Early Winter
店先から始まる、冬のはじめの心温まるショートストーリーです。
今日も僕らは、店先で寒い夜を過ごすのだろう。
そんなことを考えながら、閉店時間を待っていた。
すると、眼鏡の女性がやって来た。
十一月にはまだ早い、ロング丈のダッフルコート。
ぐるぐる巻きのマフラー。
ショルダーバッグのストラップに、長い髪が絡まっている。
「あいたたた」と呟く仕草が、ちょっと垢抜けない感じ。
ふわっとお酒の匂いがする。
まだ九時にもなっていないのに。
仕事の後に軽く一杯……のつもりが、結構進んだのかな。
彼女の瞳が「きれい」と言っている。
視線の先には、僕らよりもひとまわり大きな花束。
でも、少し考えてーー彼女が手にとったのは、僕らのほう。
小さなキッチンには、僕らがちょうどいいみたい。
「いっしょに家に帰ろう」
ぐるぐる巻きのマフラー越しに、弾む声が聴こえた気がした。