28.領都へ移動する馬車の中で
「……アリちゃん」
瞳を閉じて、オデコとオデコをくっつくけて泣いていた私にナナちゃんは声をかけてきた
「…?、なぁにナナちゃん」
「ごめん、私……げん……かい」
ガクッと崩れ落ちるのですぐさま抱きとめる
「……迷惑かけてごめんね、アリちゃん」
「大丈夫…か?」
ナナちゃんが不自然に倒れたので駆け寄ってくれたトットルさんにお礼を言いつつ、近くの芝生に座りナナちゃんを膝枕で休ませる
それにしても…前の魔毒の影響と違う魔毒これは何なんでしょうか、器があるとされている心臓の部分が痛むのではなく
傷を負った部分が痛む…ザレの頃でも記憶にありませんし、ザレの記憶を探っても部下や知り合いにそんな症状は見たことも聞いたこともありません皆一緒の胸を掻きむしるように掴む…それだけです
そんな魔毒の事を考えつつもナナちゃんの頭を撫でていると
「ナナ!」
ナナパパがやってきた
「シー」
私は口元に人差し指を当て静かにするようにと仕草をすると「おお、すまんすまん」とナナパパは小さな声で言った
「寝ているのか?」
「はい、今は魔毒の影響が小さく痛みのせいで体力を消耗したらしく痛みが引くと同時に眠りました」
「そうか…」
「あの、出発はいつ頃になりますか?」
「ああ、準備ができ次第すぐだ」
えっ!?ああ…そうですよね。援軍が来る可能性がありますからね。とういことは本当にナナちゃんが風景を見たいと言って眺める時間をもらってなかったら今この時この場所の風景を覚えることはできなかった。そういうことですね。
感謝の意味も加えてより一層優しくナナちゃんの頭を撫でる
「ありがとう、ナナちゃん」
それからすぐに各家の準備等が終わったのか馬車などが用意されていつの間にか来ていた領主軍の一部とともに移動を開始した。
移動最中は、ほんの少しの間穏やかな時間が流れた。悲壮感等はあまりないのかそれとも隠しているのか親はそこまで気にした様子はない、冒険者がほとんどだからだろうか?
けれど私とナナちゃんはある事でちょっと過酷なものとなった。そう、魔毒だ
「ぐぅ…………ううううぅぅぅ!」
「はぁっ…………はぁっ…………ぐっ……………んん!」
ナナちゃんの手を握る。馬車の中、ナナちゃんが手を握っていてほしいというのでそうしていますが気休めにもなっていなさそうですね、もちろん私も辛いのですが…顔ではないのでナナちゃんよりはマシだと思いますので、ナナちゃんを気遣います
「アリ……ちゃん……」
「はい……何でしょうか?」
「頭撫でて」
「はい……水分はいりますか?」
「………まだいい」
「そうですか」
眼帯をして布も追加してかなり重症のように見えるナナちゃん、ですがこれは必要な処置です。痛みのあまり引っ掻いたりしないようにするためです
分かっていても痛みや苦しみは正常な判断を狂わせる。当然私の手も布でぐるぐる巻にされて腕の骨折者の応急処置のように首から吊るしています。
本当にほんとーに少しではありますが、痛みの原因の手を(切って捨ててしまえば楽になるのでは?)と思ってしまったことは私だけの秘密です
まあ、こんな拘束だけでは大人が心配するので私の両親とナナちゃんの両親から両者1人ずつの計2人が同馬車にいます。お手数おかけします本当に子供の苦しむ姿を見るというのはどんな心境なのでしょうね……あっくる
「ーーーーーーーっ!」
「あっがぁぁーーーーーーーっ!」
激痛が来ました。今まで傷口に染みる液体でもたらされていたような痛みから傷口をさらに広げ刃物を突き立てられているような…簡単に言うと棘が刺さっていてグリグリされていたのにそれがグリグリしながら押し込んでいるような感じの痛みへ変わりました…余計わからなくなったような気がしますが…まあいいです
『タッ』
「わふぅ…大丈、夫じゃないよね痛いよね」
スーナさんが駆け寄り、心配だけど何をしたらいいかわからずあたふたしている
「スーナ落ち着け…見守るしかないんだ」
眉間にシワを寄せでも眼差しは不安な色を浮かべているユナお母さん……大丈夫ですよ、ただ痛いだけですので耐えられます
「ぐうぅぅぅ…くそぅ」
ん?ナナちゃん?
「スーママの耳と尻尾かわいい」
何だナナちゃん余裕あるね、なんだかんだで余裕があるようなので安心した。
この苦痛に耐えて2日目、私とナナちゃんのせいというわけではないが現在、病床人用となった馬車に珍客が増えた
「ぬおおおおおおおおおお」
お腹を抑えてうずくまっている男の子(私とナナちゃんよりも年下の5歳ぐらいの子かな?)が増えました原因はなんと拾い食い、その辺に落ちていた木の実を食べたらしい
「フッ、なんと愚かな」
ナナちゃん?
「拾い食いか…馬鹿な真似だよね」
……あなたも数年前は何でもかんでも触るから、ご家族から叩いても止めろと言われていた私としましては…その……ねぇ?
「あっ……ぐぅうううううう」
結構痛そうですね。ナナちゃんも同じ事で痛かったことがあるからでしょうか、痛みがわかる用で魔毒の時とは違う他者に対しての慈しみ…違いますねこの表情は哀れみの方でしょうそんな顔を向けています
「うぅ……」
男の子が仰向けになりました。それでお顔を拝見しましたがもうボロ泣きでした
「ああああああああああああああ!」
突然、叫び声を上げる男の子!なっなんなんですか!?どうしましたか!?
「ああああああポンポン痛い、ポンポン痛いよ!」
ジタバタジタバタと腕はお腹を抑えていますが、足をバタバタと動かし時折ブリッジするその光景はとても変態的で気持ちが悪いです。ですが……ポンポン?
「あーわかるわー、ポンポン…痛いよねー」
さも当たり前のようにナナちゃんがいうのですぐさま記憶を探る…うーんザレの記憶にもありません。あれ?
「そういえばアリちゃんわさー」
「…はい何でしょう」
「ポンポンって言うっけ?」
ほっ…良かった記憶を探りましたが、まったく覚えが無かったので少しだけ焦りましたがナナちゃんが聞いてきてくれました
「いいえ?というかポンポンって?」
「あれ、アリちゃん家だとポンポン言わないの?」
ナナちゃんはそう言って本日の見守り当番の私担当のリーナお母さんを見る
「ええ、家ではお腹のことでそういう言葉は使ってないわね」
「そうなんだ~」
そっか、1つの家、1つの家庭ごとにその家の個性があるってことですか……ああ、これが育った環境と言われることの1つですかね?
「ポンポン痛い〜〜~!」
「うるさいわよ、あんたが拾い食いなんかするからでしょ!」
「でもママとっても美味しそうだったんだもん!」
「もん!じゃないでしょこのバカ!」
「うわああああんポンポン痛い〜!」
泣くか叫ぶかどっちかにしてほしいものです。
「うるさくしてごめんなさいね〜」
「いいえ〜、うちの子は静かすぎて逆に心配になるからそのぐらい元気がありすぎる方がいいですよ」
えっ、リーナお母さん?
「いや、アリーナ活発すぎるのも困ったものだぞ?」
ナナママ2のイリーナさんがそう言ってナナちゃんを見るとナナちゃんはグッと親指を立てる…いやいや、何故そこで親指を立てる?
そんなちょっと愉快なことも起こりながら領都へ半分くらい来たところで別の問題が起こる。それは、魔毒の影響がなくなって布を取った時
「黒くなっている」
今まで魔法で清めていたため一切取り替えなかったがゆえに今初めて見た
傷の場所を中心としたのか指先まで黒く同様の距離まで腕も黒くなっていた
「………」
絶句してしまう、心はとても隆起がなく波がなく平坦になった。何も感じない……いや違う
「何なんでしょう…これは」
頑張って言葉にすると理解できる思考停止して考えることをやめたんだ…と
でもすぐに私はナナちゃんのことを考えた。私は手だけどナナちゃんは?
年始早々の仕事が始まりました。休んでいた分急に働くと疲れやすさを感じますよね?
いやいや、自分が運動不足なだけですよね?
ごめんなさい
でわでわ、また来週投稿します




