異世界転生&チートと聞いて、調子に乗った結果こうなりました。確かにそう都合良くならないのが普通だと死んでから思いました。
俺の名前は、山田 太郎。安直な名前で、すまないな。きっと俺の名前を考えた、どこぞの誰かが。
「ネタの短編で、いちいち小難しい名前を考えるのが面倒くさい」
そんな、ふざけた考えの元、こんな名前になったのだろう。
こんな名前でも、別にイジメに会ったりはしてないからな!むしろ、ちょっとクラスで人気者だったりするんだからな!
そんな俺だが、現在進行形で、前代未聞の事態に遭遇している。神様とやらの手違いで、同姓同名で誕生日も同じ別人に間違われ、死んでしまったのだ。
死んでしまった事も大変なのだが、俺以外にも、山田太郎なんて名前の同じ年の奴が居た事に驚きだ。俺はお前に間違われて死んでしまったが、お前は俺の分も、山田太郎として安直な名前と言われ続けながら、強く生きて、幸せを掴んで欲しい。
よくある設定で、神様に謝られた後、異世界とやらに転生させてもらえる事になった。転生先は、剣と魔法と魔物のファンタジックな世界らしい。
そんな世界に転生する俺の為なのか、神様自身のミスの帳消しの為なのか、理由は定かではないが、何やら便利な力を授けてくれるらしい。全ての魔法を使える魔法の適性と、どんな武器でも的確に使える能力と、地球での記憶に加えて、アカシックレコードから、制限なく知識を引き出せる能力と、異世界言語の翻訳機能付き。まさに、至れり尽くせりなチート満載転生だ。これで、俺ツエー!&俺スゲー!が、やりたい放題だ。間違いで死なせてくれて、ありがとうと、こちらが神様にお礼をしたいぐらいだ。
そんなこんなで、新しい人生を謳歌する為に、生まれ変わった訳なのだが、俺はどうやら、地方の小さな領土を治めている、子爵の次男として生まれたらしい。父親は、イケメンで背も高く。母親は綺麗で若い。兄も見るからに、可愛らしい子供。それらを踏まえて見ても、俺も両親の血を引き、兄と同様に、将来はイケメンになり、女の子にモテモテになるはずだ。
若い母親の、プリプリな、おっぱいに吸い付くのは、タマラン。流石に、母親相手に欲情はしないが、これはこれで役得だったりする。
異世界言語翻訳の能力により、俺は生まれた瞬間から、言葉を理解し、話せるようなのだが、如何せん体は、赤ちゃんなので上手く舌が回らず、喋る事が出来ない。早く「ママ」と言って、母親を喜ばせてやりたいものだ。毎日毎日、口を動かし、舌を動かし「アウアウ、パブパブ」と話す為の発声練習を繰り返したおかげか、生後半年程で、普通に話せるようになった。
今日は、以前から計画していた、母親に「ママ」と言ってあげると決めていた日だ。優しい母親だから、きっと涙を流して喜んでくれる事だろう。朝の、おっぱいの終わりに、背中を叩いてゲップを出させてくれた母親の手の中から、ベビーベッドへと移された時に、俺はついに、あの言葉を母親に投げ掛けた。
「ママ…ママ」
そう言ってから、キャッキャと母親に向かい笑顔を見せてあげると、母親は数瞬、言葉も無く、信じられない物を見たって顔をしていたが、俺が言葉を話した事に気付くと、満面の笑顔を浮かべ、俺を抱き上げたまま、クルクルと回り喜んでくれた。
最高の笑顔が見れて、俺もとても幸せな気分になった。その後、母親からの話を聞いた、父親と兄も俺のベッドの横に立ち、自分の顔に指を指して「ほら!パパだよ、パパって言ってごらん」だとか「スチュアートだよ!兄ちゃんだよ!」と、自分達の事も呼んでくれと催促を始めた。
兄貴よ、流石に赤ん坊に「スチュアート」と呼ばせるのは、無理があるだろう。まぁ……言える事は言えるのだが。俺はそれぞれに向け。
「パパ!」「にぃちゃ」と呼んであげた。二人とも非常に喜んでくれた。やって良かったと思う。その後、俺は生後1年を待たずに、一人で歩けるようになり、言葉も普通に話せるようになった。
一人で歩いた時も、家族は、自分の事のように喜んでくれた。普通に会話が出来る程に話せるようになった時には、兄貴は、これで俺と、お喋りが出来ると喜んでくれた。両親も喜んでくれたが、何か違和感のような物を感じた。きっと、気のせいだろう。
その後も俺は、スクスクと育ち、3才になる頃には、兄貴との剣の稽古で圧勝した。父親はそんな俺の事を、天才だと言ってくれる。
俺はもっともっと家族の喜ぶ顔が見たくて、神様から授かった能力を、遺憾なく発揮した。領地の東にある深い森には、昔から多くの魔物が住み着き、近隣の村や町に甚大な被害をもたらすと聞きつけると、その森まで魔法で飛んでいき、森を魔物ごと焼き払って駆除をした。
不作で困窮する領地の為に、治水工事を行い、農地の土壌を知識を使い改良もした。
知識を引き出せる能力を使い、農具の開発もしたし、馬車に取り付けるサスペンションも開発した。
隣国が攻めて来た時には、家族や領民を守る為に、先頭に立ち、大規模魔法で領地を守る事もした。
そして、領地は目覚ましく発展していき、国で一番の豊かな領土となった。
これで、家族も領民も、いつも笑顔で暮らせるだろうと思う。この能力を授けてくれた神様には感謝してもしきれないだろう。
なんて、アホみたいに喜んでた時期もありました……。
現在俺は、腕に魔法封じの腕輪を嵌められ、首には行動を規制させる、奴隷の首輪が嵌まっている。
ある朝、眠りから目覚めると、この腕輪と首輪を着けられていた。
状況がまったく理解出来ない俺に、両親は言った……。
「お前は、俺達の子供じゃない!」
「悪魔!私の本当の子供を返して!」
俺は、そんな言葉が、優しかった両親から発せられる事に驚愕し、何も言い返す事が出来なかった。兄貴を見ると、明らかに顔に黒い笑みを浮かべ「ざまあみろ」と今にも言いそうな顔をしていた。
そのまま、領主の住まいのある城の地下にある牢屋に入れられた俺は、冷たい石の床に直接、寝転がり、どうしてこうなったのか?に思い耽った。
家族の笑顔、領民の笑顔が見たいが為に、良かれと思い色々と行って来たのに……。
そして、牢屋から出される事も無く、3日程経ったであろう日に、父親が牢屋へとやって来た。誤解が解け、牢屋から出してもらえるのだろう。と勝手に勘違いして、喜んでいる俺に向けて。
「悪魔!お前の公開処刑が明日、行われる事と決まった、よくも俺達の本当の子供の魂を喰らい、今まで騙してきたな」
そう言った父親の顔は、本当に子供の仇が討てる事に喜びを隠すことなく、現していた。
最後の夜、眠れる訳も無く、考えてみると。どうやら俺は、かなり調子に乗って、やらかしたようだ。
1才に満たない赤ん坊が、普通に話をし。子供の内から、色々と能力にかまけて、領土の改良や開発もした。数万匹の魔物が住む森を、森ごと焼き払い。攻めてきた数千の騎士や兵士を、瞬時に消し飛ばす。
そんな子供は、何処にも居ないだろう。まったく子供らしくない。そんな異物は、いくら便利な存在だったとしても、受け入れられる訳がない。
やり過ぎた!調子に乗ってました!チートに任せて考え無しでした!これからは、それなりに子供らしく生きます!神様助けて下さい!
夜が明け、朝が来るまで、必死に祈り反省の言葉を言い続けていた俺の耳に、俺を処刑場へと誘う、死の足音が、コツコツと薄暗い牢屋に響き渡った……。
俺の今回の死因は、首吊り&槍で串刺しだったようだ。今、俺に新たな人生と、使いようによっては、便利な能力を授けてくれた神様の前に居る。神様は、心底から呆れ切った顔を俺に向け。
「そこまで、考えなしのバカだったとは……我の見立て違いだったかのぉ……普通に考えたら、そんな赤ん坊や子供が居たら、同じ人間だと思う訳ないはずなのじゃが、少し考えれば、解る事過ぎて、言葉にもならんわい……」
そう俺に告げた神様は、俺の魂の行き先を告げた。
「お前のような考え無しのバカを、また人間として、生まれ変わらす訳にはいかん、お前は転生する事も無く、地獄に居れば良い」
俺は、転生先で、取り返しの付かない程のバカな行為のおかけで、死んだ後も永遠に苦しむ事になるようだ。
「ミスでお前を死なせてしまったのだが……今思うに、正しかったのかも知れんの……」
その神様の言葉を最後に俺は、永遠に苦しめられる地獄へと旅立った。