159.フランメの不安の波
パパママ達へ
大陸から離れるとはどういう気持ちなの?
果てしない空へ、現実的に地上から舞い上がったまま、気持ちも立場も舞い上がり自分達の存在を勘違いしなければいいと思うけど異世界人言葉で、馬鹿と煙は高いところが好きって言う諺があるのになんで高いところが好きなんだろうね
地に足をしっかりつけるナルシェナより
トラビト「ま、諺だからな高いところが好きだからって馬鹿とは限らんぞ?」
イリーナ「この新聞のことじゃないの?」
ネーナ「まあ、面白いことになってるのね」
スーナ「わふ?」
***フランメ***
馬車に揺られて数日、今は大きな町に着きここで二日ほど休息をとってから再出発するそうだ、今はランチをカフェでいただいている最中だったが、私は一旦トイレのため席を離れた。
両足が無い以上要介護となるのは仕方が無いがやはり世話をして貰うのは申し訳無さがある。
「本当にすみません」
「お気になさらず、それよりも謝られるよりも感謝の言葉のほうが私も気が楽ですし、フランメ様も少しは申し訳無さがなくなるのでは?恥ずかしさはどうにもならないと思いますが…」
そう言って苦笑するリエルさん。そうトイレの度に声をかけて世話をして貰う度に申し訳無さと恥ずかしさを感じるのは仕方がないこと
「……あの、私の世話はアリシアの指示ですか?」
「そうですね、それもありますが私が教会等で人の世話をするのに慣れているというのもあります」
「そう…なんですか?」
「はい…あと言葉遣いは好きにしてくださって構いませんよと何度も申し上げておりますのに」
いや、年上にタメ口は気が引けるんだ、無理だぞ私は
「はい、では席に戻りましょうか」
私を抱き上げて、席に戻る。
アリシアは席を離れる前と変わらず新聞を読みながらコーヒーを飲んでいるし、ナルシェナはギリ焦げていないくらいの焼目が黒に近い黄色?最早木の色のホットサンドに齧りついている。
「なんだか子供と大人のようだな…」
見える光景に思わず呟いてしまった
「そうですね。アリシア様は、情報収集をされ」
『ブッ!?』
「!?」
「っ!」
「ん!?アリちゃんどうしたの!?」
右から左へ視線を向けたアリシアが急に飲んでいたコーヒーを吹いた
「ゴッホゴホッ!」
私を席に着かせて、リエルさんは店員に布巾を持ってくるように言う
「いえ、ゴッホ!ちょっとゴッホゴホッ!?ある記事がですね驚きのあまりつい……ふぅ、あ、スミマセンお騒がせしました」
店員さんから布巾を受け取りそそくさと片付け、新聞の弁償と手間賃代わりのチップも握らせた。
「はぁ…驚くとむせることもあるんですね…じゃなくて、この記事です」
アリシアの吹いたコーヒーで濡れていたがしっかりと読める。その内容は…
『ヴァーチュ聖教国浮上!?』
「うん?」
記事のカット見出しだったか?
祖父が教えてくれた所にデカデカと書いてあった見出しに思わず疑問を抱く
「へ?」
「…?」
ナルシェナもリエルさんも
「ね?この見出しだけで思わず吹きそうになるでしょう?」
いやいや、純粋に疑問しかないが?
「えーっとなになに?『昨夜未明、ヴァーチュ聖教国首都がこの大陸から分離し浮上しました。』ふぁ?」
ナルシェナ、気持ちは分かるぞ、一体どういう意味なんだろうな?
いや、そのままの意味だと思うが…まあ、こんな内容じゃ確かに、アリシアも吹き出すほど驚くか…
そう思っていると続きを音読し始めるナルシェナ
「『聖なる鎖にて現在地上とは繋がっており、国境を越える心配はないものの、聖教国の教皇達はこれが我らが神に愛されている証拠などと荒唐無稽の事を宣言し自分達は神選ばれしものと』ってなんじゃこりゃ!?」
読めば読むほど意味がわからなくなっていきそうだが書かれていることが事実だとすると調子に乗って現在聖教国はお祭りタイムなんだろうな
いったいどうするつもりなのかとアリシアを見ると、何かを呟いていたので耳を傾けたのだが記事とは関係ない内容だった
「驚く感情の経験はアリシアではありましたが飲み物を飲んでいる最中というのは未経験でしたね。いや、少しばかり驚くことはありましたが、むせる状態になるのは経験ありませんでしたね。新しい初めてです。ザハレグスの時はない経験、アリシアになってからは本当に嬉しいことばかりですね」
などと喜んでニヤニヤしていた。
話には聞いていたが本当に感情を…心を喜ぶんだな
じゃあ、そこにもう1つむせるというか笑って吹き出すこともあると知識だけ口頭で伝えるか、実際に笑わせて吹き出させることは私にはできんからな
「アリシア、むせる経験おめでとう」
「え?ああ、ありがとうございます」
「だが似たような事は笑った時もおこるものらしい」
「なんですって!?」
人間観察してても知らなかったか、まあけっこうレアな現象で体験だからなそうそう見れるものではない
「くっ…なんということでしょうか是非とも体験したいですが、すこし…いや、かなりはしたないですよね?リエルは体験したことがありますか?」
「……妹が生きていた頃に2度や3度ありました」
「っ!?どんな感情でした!?吹き出すということは不意に何をされたからそうなったのですか!?それとも不意でなくともあり得ることなのですか!?」
おっと?かなり前のめりだな…知りたくてたまらないということか……だがすまないアリシア
「それよりもアリシア」
「それよりも!?」
「ああ、すまないが聞きたい事がある」
「なんと…………はぁ……………それで、何を聞きたいのですか?」
すごく残念そうな気持ちを抑え込んで切り替えたか、すまないな…だが気になるのだ
「すまない、だがこれからのヴァーチュ聖教国の動き次第ではこの国は争う可能性はあるのか?とかが気になるんだが…」
「ああ、それに関してはまあ、大丈夫じゃないですかね?」
「ん?さらっと流すのか?本当に大丈夫なのか?」
全然何もわからない、アリシアが大丈夫というから大丈夫なのだろうか?
「まー、何かあるかと言われれば当然ありますが私達一国民が」
「一国民?」
ナルシェナがツッコんだ、確かにアリシアを一国民に入れるのは、おかしいことこの上ないな伝説の英雄ザハレグスの生まれ変わりでその強さは私達からすると何1つ下ってなく衰えどころか更に強くなってるんじゃないか?とも思わせてくれる
まあ、何をもってザハレグス様が強かったのかなんて私達には分からないんだがな
「一・国・民・です。現在はまだ鷹と苗木に所属しているだけの一般団員なのですから」
そう言うと一度咳払いして話しを再開する
「一国民が心配することなど何もありません。むしろ彼等の行動は変わりません。ただ、信者を増やすための言葉が増えただけですね。むしろ気になるのは、どうやって浮上したか浮上に使うエネルギーは何か?魔力なら魔力で消費量はどれほどか周りの影響は本当にないのか…などですね」
うん、そうだな
「アリちゃん」
「なんですか?」
ナルシェナがズイッと前のめりになってアリシアに顔を少し近づけて圧をかける
「アリちゃんのコーヒーのせいで私のホットサンドが柔らかくなったんだけど、どうしてくれるの?」
ナルシェナよ今はそんなことどうでも良くないか?
もっと気になることがあるだろう?
「大変申し訳御座いませんでした。つきましてはどうすれば許して頂けるのでしょうか?」
「うむ、じゃあこのミックスナッツと紅茶のセットで」
「はい…フランメはどうしますか?追加注文するので何かあれば一緒にしますが…」
「え?ああ、それなら…」
メニューにサッと目を通して、ちょっと気になったケーキと紅茶のセットをお願いした
………………
………
「………では、ごゆっくりどうぞ」
「あ、先にお会計をしておいても良いですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
アリシアは料金を払い本当にのんびりする、こととなった
「でさアリちゃん、聞きたいんだけど本当に大丈夫なの?」
あ、ちゃんと聞くんだなナルシェナ
「ええ、大変なのは王家であり、軍であり、国民の我々は王家がどう動くかで対応が変わりますからね」
「と…いうと?」
ナルシェナよ、ちょっとは考えてもいいと思うぞ?いや、自分の考えがあるがアリシアの話を聞いて?自分の考えが幾つ合ってるか答え合わせという線もあるな、何でも聞くからと考え無しと思うのはいかんな
「……もともと税金で国防費は割り当てられていましたが戦争をするのであるならば税率を上げる必要が出てきます。しかしそれが2面戦争となれば更に戦地が増える。ならばそれ相応の用意が必要ともなりますよね。全てがタダというわけにはいきません」
「うん」
「ドスティアード王国は税が低く、住みやすく、保証などもしっかりしています。それは王家があまりお金に執着しない点があるからです」
「どういう事だ?」
流石ザハレグス様とでも言えばいいのか、王家の内情にも詳しいとは
「…………お金って使わないとは貯まりますよね?」
「まあそうだな」
「うん」
「そうなると経済回りませんよね?」
「何を当たり前のことを」
「うん」
「経済を回すとし…………この話は辞めましょう」
「?」
「うん」
私は気になるからぜひ聞きたいが、そんなのはまた別の機会に聞けばいいか
「まあ、王家が税を上げると言えば税が上がるのでそうなると戦争準備の為お金を集めてます。と思えばいいでしょう」
「そうなのか」
「へー、ナッツうめー『カリッカリカリ』」
ナルシェナよナッツ食ってる場合か?
いや、頼んだからには食べるべきだが…まあいいか
「なので頭を抱え悩むのも王家です。なので我々は普通に生きていればいいんですよ」
そう言ってアリシアは微笑み
「私の身内は金に困らせるつもりはありませんし、心配は何一つ無いんですけどね」
と言って紅茶を優雅に飲んだ
…だが、アリシアよ先日の馬車での移動の最中に聞いた移民なども考えて余りに問題が増えすぎると君に飛び火してこないか?
ヘルプされないか?
そう思ってしまう私であった。
……………………
……………
………
ただの休憩のため立ち寄った町、夜に宿屋で寝るにしても私は不安に襲われる時がある。
原因は言うまでもなくこの両足だ、この町に来るまでの間もずっと誰かの世話になった。
リエルさんだけではない、アリシアは察しが良く眠りも浅いのかそれとも私の事を気遣ってか
『パチ』
「ん……」
こうしてなんとか寝れても悪夢で起きてしまった場合
再び寝直そうとしても寝付けず数分経つと
「フランメ、魔法か散歩か添い寝どれにします?」
こうやって問いかけてくれる
「散歩…良いか」
「ええ、では出かけましょう。格好はどうします」
「着替えさせてくれるか?」
「はい、失礼しますね」
そして夜の散歩へ出かける
***アリシア***
やはり、そう簡単に落ち着くものではないようですね。
馬車での移動の数日、フランメは何度か幻肢痛を発症しそれを隠していたり、悪夢にうなされて起きたり、いつか捨てられるのでは無いかと不安が大きくなることもあった。
なのでそれら、不安から来る全てを取り除こうと動く事にした。その不安から私達の元を離れようとされては困ります。ナナちゃんの為にも気にかける
誰もいない広場に布を敷き2人で座る。防音を施し万が一大きな声を出しても平気にする
「だんだんと季節の変わりを感じるようになりましたね」
何だかんだで月日は経っているとはいえ、まだまだ寒い私達の世界のこのドスティアード王国は四季がありまだ冬です。とはいえ月が過ぎれば季節もゆっくりと変わっていく、仮の村を出たのは1月半ばでした。
移動に多くの時間を掛けていたとはいえ、移動途中の村や町での休憩に日にちを使い、何だかんだで3月の…ってそんな事はどうでもいいですね。
「そうだなそう言えば南の方から来たなら一気に寒く感じたんじゃないのか?」
「?ああ、そうですね、そうでしたね」
ある魔法を勝手に使ってたので忘れてました。
「魔法か何かで調節できるのか?」
「ええまあ、エアーコントロールで微調整はしてますね」
といっても軽くですよ、季節は感じたいのでね
「この際だから聞きますがフランメは…死にたいと思ったことはありますか?」
「……死にたいと思う事はなかったな、それよりも何で産まれて来たのかと思う事が何度もあったな」
「今は?今は…どうですか?未だなぜ産まれたなどと思いますか?」
色々と聞いていく
「…産まれた意味など考えている暇はなかったからな、どうすればお前達の役に立てるのかとは考えるが……前世ザハレグス様相手にして、烏滸がましい考えだよな」
「……そうですね。人が人の役に立つことを考える時点で烏滸がましいですよ?」
「ぐ……」
フランメ的には捨てられると言う考えはどんな言葉をかけられても拭えないことであり、大丈夫と思っても不安は残るでしょう。まあ捨てませんし、戦力外や足手まといでも鷹と苗木の傭兵団で雇い生活の安全は確保させてもらいますが…
そもそもですが、フランメの考えていることに間違いがあります。
「フランメ」
「ん?」
「役に立つとか立たないとか、考えないでください」
前も言った言葉、実はまたというか何度でも聞きたくて言っているのか…
「私は言いましたよね?」
不安にかられているときは人恋しくもある時、抱きしめられてかけられる言葉は意外と重い、潔癖でなければ人の体温は安心感を与える
なのでフランメをギュッと抱きしめる
「フランメが居る、それだけでいいと言いました」
「うん…」
「それでも不安なら、くだらない事なんか考えずに、あなたの幸せを探せばいいんです」
「……『ふるふる』」
胸の中でフランメは首を横に振る
「何故ですか?いいんですよ?」
「恩がある、返しきれないほど」
………はぁ〜、くだらない
「馬鹿ですか?何も持たないあなたが私に何を返せると?ナナちゃんに何を返せると?」
「…それは、今は何も……返せないけど」
「では聞きます。あなたは、どうしたいのですか?どうなればあなたは満足して、その不安を消してくれるんですか?」
「………もう、捨てられたくないんだ、待ちたくないんだ誰も帰ってこない場所に居るのは嫌なんだ」
あーーー成る程、家では帰ってこないもしくは帰ってきても親としての行動をしない母親、期待して捨てられた。それだけではなく心の支えだった祖父も失った。
居るだけでは不安か…何かしてないと不安で仕方がないんだな…
とはいえ悪夢を見て起きたから、今は愚痴を不安を言葉にしてぶつけてもらっているだけなんだけどね。
有言実行中です。ぶつけてもらって受け止めて安心させている最中です
「何度でも言いますよ、フランメがいるだけでいいんですよ、捨てませんし、フランメが嫌だと離れようとしても絶対に離しませんよ」
「う、うう”……アリシア…ありがとう」
……………コレで今日は朝まで眠ってくれますね。
しかし、決まった時間に悪夢で起きる。何かあの時間帯にあったのでしょうか?
考えられるのは祖父さんでしょうか?
死んで物音がしてあまりにうるさく様子を見たらあらビックリ、ゾンビになってましたと
もしそうだったらトラウマでしょうね…
「……………」
「………すぅ…………………すぅ……………」
よし、眠りましたね
フランメを部屋に運んで布団に寝かせる。
「…………アリちゃん?」
「はい、起きてしまいましたか?」
「ま………ね、フランメちゃん。また、うなされてるようだけど解決しそう?」
「無理ですね」
「無理かぁ…」
「現状はですよ、義足を手に入れて日常生活が出来るようになれば少しはマシになるでしょう何にせよ時間が必要です」
「……時間かぁ…じゃあどうすることも出来ないか」
そう言うと布団を被り直し、ナナちゃんは再び眠りについた。
「………頼みますよ、みつぐさん。趣味や閃きのままに開発していないことを祈ります。カタログ受け取るのはちょっとだけ不安が大きいですね」
とはいったものの、暗い外が見える窓に映る私の顔は笑っていた
「いけないいけない、不安を感じているのに笑うとかヤバい人ですよ」
頬をもみもみして笑みを消し、私も布団を被り朝まで眠るのだった
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ナナ「今回はなんかある?」
アリ「……特にはないですね。では、1度改めて
私の父親グライド、産みの母アリーナ、もう1人の母ユナルテ、妹のロティシナ、義理の妹フォルミアが私の家族です」
フラ「ん?そうなると私のアレは一夫一妻何だな」
アリ「そうですね。ではナナちゃんどうぞ?」
ナナ「えっと、パパがトラビト、産みのママがネーナ、あとイリーナママとスーナママがいるんだぁ」
フラ「おお、共婚者が3人なのか生活は豊かそうだな」
ナナ「うん、そう言えば割と魔導具をポンポン渡されていたね」
アリ「今思うと使い捨て魔導をかなり渡していた事を考えると資金に相当余裕があった証拠ではありますよね…」
フラ「羨ましいな…」
アリ「共婚者の数が家庭の豊かさを増す証拠ですね」
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でわでわ、また来週投稿出来るように書きます




