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心欠け騎士、TS転生し二度目の人生を〜心を知れて幸せです〜  作者: きよわわ
アリシア 10歳編

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119.依頼は

お父さんとお母さん達へ


誰かに何かを知ってもらうということは、少し難しいのですね。知ってこうなってくれたらこういう方向性に進むようになってくれればなどとわがままを思っても最終的に本人の性格が行動を決めます。

私は…お父さんとお母さん達にとって良い子でしたでしょうか?

                 アリシアより

グライド「問題はない、健康で元気で優しければ」

アリーナ「他人に対して冷たくはあったけど身内には優しかったわ」

ユナルテ「賢いしそこは割り切っていたのだろう、問題はないな」

***アリシア***


「ここが現場かぁ」


 そんな殺害現場みたいにしみじみ言わないの


「ナナちゃん、こっちこっち、そっちの獣人が焦げた跡はどうでもいいですからギルドタグを受け取りますよ?」


「うん!」


 ナナちゃんはくっきりと人の焦げた跡がくっきり残っている場所をもう一度ジーっと見たあとこっちに来た


「あんなに残るもんなんだね!」


「そうですよね、意外と残るものだとは驚きです」


 あの異世界人の世界の道具、テイザーガンでしたっけ?

 アレをこっちの世界の魔道具で再現したもののはずなんですが、床が焦げるって、加減…間違ってませんか?


「大丈夫かな?」


「まあ、大騒ぎにはなってませんので、生きてはいるんでしょうね」


「………いいかな?」


「あっはい!」

「ああ、すみません待ってくださっていたのですね」


「では、お2人ギルドタグをお渡しします」


 カウンターに置かれるギルドタグ


 今表に、なっている方には


 アリシア・グライド 女

 冒険者F 傭兵F


 と、書いてあります。裏側、もう片面は何も記入されていないのでツルピカの状態です。

 今は無記名ですが、パーティーが決まるとパーティー名が小さく書かれて、団に所属すると団の名前が記載されます。


 私とナナちゃんは何処にも所属どころかパーティーも組んでいない状態なので無記名なのです


「…表記されてるからこっちが表?」


「……」


「ねえ、アリちゃんどうなの?」


 え?


「私に聞いていたのですか?」


 声をかけられたのでナナちゃんを見ると、顔が私の方に向いていて目も合いました


 ナナちゃん。眼の前のカウンターに受付嬢さんがいますよ?ギルド員さんです。しかも新人受付や依頼受付です。


 つまり、ギルドのことを全く知らない人や新人に分かりやすく説明出来て、優しい人が採用されているのですよ?


「受付嬢さんに聞いてくださいよ…」


 受付さんを見ると色々と書類に記入していた。


 ああ、ナナちゃんは気を使ったのですね、偉いですが私が分かっている前提で聞くのもどうかと思います。


 私は私で、ザハレグスの時から違いが有るのかどうか、改めた部分はあるのか、廃止になったものはあるのかどうか、変わったことがあれば知らなければいけません


「むぅ…わかったよ、受付さん。コレってどっちが表なのかな?」


「はい…えっと特に決まっておりませんが、基本的には名前の書かれている方は、町の出入りや依頼を受注される際の確認などで見せていただくこととなります。」


「町の出入りや依頼受注…」


「はい、アチラの…」


 受付さんは立ち上がり、右腕を指先まで伸ばしある方向へ向ける


「朱色看板が傭兵受付で隣にある茶色いボードが傭兵さんへの依頼が張り出されています」


 朱色の看板の下にいる。受付さんが手を振ってくれたあとにコチラですと言わんばかりに両手で私達からは左側ですと教えてくれる。ボードには人が2、3人ほど居るんですが、受付には誰も来ていないからと自由ですね


「それでアチラの深緑の看板が冒険者用でその隣のボードが」


「冒険者用のですね」


「はい、その通りです」


びっしりと紙が貼られています…行方不明者の捜索依頼なんでしょうかね?


「ふむふむ、じゃああの買い取りって書いてある看板はそのまま買い取りで、2階は?」


「2階は商人ギルド用になってます。詳細をお知りになりたいのであればギルド登録をして、商人ギルドの方でお聞きになって下さいね」


 商人ギルドは決まりが細かいですからね。説明が面倒なんですよね…


 というわけではなく、商人ギルドは管轄が違うという部類です。一緒の建物なのは、依頼以外の素材が買い取りに出された際に即座に素材の扱いを決めるためです


 その為、いつも受付の人以外にも人がいまして、その人達は待機している商人の家のものです。


 買い取りに出されたものは、ギルド職員とその待機人がいればその人達にもしてもらうこともありますし、珍しい素材の場合オークション回すかどうかも相談なされるそうです


 私が知っていることは、これぐらいですね


「パーティーに誘う際に見せたり、団のエンブレムを刻んだり魔石を埋め込みエンブレムを浮かび上がらせて見せびらかして誘うとかですかね…」


 …浮かび上がらせて見せびらかすとか


「パーティーのお誘いはともかく、有名な団じゃなくても見せびらかして需要あるの?というか浮かび上がらせることとかできるんだ」


「…自慢したがる人は一定以上居ますし、ちょっと団のランクが上がると『このエンブレムの団を知らないだと?モグリだな』とかアホがいます。なので温かい目で見守るか、絡まれた際にはノリに丿ってあげてくださると直ぐに解放してくださいますので、知らないなどの言葉を避けていただけますと職員の手を借りずに穏便に済みます」


「いたんだ…」


「ええ、時々いるんです。エンブレムを見せびらかして職員が対応が変わることなどありませんし、報酬額変わるなど絶対にありえませんからね?」


 エンブレムはそもそも所属している団を記載しているだけであり、万能ではありませんので報酬にプラスするボーナス効果なんてありません


「それに有名ではないランクが上がったばかりの団等、誰が知るものですかって話ですよね?なのであなた方も団を設立した際には、そこを留意しておいてくださるとありがたいですね。それとエンブレムを浮かび上がらせるのは団に加入の際に追加料金銀貨1枚で受け付けています」


「はーい、覚えておきます」

「はい」


「ところでさ受付さん」


「はい」


「本当に対応変わらないの?ちょっとはさ、変わるんじゃないのかな?」


 コラコラ、ナナちゃん受付さんを困らせないの


「そんな事はありませんよ!」


 人差し指だけを立ててゆらゆら揺らす。受付さんは自慢げに言う


「私はこう見えてプロですよ!この受付カウンター担当になって30年のベテランです。有名な団が来て見せ付けられたとしても対応は変わりませんよ!」


 若時に入ってからではなく、担当になって30年ですか…部署変更などもあったでしょうし、ギルド職員歴で言わなかった部分には他の職に就いていたんでしょうね?


「へー、じゃあ…アリちゃんちょっと貸して?」


「何を?」


「ブローチ」


「………」


「どのみちさ私もアリちゃんも、所属はそこにするでしょ?」


 それは…そうですが


「約束は守るという意味でもね、私は既に刻んでおきたいんだ」


キリッと真剣な顔で言うナナちゃん


 入団は学園卒業後の予定でありましたが…まあ、良いでしょう


「わかり…ましたが、その団の団員の人がいないと登録出来ません」


「本人じゃダメ?」


 本人ってナナちゃん。証明する方法が……なくはないのですが


「アインさん!」


『スタッ』


 ナ……ナナちゃん。アインを、護衛を都合よく呼ばないで下さい


「これでOKだね♪」


「!?」


『コト…』


 アインはサッとエンブレムブローチ置く


 本当にいいのかなぁ?と思うもののアインが既に出したため諦めましょう


「……………………」


「受付さん?受付さーん?」


 ナナちゃんは受付さんの顔を覗き込んだ


「しっ…死んでる」


 バカなこと言ってないで起こしてあげて下さい


「はいはい!ちょっと変わりますね!」


 奥から来た人が私達の受付さんを突き飛ばした


「えっと…っ!?こっ…こちらの団に所属している方の推薦であなた達新人がこの団に入るのですか?」


『コクリ』

「そうだよー」

「…………はい」


「わ、分かりましたでは、タグに書き込みますのでタグを一旦お貸しいただいて、少々お待ち下さいね」


 新しく来た受付さんは、引きつった笑顔を浮かべつつも乗り切ったのだった


「とりあえず入り口付近の壁に移動しましょう」


 少しばかり人が増えてきましたので移動を提案


「うん」

「はい」


 私の言葉にナナちゃんとアインが頷き返事をする。アインは私達が鷹と苗木に入る証明なので、しばらく一緒です


「アイン、何故呼ばれてでてくるのです?」


「…それは、主が一緒だと嬉しいからです」


「一緒がいいよね♪」


「………はぁ……まあいいですか」


 諦める私、決定事項となったならば、言及する意味もないですか


「あの!」


 大きな声というわけでもないけれど、子供特有の声で誰かに声をかける声が響いた為、私の目線がそちらへ向く


「必死な声だったね…」

『コクリ』


 ナナちゃんも、当然アインもそちらを向く


「お願いです!無理は承知でお願いします!どうかどうか僕の宝物を探してください!」


 宝物?あの様なボロを着た子の宝物なんて


「はい、受け付ける事は可能です文字は書けますか?書けないのであれば、代筆も可能ですが」


「えっと字は書けないので代筆を…」


「はい、では内容を伺いますので別室へー」

「あの!これで…依頼できますでしょうか?」

「……」


 …銅貨3枚、見た目からストリート・チルドレンなのはわかっていましたが銀貨1枚も無いとなると


「……………えっとですね」


 少し固まっていましたがどうにか復帰した。さすがは受付です


「……依頼は出来ます。ですが冒険者の方が依頼を受けるかどうかは別です。なので心やさしい人が現れるまで、ただ待っていただくだけです」


「そんな、じゃあ……あの人は………」


 宝物は、人でしたか…


「………アr」

「駄目ですよ」

「リ……でもぉ」


 直ぐ様駄目といった私に、縋るような声を出すナナちゃん


「はぁ……優しいのは、ナナちゃんの良き点ではありますが、今この町で起こっている事を思い出してください、そしてアレを見てください」


 私は指で冒険者の依頼ボードを指す。そこには、ボード自体が見えないほどの依頼が貼られていた。それは全て人探しの依頼だけだった


「………さっき見たから分かってるよ、でも…でもさ」


「でも、なんですか?私は当然、鷹と苗木も万能ではありませんし、数も無限ではありません」


「分かってるよ」


 ……私の中の常識?辞典が、言い過ぎだとフォローをしろと私に訴えるが私はそれに従う気はない、甘やかすことや気遣う事は、時として必要ないことも私は知っている


 本人の為にも考えさせる事が必要ですし、何より可愛そうだからと、困っているからと、誰も彼もに手を差し伸べる程の優しさは、ナナちゃん自身を苦しめる


 割り切る、取捨選択をさせる事をナナちゃんは、出来るようにならなければならない


 奥歯を噛み締め、拳を強く握るナナちゃん


 ……はぁ〜


 駄目だな私、ナナちゃんに割り切る必要性を知ってもらわなきゃならないのに…


「辛かったら、私を責めて良いのですよ?」


 小さくとはいえ、言ってしまった


 だって、依頼なんて都合よく誰かが受けないと意味は無い、全てが全てタイミング良く依頼が出たり、依頼人にとってタイミングよく最高の人柄と能力を持った人なんて居ない、場合によっては今更なんてこともあるし依頼を受けるのがもう少し早ければなんてこともあった


 ゴブリン、ウルフ、オーク、村人が見かけてギルドに依頼、貼られていた期間が長く、誰かが受けて向かったときには手遅れ…なんてこともあった


 そんな時に毎度自分を責めてしまう優しさなんか、ナナちゃんには持ってほしくない


「……いよ」


「?」


「アリちゃんを責めたりなんかしないよ、アリちゃんがそう言うなら、理由があるんだよね?」


 私は頷き先程の『依頼なんて…』と言う私の考えとザハレグス時代にあった間に合わなかった事を話した


「そっか…確かに、そうだね…」


 ナナちゃんはどう思っただろう?

 薄情と私を思っただろうか?


「ええ、ですから必ず助けられると思わない事と?全てを救えるなど慢心しない事です」


「……うん」


「アリシアさーん、ナルシェナさーん。記載が終わりましたのでギルドタグを受け取りに来てください」


 気絶から復活した受付嬢に呼ばれたので移動するも、落ち込み気味のナナちゃんがすっごく気になります。


「っ!」


 気晴らしになるような依頼がないかと、チラッと依頼ボードを見ると重なって貼られてしまっている依頼を発見


「ありがとうございます」

「その、お手数おかけしました」


「いえ、これが仕事ですので、しかし…鷹と苗木のエンブレムは心臓に悪いです」


「そうなの?」


 えーっと依頼内容は


「主様?」


 なになに…ああ、老い時の人の家の身辺整理の手伝いですか



『〜身辺整理依頼〜

 ●ランク 冒険者G〜

 ●目的地、M地区、1-3、にある黄色い屋根お家

 ●移動方法、通い、または泊まり込みも可能です

 ●最低拘束日数、1日

 ●報酬、日給、銀貨1枚〜

 ●募集人数、複数人〜お1人様でも可

 ●要望、老い時とは言え女性です。そのため女性であれば嬉しいです

 ●備考、身辺整理中に欲しいものがあれば言ってください要相談の上でお渡し可能かもしれません』




 これなら、優しいナナちゃんには気晴らしになるかもしれませんね


 私は依頼の紙をボードから外してナナちゃんに見せ…


「鷹と苗木ですよ鷹と苗木!あの!英雄ザハレグス様の作ったという鷹と苗木ですよ!」


 ただの傭兵団と言っても過言ではないのですが…


「他となにか違うの?」


 ナナちゃんが受付嬢に聞く、私も同意です。他となにか違いがあるのでしょうか?


「そりゃもうっ!まったく違いますよ!」


 そう力強く言った後に止まらない語りに思わず紙を落としそうになりながらも静かに聞き流『パンッ』


 それは、冒険者だけではなく暴走した仲間にも使用するんですね…


「ひっ!?」


「せっ先輩!お客様にご迷惑をかけては駄目です!」


「ちょっま!?」


「えいっ!」


「ミミちゃバババババババババ!?」


 容赦ないですね。まあこっちとしては語りを聞かなくてすみましたけど


「ナナちゃん、ちょっと」


 私はナナちゃんを呼んで、依頼書を見てもらうことにしたのだった

ナナ「アリちゃん」

アリ「はいどうしました?」

ナナ「あれ欲しい」

アリ「後輩の受付さんが使ったテイザーガンですか?」

ナナ「うん、使えそうじゃない?」

アリ「そう…ですね。ゴブリン程度には効きそうですが、他の魔物には不意打ちでない限り当たらないかと、あとは複数戦には向きませんね」

ナナ「あ……そうだね」




でわでわ、また来週投稿します

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