空を歩く彼女の蜃気楼
「あれ」
彼女は手を伸ばす。届かない。なぜ
「遠いからかな」
彼女は歩きだす。手が届くように。
「いつになったら届くんだろうね」
彼女は空を歩いていた。ずっと。
「わたしってなんなんだろう」
瞬間彼女は霧散した。いなくなった。
彼女の行方はわからない。どうしたんだろう。彼女はいなかった。
空をみてるとそんなはずはないとは思うが。いつも探してしまう。彼女がいるような気がして。ただの思い込みで。いずれ消えてしまうのかと思うと哀しくなった。
彼女のことは写真がよくしっている。ただ当たり前にだれかが撮った楽しげな写真のなかでうっすらぼんやりと存在しているのが彼女。
彼女に顔はなかった。少なくとも写真のなかでは。
僕は振り返る。彼女のこと。彼女の重み。
僕は感じていた。うっすらぼんやりだけど。いつも目の端で追っていたから忘れるわけがない。 確かに彼女はいた。だから幻なんていわないで。
卒業アルバムを始め。僕たちの学年は呪われていた。誰も知らなかったけれど。写真と相性が悪かった。
それに気づいたのは卒業から二年後。なんでわからなかったんだろう。どうでもよかったの? そこに写る女生徒はだれもしらないどこかのだれか。そんなわけない。おかしいよ。
最初はいなかったんでしょ。二年後にどこかからあの場面にはいって。わたしたちの記憶を揺さぶった。幽霊、悪霊。そうらしい。
「わたしのことだれもしらないって」
「そう、みんながね」
放課後の教室、午後二時。日と空気が透きとおった空間に彼女はいる。
「なぜかしら。こんなにも自傷しているのに」
ペットボトルで手を殴っている。
「そんなことやめてよ」
「なぜ」
彼女の左手の振りは更に激しく。
「痛いよそれ」
痛くないわ。ペットボトルは僕の顔へ体当たり。
「なにするの。あぶないじゃないか」
「痛くないわそれ」
「そんなわけ…ないだろ」
試しに地面に落ちたペットボトルで腕を殴ってみる。
ボンッ。芯に響く。なかに鉄でもはいってるの?
「なにこれ…痛いじゃないか」
「あなた、殺すわよ」
彼女は軽蔑した目でこちらをみている。
「そ、そうじゃないんだ」
「殺す殺す」
彼女は机を放り投げてくる。駄目だそれは反則だ。
「物を使うのは反則だ」
「うるさい早く死ね」
僕は教室のドアを開け一目散にロッカーへと向かう。背後では僕らがすごした教室の断絶魔。
「工事中じゃないんだぜまったく」
そういって僕は曲がり角に差し掛かったところで足をとめ振り返った。
叫び。机とイスと床と。どんどんつぶれていく。グッチャグッチャになる。教室なんてもうない。彼女が壊したから。
僕は立ち尽くす。それ以外になにが? 僕にはわからない。ただそれぐらい。
「本当はわかっていたんでしょ」
なにが
「わたしがここにいないってこと」
なんで
「ほら触れてみて。わたしここにいるよ」
いやだ
「やっぱり」
なにが
「わたしのこと信じていない」
そんな訳あるか
「じゃあ触れてあげる。キスしましょキス。わたしあなたとキスしたい」
そ、そんなこと
「あなたは嫌? わたしとキス」
そういう話じゃないだろ
「じゃあどういうはなし? ビスケットがひとつくちはいる。そういうはなし?結局は」
なにいっているの
「握手ならできるよね」
おなかへったよ。さっきのはなしきいてたら
「あなたのこときらい」
「なんで」
「そういうところが」
そらは晴れ。雲はあおさんにぺったりのりづけ。
僕は花壇の傍。彼女を探していた。
なぜなんだろう。そんなこと忘れたはずなのに。
彼女は歩いてる。そらを朗らかにステップ踏んでリズムに乗って。
僕は手を振った。 なんの反応もない。小春日和ってやつ? よかった。
「先輩なにしてるんすっか」
牛乳パックくわえ少女現れる。
「なにも」
「お好きすっねそら」
少女はそらを指差す。
「日課ってやつだな。お前のおくちみたいなもんさ」
ちゅーちゅー。
「物好きも物好きも物好きもいいところっすね先輩。早死にしますよ。カルシウムしっかり取っていてくださいよ。わかめもおやつに」
そうやって俺の脇にわかめだけ弁当を置く。
「まあそうだな」
おいしくいただくわかめ。
「今時そらみるひとなんて先輩ぐらいすっね笑っちゃう」
「なぜ笑う」
「そんな希少さゆえオンリーワンな先輩に質問です。なぜあなたはそらをみているのでしょう。ここ重要、テストでるね間違いなく」
脇に置いてあったレモンティーを取る。
「さあな」
「そんなんでいいんですかー。そら伝道師の名が廃りますよ。もう終わりっすねこれはせかいがおわる」
「なぜそうなる」
レモンティーを飲みながら彼女をみていた。朗らかな彼女。
「明日の天気予報ですか」
「そうだ。知っているか」
晴れだったらいいな
雨が降るとあなたがみえなくなるのでいやでした。
「傘がきらいだと雨は辛いわね」
「そういうことじゃないよ。僕は傘は好きさ。魔法のステッキだからね」
ほれっ。グリグリッ。今日はいつもより回っております。
「なにするんだこの野郎」
彼女は水溜まりをぶっかけてくる。僕の服はべちゃつく。
「ああ気持ち悪いよこれじゃ」
「あんたの罪は重い。噛み締めていなさい」
そういって彼女は雨のなか足早に去っていった。長靴にありがちなあのキュッキュっておとが耳に残る。
気持ち悪い。早く着替えたい。ただそれだけだった。
お月様を落とします。そう宣言したあほうはどこにいる。
「ここよ」
彼女はロケットランチャーを肩に載せている。
「無茶だ」
意志に貫徹された目には失礼だがそういう他ない。時にあまりにあほうな暴走にはお灸をすえなければならない。
「あなたこそ真のあほうだ。自らの見誤りをしれ」
そっくりそのままいいかえしたい
「敬礼」
どこにしてるの。自由の女神?
「そういうノリいい加減飽きたわよ。つまり死ね」
月に向かって放った。届くはずない。そうだろ?
着弾
なぜ届く。 このロケットランチャーは仙人だ。間違いない。
「手のひら返す気かこの野郎。目開けろ。次は貴様の番だ」
俺はロケット。どこまでも飛んでいく。
「月面旅行できるんだぜ。よかったな」
もはやなにもかもどうでもいい。どこまでも飛んでいけるなら。
俺は飛んでいった。何もかも忘れて。そして爆発した。木っ端微塵だ。
「よくやった、殊勲だ。金一封だ」
そういう声が聞こえた気がする。気のせいだと思いたい。
考えずにいられない。からだは潰れることを恐れているから。
どうしようもなくても後退せずにはいられない。
「それできみは飛び降りることを決心したわけだ」
そうしないと耐えられないから。衝撃、欲しかった。
「どうだった。感想は? ブログにupした?」
いやそれが…飛び降りれなかったんだよ実のところ。
「死ね殺すクソッタレ」
仕方ないじゃないか。結局そういうやつなんだ。溺れているんだ。よくわかってないんだ。だからこういうはなしをできるんだ。
「どうでもいい」
彼女はいなくなった。
「あなたゆめでしょ。わたししってるよ」
秘密の花園彼女はいった
「わたしのすえもすえだよね。そんなものがあなたとして表れるなんてあんまりね」
花ひとつまみ
「花の匂いってなんか」
目をつぶり
「なにもないよね」
手放す
「実はあなたのこと殺しにきたの」
右手に拳銃かまえ
「ごめんなさい」
ぼくの心臓は潰された。
「そうみたい」
彼女はいった。
「なんで殺すの」
彼女はよろめき倒れる僕を抱えて
「わからない」
よくもわからず殺される。ぼくってそういうものか。仕方ない。
なんでだろう ボコボコ
水槽の奥でわたしは
なにをおもっているの
わからない ていうか特になにも
そういうことか
そういうもの考えていたんだ
なにもおもっていないしわかんない
そういうことを
あれがゆめならわたしはなに?
身体を触る。どこにわたしが。
確かめても消えていって
「嘘…」
そういう言葉も白々しくて。
なにもないのね、全部そういうはなしなのね。
「さようなら」
消えていく。そうすればいつか会えるでしょう。なにに?
「忘れちゃったよね」
ありません。思い違いでしょうけどそういうやつだから。そう。
「明日は洗濯物ちゃんと干そう。そっからだ」
わたしは寝る。今日ゆめみるのかな。そう思いながら。
きょうもまたそらをみている。探している。彼女はどこ
「あれはほし。ちっちゃなほし。希望だね」
昼にもあるのかな。僕にはみえない。
手を伸ばす。掴みたい
「なにしてるんすっか」
牛乳パックなあいつ
「ほしってあるのかな」
ぽかーん。そんなふう
「あほうですか。いやわかってはいますよもちろん」
午後2時の雲と雲のあいだ。彼女の存在
「不思議だな昼にもほしがあるなんて」
そういう理由
「俺も探そうかな昼のほし」
「先輩ってやっぱりですね」
「牛乳おいしいか」
「もちろん」
屋上。フェンスの先。それより向こう、いつかほしと出会えたら。ぼくの願い
彼女のことを説明しなければならない。
手帳に彼女。出来事、色、存在。なにもなかった。
どういうことなんだろう なぜ
わかっていたこと。彼女を目の端でみていただけでそれだけで。
だから。受信。存在。俺の明細。
「やはりいないのかな」
彼女の存在希薄。おれと一緒。
「忘れよう」
記憶。笑ってた。お話に夢中。歩いたり勉強したり。斜め45°彼女の実在。
ライターを点ける。俺の希薄。程度。
「どうしようもない戯言だ」
寝よう。それがいい。
「やっぱりね」
放課後午後2時教室は健在。
「どうしようもないあなたね」
クスクスクス。歪んだこどもの顔
「仕方ないさ。それがおれだから」
殴る。殴られる。このくそ野郎を殴ってやる。
「殴ったことなんてないくせに」
彼女はカッターナイフを
「自分を傷められないの?」
「無理だおれには不可能だ」
バシッ。床を滑っていく。
「あれなら死ぬことはないのよ。それなのに」
怖い。嫌だ。そういうことじゃないんだ。やめてくれ。
「どうするの? 判らないわ」
おれにもわからない。
「傷められないならなにもできないわよ」
わかってるさ。だからおれは
「死ね。このビチクソ野郎」
タコ殴りだ痛い。タコになる。
「必要よ。わたしって好きよたこ焼き」
かじるな痛いやめてくれ。
彼女は消えていく。教室は午後2時は溶けていく。どうして。おれはどこへ
「そういう話もあるね」
キザなひと。トーテムボーイである。
「あのこは僕のうそってこと?」
シェイクシェイク
「そう。いっぱいのきみの存在その役割。彼女はうそを背負ってる」
毒ヘビが首を右往左往
「あまりに密着しずきてわからない。まだそういうものさ」
シェイクシェイク
「どうすればいいんだ」
「生きるしかそれしか」
シェイクシェイク
「俺には無理、厳し過ぎた」
「ならそれでいい」
「なぜ」
「それがあんただからね」
彼はいなくなる「わからない」聞きもせず
俺にはわからない。なぜ。彼女がうそなら僕は
「飛び降りよう」
屋上彼女はフェンスの先で腕を広げていた。
「死ぬの」
おそるおそる。彼女は
「あなたは」と。
どうなんだろう。わからない。
バンッ
フェンスが散らばった。僕と彼女のあいだ。ただそこだけ。
「もう大丈夫」
一体なんだかわからないけど
俺は落ちていた
彼女は手を繋いでいた
彼女はいる 確かにいる
温かい
君っていたんだね
実際どうだったのかな。
「内臓ですね。初めてみた」
興味深そうに眺める学生はいつになればくるのだろう。どうでもいいが。
死体として生きるのは難しい。溢れていくし散らばるしああカラスやめなさい僕はエサじゃないよシッシッ。
「先輩って死んでもそうなんですね」
牛乳ちゃん
「あほうなのもいいですが死体って立場把握しましょうね」
けるけられるとんでいく
「もう十分でしょ。牛乳も供えますから」
内臓の傍に牛乳パック
「一つ聞いていいか」
「いいですよ」
力なんてない俺は死体
「死んだのは俺だけか」
「そうですね」
「ぷぷぷ」
彼女は笑ってる。そんなに可笑しいか?
「あほだあほだあほがここにいる」
ビンタビンタ顔にビンタ。そうするもんでもなかろう。
「あんたってほんとに実ね。協会でも作ってはいかが」
彼女は飛んでいった。健やかなステップ。
「もう君とは会えないの?」
届いたかなんてしらないけど「あんたがあほならね」って。
俺は死んでそれだけで誰もが忘れてただ散らばっていく。存在が食われ蹴られ踏み潰されだれかになっていく。
あなたもわたしなんですよ
聞くなんてしらず過ぎ去っていく
「先輩は悲惨だとおもいますか」
飛び降り現場に牛乳をかけるおばか
「別に。もともとそうだったし」
まだまだかける
「そうでしたね。忘れてました」
盛大に牛乳を浴びる。
「嘘つけ」
なにもできない。死んだ者の立場
「紅の豚でもみます?」
「どうせなか、空なんだろ」
「御名答。残念ながら先輩は紅の豚を観ずに肉体を失いましたからね。ジブリスタッフ一同悲しみに暮れていますよ」
「そんなわけあるか」
パッケージが現場とぶつかる。痛くも痒くもない。
「今夜はブギーバックですよ先輩」
口笛上機嫌。空の牛乳パックを多数残して。
どうしようもないやつだ。俺もだが。
それであなたは救われた?
「なにからさ」
すべてから
「すべて? すべてってなんだよ」
嫌だったんでしょ。いきること。
「そんなこと一度も」
うそつき
「嘘じゃない。甘えてただけだ」
繋がるから。そうでもしないと耐えられなかったんだ。
「そういうひとなのね」
そうだよ。俺のことわかった?
「なんで死んだの」
「死んでないよ。まだ生きてる」
死んだよ。みてあなたの席、別のひとが座ってるよ
「あれは特等席だからね。仕方ない」
あほなの。あんた飛び降りたんだよ。内臓バラバラ無惨な死を迎えたんだよ。わかってる?
「死んだことなんて一度もないよ」
ばか、おたんこなす
「これはなんだい。カウンセリング? ならなぜ逃げる。ダメだろ。捨てちゃいかん」
でも、そんな…
「仕方ないだろ。それが現実ってやつさ」
あなたが可哀想
「大丈夫さ。死んでないから」
意味わかんない
「それでいいよ。十分さ」
しんないから。ひとりでやっててね。
「うん。あんたもな」
火は燃える 燃えるよ
「学校が燃えてるね」
「あたしがつけたの」
サメジママミミは当たり前のように呟いた。そう当たり前。
「ならこれからどうなるかも想像つくよね」
「うん」
拳銃片手に頭を定め
「あなたも一緒に死んでくれる?」
「残念ながら」
バンッ。さようなら
「はてはてどうなるんだろうね」
学校は燃えてる。サイレンは響いて。ヤジ馬だけが傍にいて。
「消火なんて間に合わないな」
消防車は遠過ぎる。ここだってわかってるのかな
「泣いてるの」「学校なのに」
キンコンカンコン、キンコンカンコン。
もうそんな余地ないのに泣くんだね君は。
「殺してあげようか」
自分でなにもできないなら僕がやってあげる。死ね
バキュンッ
「どういう罪になるとおもう?」
どうでもいいよ。しってるから
「どうもどうでもいいことだな。これ」
僕は離れる。振り返らない。ヤジ馬だけが知っている。
燃えている。あの煙を吸ったことがある。不味い。それだけ
忘れない。ただ歩いていくだけ。
死にたもうことなかれ
意味は教えられたけれど忘れた。
あんたが帰ってきても忘れたからどうでもいいよ。そうだろ?
席っていつまでもあるのかね。名前は残っているらしい。知らないけど検索するとみつかる。綴りのなか。どうでもいいばしょ。
ほんとどうでもよかった。
叫ぶ。ウオオオオー。
虚しい。
sexする。紛らわそう。
溺れているだけだ。
消えるはずがない。
忘れたい。忘れたことなんてない。
いつまでも私が傍に。
あなたは死ねません残念ながら。
かしこ
続きってものを考えると億劫となる。なにを語っているのか。わからない。
「わたしを創っている最中だもんね」
彼女だ。あまりに不出来な彼女。足りなさすぎる。
「自慰をするのにも大変だわ。ほらまた崩壊した」
動く度にバラバラ。わたしの技術を結集させてもこの程度である。
「そういいながら楽しんでいるじゃないか」
「まあね」
内臓が剥き出し顔も右目ぐらいが認識できてあとは口四分の一ぐらいか。それ以外はなんともいえん。わからん。
「やってらんないのよ実のところ。生きにくいったらありゃしない」
彼女また動く。
「夢中だね」
「うるさいわ殺すわよ」
そうやって追い出された俺。
ノックをするが反応なし。身体見せてよ。そういうと「死ね」とレスポンス
「俺は君がいないとどうにもならないんだ」
しってるだろ
「わたしは草薙素子になりたいの。あんたなんかに構ってらんないわ」
企業のネットが星を被い、電子や光が駆け巡っても
国家や民族が消えて無くなる程
情報化されていない近未来
わたしの一角に横たわる
奇妙な企業集合体国
彼女
「いや違うだろ」
遅かった。彼女は消えていた。
またか。
あまりに掴めなく俺もまたそうなっていって。このまま溺れていくだけ。
「乾杯」
どうしようもない。
「僕も」「わたしも」実体なんてない。
わたしたちはただ溺れているだけ。
「教えてかたち。器をみせて」
「ご覧の通りでございます」
だされた器はちいさすぎて。
「なにこれ水一滴もはいらないじゃない!!」
パリーン。滑り落ちた。
「わたしにはわかりません。器がわかりません」
狼狽するかたち。
「どうしたの! なにがあったの!?」
「わたしには無理でした。器なんて無理でした」
パリーン、パリーン。割れていく。かたちが崩れていく。
「どうかわたしを器につかってください。それがせめての…」
そんなこといわないで。聞く間もなく。かたちは器になった。
「一体どうしたらいいの」
「もっていくしかないな」
「はい?」
「僕たちには器が必要だ」
「そんなこといったって…」
「憶えている」「君と僕が」
「だから大丈夫」
「なにがあっても」
「忘れない」
「僕のなかに」「君のなかに」
「存在してる」
「だからもっていこう」
「繋げよう」
「僕たちもまた」
「そうかもしれない」
「だけど大丈夫」
「憶えているから」
「そうかな…」「うん、そうだよ」
「証明しようじゃないか」
「でもそれって」
「うんでも」「憶えているから」大丈夫。
一体どうしてかわかんないし意味不明。でも時にそうやって騙されて頭が溶けてもわたしとして生きる必要があるのかもってほらまたわからず書いてるねこれ。
「でもいつかは正しいっておもってここにきたんだよね。なのになぜ忘れてしまったんだろう。大切なことなのに」
そのとき正しいとおもったから。
大丈夫。憶えていなくてもなにも悪いことは起こらない。
「だからなんだね」
あなたに託すわかつてのただしさ。どうやったかはわからないけどあなたはしってるでしょ。
「わたしもういくね」
さようなら。憶えているから。またね。
固執症候群の先輩へ
こだわりは確かにあまりに低俗最底辺を突っ走る人間にありがちなゴミだとは思いますが先輩もまたそうだとは思いませんでした。ゴミだったんですね先輩って。
こんなこといっていいのかわかりませんがダサいですね先輩。
憧れもまたそうであるからだったんですね。知ってましたよ、うん。
わたしの主食は残念ながらゴミではありませんので(ゴミはゴミ箱に捨てるのがわたしの習慣)先輩とは会えませんね。残念です。
そんなわたしではございますがこれからは方向転換、ラブフォーエバーに勤める一女子高校生としてネット上で姫にでもなろうとおもいます。
最後になりますがゴミらしくゴミ箱に入るのがいいゴミの生き方だとおもいますのでご検討を。
あなたのかわいい後輩ちゃんより
あいつは見込みのあるやつだ。なかなかにすごい。
なんといっても牛乳パックを並べてこの文章を作ったのだから。
しかし俺は固執しているのだろうか。なにに。
「身体を切り裂いてあげる」
ブチャッーーー。チェーンソーは猟奇を想わせる。
身体は抉りとられても考えられた。
わたしはなんでいきてるの。
あなたはしんでいます。
ぼくはいきてるよ。
ひとはしなない。
僕はなに?
「俺は生きてる」
わからない。かんがえることなんてできない。
牛乳。パック。落ちているストロー。
挿す。吸う。微小。残っていた。
「あいつらしくもない」
午後二時空は曇り。ほしは輝いているのだろうか
「さあね」
歩きだす。わからんが。それだけ。
「人の為ってかいて嘘なのね」
手に文字をかきかき。灰色の即席階段。
「なぜに人の為なんだろうね」
僕をみている。
「しらん」
僕をみている。
「なんでだろう」
「しらん」
僕をみている。
「なんで」
「偽物語でもみればいい」
俺は走りだす
「ここにブルーレイなんてないんだよー」
大声
「ネットがあるじゃないかー」
また大声
「回線はとっくの昔に切られましたー」
「そこをみろ」
指差す。
「原作があるじゃないか」
阿鼻驚嘆
「文字は、頭に、はいりません…」
頭を抱える。目が混乱。口から泡。
「蟹になるのか」
彼女のもとへ
「うべべべー…」咄嗟に後ずさる。彼女は泡を噴きだした。辺り一面泡だらけ
「そんなに嫌がらなくても」
彼女は蟹だ、紛れもない蟹だ。
「困ったやつだ」それぐらい
それって妄想よ。お湯を飲む俺。
環境があなたを象るの
それはあなただけのもの
自慰ね
なにをしたいの
そう
それでいいわね
さようなら
ただそれでしかいられないの?
もともとなにもないから別になんてことないわね
もし嫌なら在ろうとしなさい。
有るか無しか。単純ね。
なにもない
当たり前
俺
わたしだと
信じられるだけ
彼女
「なに」なにもないよ
「なんかあるでしょ」なんもないってば
「うそつき」うそじゃないよ
「しね」いや
「ばか」はいな
「ふんだ」はなな…
「わたしは実在してるよって」
「うん。僕はそう思う」
午後二時屋上。かぜが僕らをゆすぐ。
「なんでそうおもうの」
「おもわないといけないから」
握る。彼女の手
「えらく思い込みね。あなたの嘘だわ」
「だろうね」
「いらないわそんな嘘」
「溶けた」
離す
「溶けちまった。忘れた。もうわからない」
そらをみる。ほしなんてみえない
「でもさそれでも。いなくなっても君は」
「わたしは」
「ここにいる」
手を握る
「嘘こそ僕なんだと」
「なぜ」
「わかっているだろ」
「そうかしら」
そらをみた。ほしはない
「あなたには在る?」
「ないね」
「在るわ、ほし」
右手を掲げ指と指の間から
「どうなの」
聞く
「ピンとこないわ」「どうでもいいの」「興味ないわ」
彼女は手を降ろした。
「みえないだれかさんはどう?」
「ぼくもそうかな」
たとえみえたとしてそれはただのほし
「でもいきているのはわかる」
「わたしも」
「うん」
歩きだす。どこへ。屋上の扉。僕たちは校内へ。
キンコンカンコン。もうすぐ次の授業。急がないと。