表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

第7話

 この7日間でローナとノアの間には明らかな変化が見られた。2人は必要以上に接触しないようにしていた。会話も事務的にものを並べるだけで、世間話をする隙はほとんどなくなった。


 ノアはダニールの荷物をまとめる手伝いをするなかで、もやもやした気持ちを抱えた。ローナは必要なガウンや靴を残して、他の衣類は来たときと同じように、紋章が刻まれた箱に入れていく。その顔は仕事に没頭していて、ノアを見る余裕もなさそうだ。


「ノア」ダニールはノアのとなりで顔をほころばせる。


 2人の関係だけではなく、ダニールとノアもぎくしゃくしていた。ノアのほうが一方的に避けていると言っていいのだが。


 あと一日でダニールは行ってしまうのに、ノアは自分に生まれた気持ちを受け入れられないでいる。ローナの言葉をしみじみ感じながら、自らの秘密と、身分の差という絶対的なものを考えて身動きがとれなかった。どちらも足かせのように重いのだ。


 ため息を吐くとダニールに心配されてしまう。いったいどうしたら解決できるのだろうか。ダニールがいなくなったとき、ノアとローナの間は今まで通りに戻れるのか。答えはなかった。


 昼が過ぎ、晩餐が済めば、ローナは帰り支度をはじめる。話し掛けるならこのときだけだとノアは決めていた。屋敷の入り口を出たところで後ろから声をかけた。ローナが振り向く。


「何か?」


「あのさ」言い渋るノアに、ローナは苛立ったように髪を耳にかけた。


「早く話してくれる?」


「はじめて会ったときのこと覚えてる?」


「……覚えてるわ」


「僕が全然話せないものだから、ローナは怒ったんだ。『あいさつもできないの!』って」


「そうね。だって」


「でも、うれしかった。施設以外で女の子と話せたのははじめてだった。あのときから僕はきみを友達だと思ってきた。かけがえのない友達だと思っているんだよ」


「わかってるわよ、そんなこと。けどダーナ様が現われて、あなたが奪われるかもしれないって考えたら、友達じゃ嫌だなって思ったの。だから、ちょっと意地悪しちゃった。身分とか性別とか、関係ないのにね。何が言いたいのかって言うと……ノアのしあわせを祈ってる」


「しあわせ」


「そうよ。わたしは友達……なんだからあなたの背中を押してあげる」


 ローナはノアの肩を掴んで、反転させた。少しの間、背中に頭を預けたあと、「それじゃ、また明日」とポンと叩かれた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ