讐は当然の権利でしょう!!!」
「ええ、まあそうですが子供のあなたに何が出来ると?」
「刺し違えるくらいできます!」
「無意味な事をしようとするのですね」
相手は国です。たった一人と刺し違えたところで、なんの意味もない
「無意味!?無意味ですって!」
少女は私の両肩を掴みます
「ええ、無意味です」
「どうしてそんなことが言えるの!いいえそうね、自分たちが無事だから私の苦しみがあなたにはわからないのよ!」
『ズキッ』
少女の言葉に胸の奥に痛みではありませんが何か衝撃が来ました。確かに私は2度目の人生にも関わらず、その経験で相手の心を理解することができません
今思うとあれは駄目だったんじゃないかとかその時のことを思い出すと、ふっ…と背中に冷たいヒヤリとした感覚に襲われることがあります。少女の指摘は的確で本当に私には身近な人が…親しき人を失うとどういう感情にになるか理解が及ばない対応はあっていないのか…
いいえ、今は過去の事に振り回されている場合ではないです!
「ええわかりませんっ!」
「だったら!」
「わかりませっわかりませんが、お聞きしたいことがありますっ!」
なにか感情が膨らみ私の声も大きくなります。
「あなたのご親の最後の言葉は何ですか、なんて言っていましたか!」
多分、大丈夫ですまだまともに私と話ができる少女は冷静な判断ができるはずですしきっと親は復讐を願っていないはずです
「え……あ……」
頭に今自身の親の最後が思い出されているのでしょう…賭けですが、この子の親はそんな事は言わなかったと思います。
「………」
少女はきゅっと口を結びうつむきました
「思い出したなら、あなたの口から教えて下さい」
「……」
「言って!私に教えて下さいっ、あなたの親の最後の言葉は何でしたかっ!」
今度は私が少女の両肩を掴みます
「……って……た」
ああ、良かった想定どおりです
「はっきりと大きな声で言ってください!」
「生きてって…言って…た」
「もっとはっきりとっ!あなたになんて言っていたか私に教えて下さい!」
私はいつの間にかかなり大きな声で少女に言った
「あなたの親は、どんな願いをあなたに託しましたかっ!」
少女は顔を上げて、涙を流しながら大きな声で私に教えてくれました
「生きてって、私に生き延びてってフィアリスお母さん言ってた。お腹に赤ちゃんが…いるがらっで一緒に逃げられないがらっで、おっおどうざんどいっじょにっでぇ」
私は抱きしめ少女の頭を撫でます辛い事を思い出させた分優しく抱きとめ辛い思い出を吐き出させます
「ぞっぞでれでぇ…グスッ…それで、一緒にお父さんと…ここまで来たけどぉ……昨日までお父さん普通だったけど……き………今日………お父さん、おっおどうざんおぎなぐっでぇおぎなぐっでぇえええあああああああああ」
少女は私に力いっぱい抱きついてきました。
私は……私も少女を抱きしめ返します。
吐き出せ、その辛い心を受け止めますから
吐き出せ、その悲しみを受け止めますから
だから泣け、泣いて泣いて少しでも立つ力を得てください、受けとめる私がここにいます
………また次週、投稿します




